【4155】退院しましたが、妄想は続いています(【3965】のその後)

Q: 【3965】精神科に入院した主人への家族の接し方についてで回答をいただいた30代女性です。あれから症状が入院時より落ち着き退院して療養することになりました。退院前の主治医との面談で主人への接し方について私が思っていることを伝えました。主人は母や姉にも気を使っているので思っていることや八つ当たりを全て私に言っていました。色々伝えた結果、現在は適度な距離を取って主人に接してくださっています。【3965】の回答、本当にありがとうございました。
今回は妄想への対処法で悩んでいます。
【3965】での林先生の回答の通り、主人は統合失調症と診断され、発症して4ヶ月経ちます。
初めは会社の人たちの妄想でしたが、途中から戸籍に私の名前ではなく違う名前があったので結婚していないという妄想に変わって今でも変わらず信じ込んでいます。
はじめからジプレキサを服用していますが、妄想が強いので主治医が途中からロナセンテープを1枚追加で増やし、現在にいたります。
入院前に母が見せた住民票の名前がおかしかったと新しく取り寄せた住民票や戸籍謄本を見てももちろん妄想はなくなってくれません。
結婚していない人とは住めないということで今は実家で療養しています。
主治医から妄想に対して肯定も否定もしないようにと言われたのですが戸籍の話が出ると肯定はしないですが否定はせずにはどうしてもいられません。
なので、退院して1ヶ月になりますが、戸籍の話、結婚の話は話題に出さず症状が取れることを願っているのですが、直球で話題に出なくても私が実家に遊びにいったり、自宅の話が出るたびになぜ私が来るのか理解ができないみたいな顔つきや態度をします。
結婚してないから、戸籍がおかしかったからという妄想を言われた時なんと対応したらよいのでしょうか。
主治医はしばらく様子を見て薬を増やすか変えるか検討はしますと言ってくれていますが、この妄想が取りきれないかもしれないという不安にかられることもあります。
本人の前では明るく他愛のない話をして過ごしています。日常の会話は普通で新たな妄想はありません。現状維持ぐらい薬は副作用も出ずに効いてると思いますが、先になかなか進んでないような感じです。少しずつ笑ったり自分から話すようになったりと変化もあるのでこのままもう数ヶ月妄想の話題に触れずに過ごせばいいのか、壁にぶち当たっています。
妄想は本人にとって確信ということですので、証拠を見せようが、理論的に説明しようが効果がないことは知っています。だからこそ、他にできることはないのか悩んでいます。
薬の力と時間をかけて療養することしか妄想への対処法はないのでしょうか?よろしくお願いいたします。

 

林: 統合失調症の妄想に対する最も有効な治療法は抗精神病薬ですが、

はじめからジプレキサを服用していますが、妄想が強いので主治医が途中からロナセンテープを1枚追加で増やし、現在にいたります。

これだけの情報しかしなく、ロナセン追加の時期やそれぞれの薬の量についての記載がないので、現時点で今の処方を続けるのが適切か、すぐにでも増量や処方変更をした方が望ましいのか、判断できません。
それはとりあえず棚上げにするとしますと、

主治医はしばらく様子を見て薬を増やすか変えるか検討はしますと言ってくれています

その方針が不適切ということはないと思います。
その一方でご家族としては、

この妄想が取りきれないかもしれないという不安にかられることもあります。

そのようにご心配されるのも理解できるところです。
しかし現実には、現時点でご家族にできる最善のことは、治療に協力するということです。まだ治療は始まったばかりですから、あせって何かをしようとするのはかえって逆効果になることも十分にありえます。
また妄想とは、完全には消失していなくても、現実生活は妄想とは関係なく普通に送れるようになるということもしばしばあります。この【4155】のケースでいえば、「戸籍と違う」などの妄想を、もし問われればそう答えるものの、普段は妄想を全く忘れてしまったかの如く、奥様との普通の生活に戻るということも回復の一つのパターンです。(この【4155】について、今の時点で、そのパターンが予想できるという意味ではありません)

(2020.11.5.)

05. 11月 2020 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 統合失調症 タグ: |