【4140】私は境界性パーソナリティ障害の診断基準に一致しています
Q: 私は39歳の男性です。
ネットや本などで境界性パーソナリティ障害のことを知り、あまりにも自分に一致する項目が多いので、私もその病気なのではないかと疑っています。メールの文章だけで診断など出来ないとは思うのですが、病院に通うのは様々な理由から難しいので、メールに書かれた内容からのあくまでも「推測」で結構ですのでご意見を承りたいと思いメールしました。お忙しいところ大変申し訳ございませんがよろしくお願いします。
〇父母
父:ヤクザやサラ金に多額の借金を作り、支払いが出来なくなると妻の兄(私から見たら伯父)が仕方なく支払うということを何度も繰り返す。家にはほとんどいなかった。
母:きわめてヒステリックで少しでも自分の思い通りにならないと怒り狂う。明らかに自分が悪いことでも自分の非は絶対に認めない。常に周囲の人や子供(つまり私)の悪口を言い続ける。周囲の人が自分に嫉妬していると思い込む。自分が人から悪口を言われていると思い込む。子供(つまり私)が自分をだまそうとしていると思い込んでいる(私の推測ですが、おそらく母は自己愛性パーソナリティ障害だと思います)
〇幼少期
父はほとんど家にいなかったのでほぼ母一人に育てられました。幼少の頃から母に「お前は人格に問題がある」「みんなから嫌われている」「生意気だ」などと人格を否定するようなことを言われ続けました。
例えば、私が小3の時、母が買い物からかえってきたところ突然怒り始め、「今日バスでものすごく生意気なガキがいた。あんたみたいな話し方しとった。本当に生意気やった」などといって3時間くらいにわたって、「バスにいた子供が私に似ていて生意気だった」というだけの内容を繰り返し繰り返し延々と話し続けたりすることがありました。
小学6の夏休みから私は勉強がしたかったので塾に行き始めました。そこでは最初のテストで3位、次は2位でそのあとはずっと1位を取り続けてかなりいい成績だったのですが、それに対して母は「成績がちょっといいくらいでいい気になるな」「お前のように頭だけよくて人格に問題がある人間はいつか必ず転落する」「お前のように頭だけよくて人格に問題がある人間が社会にとって一番有害だ」「お前のような人間のクズは生きていても社会に有害だから早く死ね」「お前が今成績がいいのは親に頭よく産んでもらったおかげなんだから親に感謝しろ」などと言って毎日最低1時間、休みの日などの時間があるときは朝から夜まで12時間以上にわたってほぼ同じことを繰り返し繰り返し言い続けて怒り続けました。
また、母は友人からある新興宗教に誘われてすっかりその信者となっており、そのせいで何かと宗教がかったことを言うようになり、「感謝が足りないからお前はだめなんだ」「感謝が足りないからお前は勉強ができない」(←母は私が成績がいいのは生まれつきの頭の良さのせいだけで私は全く努力していないと本気で信じていました)
このような状態が高校くらいまでずっと続きました。
この調子で生い立ちを書き続けるとあまりにも長くなるので、生い立ちについてはこの程度にします。
〇以下は自分が境界性パーソナリティ障害ではないかと疑うようになった部分についてです。
1、現実に、または想像の中で見捨てられることを避けようとする気も狂わんばかりの努力→〇(該当する)
過去、恋人から別れを告げられると異常なほど相手を追い回したことが何度もあります。(一日20通以上のメールを送ったり、何度も何度も電話を掛けたりする)境界性パーソナリティ障害について知ってからはそれが異常なんだと気づきそのようなことはしないようになりました。思えば、母が私に対して少しでも思い通りにならないとヒステリックに怒り狂って何が何でも思い通りに屈服させてきたのと同じことを、今度は私が恋人に対してしていたような気がします。それ以外の人間関係を私が知らなかったのもこのような異常行動の原因かもしれません。
2、理想化と脱価値化との両極端を揺れ動くことによって特徴づけられる不安定で激しい対人関係様式→〇(該当する)
自分のことを好きそうな人は神のように高く評価するが、少しでも自分のことを嫌っていると感じるとダメな人間として切り捨てるということが非常に多いです。
3、同一性障害:著明で持続的な不安定な自己像や自己観→〇(該当する)
自分が何をしたいのが、将来どうなりたいのか、ということがはっきりしない。自分の将来に対して不安がある。
4、自己を傷つける可能性のある衝動性で、少なくとも2つの領域にわたるもの(例:浪費、性行為、物質濫用、無謀な運転、むちゃ食い)→×(該当しない)
5、自殺の行為、そぶり、脅し、または自傷行為のくり返し→△(あまり該当しない)
20年以上前に自殺を考えたことがありますが、それ以来自殺は全く考えたこともないし、自傷行為は一度もやったことがありません。
6、顕著な気分反応性による感情不安定性→〇(該当する)
過去のことを思い出し、まるでその時の状況が再現されたかのように激しい怒りを覚えてもうなにも手につかなることが平均して1日に1~2回程度あります
7、慢性的な空虚感→〇(該当する)
なんとなく常にだるく、何もする気が起きない状態が続いています
8、不適切で激しい怒り、または怒りの制御の困難→〇(該当する)
会社で抑圧的なものいいの上司に対して非常に激しい怒りを覚え、それに対して激しく言い返したりしたことが何度もあります。そのせいもあって仕事が長続きしません。
9、一過性のストレス関連性の妄想様観念、または重篤な解離性症状→×(おそらく該当しない)
本当に解離性症状が起きていたら、自分では自覚できないので断言はできないが、おそらくそのようなことはないと思います。ただ、幼少期に、自分では全く覚えていませんが、夢遊病のような感じで夜中起きて家族に対してくわからないことを話して再び部屋に帰るということが何度もあったような ので軽い解離があったのかもしれません。素人なのでよくわかりません。
9項目中6項目が該当しているので境界性パーソナリティ障害に該当しているのではないかと思っています。(前提条件として仕事が長く続かないなど日常生活を送るのが困難な状況が生じています)
以上です。
非常に長い文章になってしまい申し訳ございません。
最後まで読んでいただき誠にありがとうございました。
お忙しいところ大変申し訳ございませんがよろしくお願いします。
林: 境界性パーソナリティ障害の傾向があるとまでは言えるでしょう。そしてこのパーソナリティ形成には生育歴が大きく影響していると思われます(そしておそらくは遺伝的素因もあるかもしれません)。但し、特にパーソナリティ障害では、「その傾向がある」ことと「そう診断できる」の境はかなり曖昧です。境界性パーソナリティ障害に限らず、診断基準に記されている内容は、誰にでもある程度ならあるものです。それでも「障害」に分類するのは、結果として何らかの支障が出ている場合ですが、その「支障」にしても、どの程度であれば障害レベルと言えるかは曖昧です。この【4140】は「仕事が長く続かないなど日常生活を送るのが困難な状況が生じています」であるとのこと、それは確かに「支障」ですが、少なくとこのメールの記載からは、「障害」と言えるほどの大きな支障か否かは判定困難です。
この【4140】の質問者は、ご自分の状態について、かなり客観的に冷静に判断し、十分な洞察力を持って評価していることが読み取れます。そのことをもってパーソナリティ障害でないということはできませんが、確実にパーソナリティ障害であるといいうる多くのケースに比べると、仮にパーソナリティ障害と診断するとしても軽度であるといえます。このような場合は、自己改善が望めます。その種の本(ドリル的な本)は何冊か出版されていますので、それを読んで実践されることで、状態が改善し、日常生活にも適応しやすくなることが期待できると思います。
(2020.10.5.)