【2491】うつ病は治るという言葉を信じてきて、救われたという気持ちで一杯です(【2414】のその後)
Q: 20代男性です。 【2414】うつ病で思考が退化してしまうことはありますか ご回答ありがとうございました。その後についてご報告申し上げたいと思います。
X+3年の春、これまでにない酷いイライラ、思考力低下といった症状が現れ、特に思考力低下は酷く、簡単な口頭での会話もままならず、汗をびっしょりかいて必死で理解しないといけないほどの症状でした。いわゆる死にたいであるとか、そういった感情すらもはやなく、薬物療法も功を奏さず、最終的に修正電気けいれん療法を行うために入院することになりました。 すると修正電気けいれん療法は一クールで効果が非常に顕著に表れ、一ヶ月後に退院すると、しゃきしゃき歩くことができるようになり、考え方も変わり、活力が出ただけでなく、一時は会話内容すら理解できなかったほどの思考力が、再び舞い戻ってきたように現れ、かつて四則演算もままならなかったのに、今では再び(それほど高等ではないにせよ)数学の問題にとりかかることもできるようになりました。 現在は引き続き通院加療を行い、休学も延長していますが、毎日を生産的に送ることができています。 結論としては十分な薬物治療が功を奏さない場合、修正電気けいれん療法は有力な選択肢として考えるべきである、という意見に賛同します。 結果は以上の通りです。
次に、先生の治療などの参考となりますよう、患者としての意見を述べさせていただきます。 まず週に三回ものの全身麻酔は、正直、それほど気持ちの良い物ではありませんでした。麻酔がかかると、何が起こっているのか分からず、たとえば癌であれば病巣を摘出した、という証拠が残るのでしょうが、電気けいれん療法ではそういった証拠が一切無く、目が覚めると何かが起こった後、という「なんとなくの気持ち悪さ」を感じたのは事実です。 また、退院後しばらくは、あまりにも回復しすぎて、躁転するのではないかとか、人格が変わったのではないかとか、そういった不安が非常に大きいものでした。記憶の混乱もありました。急に思考力が回復したので、脳の調子が変になったのではないかと感じることもありました。結果的に数週間で思考は整理され、うつ病が治った状態として活動できるようになりましたが、これもある意味不安や気持ち悪さを感じさせる物でした。 加えて金銭的な負担も多少大きかったと考えています。もちろんもっと大きな病気にかかるより、あるいは、うつ病で自殺してしまうより、遙かにコストは少ないと言えるでしょうが、一月の入院代約三十万円は、それほど気軽に出せるものでもありません。 しかしそれでも結論的には、電気けいれん療法には助けられたと感謝しています。
うつ病は治るという言葉を信じてきて、救われたという気持ちで一杯です。自分の人生は、もう、なにもできず、底辺を這いつくばってのたれ死ぬのだと、ずっと思ってきましたが、こんなにも希望があふれているとは思いませんでした。全存在を否定され、何もできないまま死ぬのだと思っていました。夢を持つことなど許されないと思っていました。何もかも遅すぎて、自分の人生はこれ以降何一つ良いことなどない(ありえない)のだと思っていました。 でも、ようやく、昔の夢を思い出しました。それのために一つ一つ努力していこうという気持ちが、再びわいてきました。 私のようにうまくいく人だけではないと思います。従ってこの話を全員にできるかといえば、そうではないと思います。とはいえ私個人は救われました。
最後に一点、蛇足をお許しください。うつ病という言い方は、確かに「うつ」が主症状ですから、間違ってはいないのだと思いますが、「脳の分泌障害」のような言い方をした方が、「適切な治療が必要で、かつ治療の結果治るものである」という認識が共有されてよいのではないかと考えています。まだ未解明の部分が多い病気でしょうから、そのようなことはまだ言えないかもしれませんが、血液検査等でうつ病が発見できるなどといったニュースを耳にした記憶があります。「うつ病」は何よりも患者が一番誤解しているのではないでしょうか。自分の性格が問題なのだから、治らないのだ、と。医療の素人考えですが……。
林: 経過のご報告をいただきありがとうございました。うつ病に苦しむ多くの人々にとって、大変貴重な情報になると思います。これからも症状の安定が続くことを願っています。
(2013.12.5.)