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パニック障害の治療薬についての質問にお答えします。


Q. パニック障害の薬にはどんなものがあるのでしょうか?
Q. 病院でもらった薬を本で調べたら抗うつ薬でした。私はうつ病ということでしょうか?
Q. 抗不安薬はどうして効くのでしょうか?
Q. 副作用の心配は?
Q. ソラナックスという薬がパニック障害の特効薬だと聞いたのですが? 
Q. ベータ・ブロッカーとは何ですか?
Q. 先生が薬の説明をしてくれないのですが?   
Q. どのくらいの期間のむのでしょうか?
Q. ほかの薬と一緒にのんでも大丈夫ですか?
Q. アルコールと一緒にのんでも大丈夫ですか?
Q. 薬に頼りたくないのですが?


Q. パニック障害の薬にはどんなものがあるのでしょうか?

パニック障害の時に出される薬は、主として抗不安薬と抗うつ薬です。

抗不安薬
直接パニック発作を抑える効果があり、必ずといっていいほど処方される薬です。効果は速やかに現われるため、発作の時にも使われますが、発作の予防にも有効です。セルシン、ホリゾン(ジアゼパム)、ワイパックス(ロラゼパム)、ソラナックス(アルプラゾラム)などがあります。強い発作の時にはセルシン、ホリゾンの注射をすることもよくあります。

抗うつ薬
もともとうつ病の薬ですが、パニック障害にもよく効くことが最近わかってきました。一定の量を2-3週間のみ続けてはじめて効果が出るものなので、のむと決めたら途中でやめてはいけません。三環系と呼ばれるトフラニール(イミプラミン)、トリプタノール(アミトリプチリン)などがあります。

このほか、症状に応じて睡眠薬、便秘薬などが処方されるのがふつうです。



Q. 病院でもらった薬を本で調べたら抗うつ薬でした。私はうつ病ということでしょうか?

抗うつ薬はパニック障害の治療にも使われます。したがって、抗うつ薬を処方されたからといって、うつ病であるとは限りません。




Q. 抗不安薬はどうして効くのでしょうか?

不安というこころの動きは、危険を避けるためのいわば原始的な反応です。人間以外の動物も、危険から逃げるには不安に近い反応を起こします。つまり不安は進化の歴史上きわめて古いものだということです。人間の脳には人間特有の高次の機能(創造、言葉など)をになう部分が外側にあり、深いところに本能など進化的に古い機能をになう部分があります。抗不安薬はこの脳の深い部分に作用して効果を発揮します。




Q. 副作用の心配は?

抗不安薬の副作用は軽く、出るとしても眠気やふらつき程度です。しかものみ続けるうちに軽くなることが多いものです。

抗うつ薬で比較的多い副作用は、便秘、口の乾き、排尿困難、眠気などです。まれな副作用としては、肝障害、皮膚の発疹などがあります。

いずれにしても、副作用ではないかと思った症状はすべて主治医の先生に話すことが大切です。




Q. ソラナックスという薬がパニック障害の特効薬だと聞いたのですが? 

ソラナックスはアップジョン社から出ている薬で、アメリカでは唯一パニック障害の薬として公式に認められている抗不安薬です。もちろん日本でもよく使われています。公式に治療薬として認められるまでには多くの研究と厳正な審査を経ているわけですから、有効であることは間違いありません。ただ私の治療経験からいうと、ソラナックスがほかの抗不安薬に比べて特にすぐれているとは思えません。少なくとも特効薬と言うのは言いすぎでしょう。




Q. ベータ・ブロッカーとは何ですか?

心臓が速く打ったり、血圧が上がったりする時、アドレナリン、ノルアドレナリンという物質が体内に分泌されています。この物質がその効果を発揮するためには、血管などにあるペータ・レセプターという場所に結合する必要があります。ベータ・ブロッカーとはこのベータ・レセプターをブロックすることによって、どうきを抑えたり血圧を下げたりする薬です。パニック発作の中心症状がどうきなどの場合、ベータ・ブロッカーを治療に使うことがあります。





Q. 先生が薬の説明をしてくれないのですが?

説明なしにただ薬をのむように言われてものめるものではなく、ふつうは十分な説明がなされると思います。ただし、いろいろな理由であえて詳しい説明をしないこともあります。説明しすぎることで病状が思わしくない方向に変化することを心配することもそのひとつです。
しかしそうは言っても、説明に納得できない時は早目に医者をかえた方がいいでしょう。精神科では医者と患者さんの相性というものもあり、相性が合わないと治療はうまくいかないものです。
なお、最近では病院の薬が写真入で紹介されている本がたくさん出ているので、これを調べれば大体の薬は何であるかわかりますが、あまりおすすめできる方法ではありません。信頼できる先生にかかりなおす方が病気を治す早道です。




Q. どのくらいの期間のむのでしょうか?

一度抗不安薬が発作に効くことを経験すれば、あとはその薬を持っているだけで発作が起こらなくなることもよくあります。この場合、実際にのむ期間はとても短いことになります。抗うつ薬で治療する場合は、まず2-3週間はのむことが必要です。抗うつ薬が効くまで最低でもそのくらいはかかります。これで効果がなければ薬を少しずつ強くしたり、種類を変えたりするのがふつうです。よくなったあとどのくらい薬を続けるかは人によって違います。抗うつ薬は再発の予防効果もあるので、少ない量をずっと続けることもあります。これは主治医の先生と本人の話し合いで決めるのがよいでしょう。





Q. ほかの薬と一緒にのんでも大丈夫ですか?

市販の風邪薬や頭痛薬と一緒にのむ分にはまったく問題ありません。ただしほかの科の先生に薬をもらう時は必ずその時のんでいる薬を見せてください。





Q. アルコールと一緒にのんでも大丈夫ですか?

だめです。酔いが回りやすくなったり、薬の副作用が強く出たりします。アルコールも一種の抗不安薬ですから、アルコールと一緒にのむくらいなら抗不安薬を2倍のんだ方がまだいいとも言えます。





Q. 薬に頼りたくないのですが?

基本的には正しい考え方です。しかし実際に発作で苦しんだり、発作のために行動が制限されたりする場合、さしあたっては薬をのんで治すべきです。問題はそれからです。そのあと薬に頼りたくない理由としては、(1) のみ続けた場合の副作用が心配 (2) だんだん効かなくなってのむ量が増えるのが心配 (3) 薬に頼るのは自分の弱さのような気がする などだと思います。まず(1) の副作用に関しては、定期的にからだのチェックを受けていればまず心配はありません。(2) については、こういう心配をする人は逆に量が増えることはないものです。(3) は共感できる考え方ではありますが、あえて誤った考え方だと申し上げます。パニック障害は病気です。病気の時に薬をのむことを弱さだというのは非論理的です。高血圧では降圧薬が、糖尿病ではインスリンが必要です。こころの病の薬もこういったものと同じ意味です。

それからパニック障害の場合は、薬を持っているだけで発作が起きなくなることもよくあります。これは見方によって精神療法とも薬物療法とも言えますが、とにかく効果的であることにかわりはありません。

 


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