【4394】まるでビデオの再生ボタンを押したかのように、8年前の経験を今経験しているという感覚になります

Q: 20代男性です。
8年前、私は福祉専門学生でした。アルバイトで真夏の暑い時にテーマパークでアルバイトをしていた時に、真夏の暑い時もありお客様が倒れてしまいました。専門学校で習ったとおり、一次救命処置をやったのですが、その後テーマパークの園長から「医者でもないのにやりやがってお前みたいなやつはクビだ!!荷物まとめて出て行け名札も返せ」と怒鳴りながら、首にかけてある名札で首をしめられて、殴られたりもされました。
その後未だに救急車の音やテレビで流れる救急車や心電図の音を聞くと過呼吸になり、その当時の経験を、まるでビデオの再生ボタンを押したかのように、今経験しているという感覚になります。
この状態からして私は精神科に受診した方が良いのでしょうか?

 

林: これはフラッシュバックです。
フラッシュバックという言葉は非常にしばしば誤った意味で使われています。つまり、過去の嫌な記憶が蘇ることを指して使われることが非常に多いのですが、それだけではフラッシュバックとは言えません。フラッシュバックとは、この【4394】のケースのように、

当時の経験を、まるでビデオの再生ボタンを押したかのように、今経験しているという感覚になります。

という経験を指すものです。
フラッシュバックはPTSDと診断するときの重要な根拠の一つです。(ところが、フラッシュバックという言葉が誤った意味で使われているために、PTSDだという診断が濫用されているという現状があります)
ただし、フラッシュバックがあるからといって直ちにPTSDと診断することはできませんから、この【4394】がPTSDと診断できるかどうかはわかりません。けれどもトラウマによってフラッシュバックが発生し、それによって苦しんでおられるという事実があるわけですから、精神科での治療によって改善することが期待できます。その場合の治療はPTSDの治療とほぼ同様なものになるでしょう。

(2021.10.5.)

05. 10月 2021 by Hayashi
カテゴリー: PTSD, 精神科Q&A