【4171】曜日が円柱で自分の周りに並んでいるイメージについて
Q: 私は28歳、女性です。
共感覚の多くは文字や音楽に色がついて見えるというものだそうですが、私はその感覚はありません。
なのですが、以前にネットか本で見た実例の中に『数列などが物理的に整理されて記憶されている』『7つの曜日が自分の周りに配置されている』というものがありました。
これを読んで驚いたのですが、私は昔から、少なくとも小学校高学年の頃あたりからですが、曜日は自分の頭の周りのあたりの少し右斜めに寄ったところにあります。もしくは自分の体の周りにあります。
左から月の円柱、火の円柱…と曜日がそれぞれ円柱になっていて、かつ、それが、視力検査の下があいている記号の左下四分の一がない状態で土星の輪っかのような状態で並んでいます。
円柱の高さは曜日によってばらばらで、月曜日は高くて火曜日は月曜より少し低く、水曜日は火曜日より高いです。木曜は火曜日と水曜日の間、金曜日は木曜より高く、土曜日は高さがあいまいで、日曜日が一番高いです。
なんとなく色がついているときもあります。
例えば「日曜日にどこそこで待ち合わせ」という時は頭の中で連なった円柱の曜日を回転させてかつ自分もその曜日の方をむいて曜日を確認します。
私はこの方法が普通なので特に疑問に思っていなかったのですが、普通、曜日はこんなふうに円柱が出てこないのでしょうか。それならどのようにして曜日を認識しているのでしょうか…。
また、この感覚は共感覚と呼ばれるものなのでしょうか。特に生活に支障はないのですが、これはおかしなことなのでしょうか。
林: 貴重なご体験を詳しく記していただきありがとうございました。これは典型的な共感覚(シネステージア synesthesia, synaesthesia)の一つです。質問者がお書きになっているように、また 林の奥 の 共感覚 — 目で聞く人。耳で見る人。でもご紹介したように、共感覚の中で最も多いのは「文字→色」のパターン(文字に色がついて見える)ですが、この【4171】のようなパターンも比較的多いものの一つで、空間的配列共感覚(Spatial Sequence Synesthesia または Visuo-Spatial Synesthesia)と呼ばれています。この共感覚は、1880年にGaltonがNature (21: 494-495)に発表したのが最初の報告であると言われています。
私はこの方法が普通なので特に疑問に思っていなかったのですが、普通、曜日はこんなふうに円柱が出てこないのでしょうか。それならどのようにして曜日を認識しているのでしょうか…。
共感覚という能力を持っている人(共感覚者)の多くはこのように、自分の能力はごく普通で誰でも同じ能力を持っていると思っており(ですから、特に「能力」であるとは考えていない)、人生のある時点で他の人には共感覚はないということを知り驚愕するものです。【4135】文字に色がついて見えます の質問者である「文字→色」の共感覚者も同じ経験を記しておられます。
それならどのようにして曜日を認識しているのでしょうか…。
これは、非共感覚者(つまり普通の人)からすれば、「そんなことを聞かれても・・・」「別に空間に並んでいなくても曜日は自然にわかります」と答えたくなるところですが、空間的配列的共感覚についての研究によれば、実は非共感覚者も、潜在的には多くの概念(曜日もその一つです)を脳の中に空間的に配列していることで認識していることを示唆するデータも得られています。するとこの【4171】のような空間的配列共感覚者は、普通は無意識に行っている認識が意識に上っているという点だけが特異なのかもしれません。
これはおかしなことなのでしょうか。
「おかしなこと」という言葉は多義的ですが、「標準的な人とは違っている」とまでは言えます。ぜひ【4135】文字に色がついて見えます とその続編である 林の奥 の 共感覚 — 目で聞く人。耳で見る人。もお読みください。
(2020.11.5.)