【4332】ほとんどのことを忘れてしまうのですが、忘れてしまうのでどうでもいい気がします
Q: 日常生活には支障がない(と思っている)のですが、気味が悪いことがありますので、先生にご意見いただけたらなぁと思っています。 私はどうも色々なことを忘れてしまうようです。現在私は26歳で、就職してもう5年以上経つのですが、高校か高校卒業後あたりから、ありとあらゆることを忘れ続けているのです。ただ忘れていることは、何もかも全てではなく、何が起きたか、をほとんど覚えていないのです。会った人や読んだ本、得た知識は蓄積されているようなのですが、その日起きたことがさっぱり思い出せません。例えば誰か知り合いに会って、その人ととても仲がよかったようなのですが、その人とどのように過ごしたかが思い出せず、親しみを覚えません。「この人とは、学校で○年同じだった。この人は1年の時は同じクラスで、部活は○○」「この人とは、職場で○年同じだった」という事務的なことは思い出しますが、具体的にどんな思い出があるかというと思い出せません。未だ頻繁に連絡を取り合う小・中学時代の幼馴染たちのことも思い出せなくなっていて、同じ小中学校だった程度にしか思えないのです。メールの履歴を見ると、一緒に出かけたりしているようなのですが、出かけた出来事が思い出せません。そして個人的に一番困っているのが、昨年結婚した夫とのエピソードもさっぱり思い出せないのです。夫とは高校の時から10年も付き合っているのに! デートやケンカや色々出来事があった(らしい)のに。 出来事が思い出せないというと、出かけた先のパンフレットや写真を皆が見せてくれるのですが、観光地等の説明の看板の文、レストランのメニュー(その時食べた物は忘れた)、行った先の駅名等は思い出しますが、同行者がどんな服を着ていたか、どんな話をしたか等は思い出せないのです。文字列や数は変なくらいに覚えています。思い出そうと考え込むこともありますが、頭の中にもやがかかっているような感覚で疲れてしまいます。思い出そうとすることに、自分自身でブレーキをかけているような気がします。 一応、病院には行きました。心療内科の先生にかかったのですが、私の言動が胡散臭かったのか、「心配ならMRI撮るよ」と言われ、MRIを撮ったのですが、「こんなにきれいな脳をしているじゃないか」と言われ、結局何もしてもらえませんでした。かなりショックを受けたようで、2,3年前のことなのですが忘れていません。おかげでもう一度病院に行く気が起こらなくなりました。今はどこにもかかっていません。 こうやって色々なことを忘れて生きていくことって、物凄く味気ないと自分は思います。でも思い出せなくなったと自覚してから、昨日までのことがどうでもよくなってしまっています。常に空虚な気持ちでいます。昨日までのことを忘れてしまうことすら忘れていて、むしろ、世の中の人たちは、昨日までのことは覚えているのだろうか?と疑問に思ってしまうくらい、自分の中では普通のことになってしまいました。職場の人や友達に指摘されたりして、そのたびに「あ、普通は覚えているのか」と思います。このメールも、ブラウザのお気に入りから林先生のサイトに行き、サイトを見ている時に、「そういえば昨日のことが思い出せないな」と思い出して書いています。もし過去にメールを送っていたらこのメールは破棄してください。 こんな状態で、空虚な気持ちのせいなのか、夫以外の人間に親しみを感じないし、他人が悲しそうにしていたり、うれしそうにしていても、何も感じません。空しいと思う気持ちすら忘れて、何かがぽっかりあいた状態、感情も動かないような状態です。しかし、それを悟られまいと、いつも楽しそうに、コメディアンのように振る舞い、誰かが困っていれば声をかけ、親切な対応すらします。・・・こう書いてて、なんだか自分がひねくれ者のように感じてきました。「自分」というものがないような気がします。そういう概念があるならいいのですが。 今の状況では、何か切欠があったらプツリと切れてしまいそうな、ギリギリの状態な場所に、自分がいる気がします。唯一の慰めは夫の存在で、彼と一緒にいると、とても楽しいし落ち着きます。ただ、夫との楽しかった思い出も忘れてしまっていることが、夫をがっかりさせてしまって、それ以来記憶については悟られないようにしています。彼を悲しませたくないんです。
どうしてこういう状態になったのか、自分でははっきりわからないのですが、自分の家族がとても嫌で、半ば家出状態で一人暮らしをはじめた経緯があります。封建的な考えの祖母と両親に嫌気がさしたのもあるし、二つ上の兄が幼少時からとても困った性格で、顔を合わせたくないというのもあります。兄は、心臓に軽い障害があるのですが、それと併せて、すぐキレるしすぐ泣きます。気が弱いのか悪徳商法にもすぐに引っかかります(何回かひっかかり親が代わりに返済していました)。親に何か兄が怒られる度に、私にとばっちりがきました。小さい頃は暴力でしたが、大人になってからは、食卓で私のお茶の入った湯のみに親の目の前でビールを入れて、飲めと強要したり等、嫌がらせ程度です。しかし、同席する家族は誰一人咎めません。無視です。目の前の出来事をなかったことにします。就職後半年で仕事をやめた兄が、精神科にかかったそうですが、母親は兄の小さい頃について色々聞かれたものの、全て「普通の子でした」と通したそうです。(このことは母親と食事に行った時に酔った母が言っていました)兄は大人になるまで心臓のせいで色々制限されていましたが、そのせいか親たちの関心は兄に注がれていて、小中学校の私の三者面談でも兄の話しかしないくらいでした。こう書いてみると、私は家族に対してものすごく嫌な気持ちしかもっていませんね。家族のことで私が忘れたいと願っているのならば、昨日までのほとんどまで忘れる必要はないと思うのです。だから家族以外にも原因はあるのかなあと思っていますが、自分でもわからないし、どうでもいいです。 なんだか先生に相談するのもどうでもよくなってきました。また明日か明後日あたりには、送ったことも忘れていると思います。忘れてしまうのであればそれはどうでもいいことなんだと、そう思っています。書いててよくわからなくなってきました。でも推敲をすると、忘れてしまいそうなので、このまま送らせていただきます。
林: 記憶の検査を受けることが勧められます。
メールの記載内容からは、この記憶障害は解離性健忘の色彩があるものですが、典型的な解離性健忘とは異なります。(忘れてしまう内容や、それについてのご本人の深刻味のなさ、生育歴、「思い出そうとすることに、自分自身でブレーキをかけているような気がする」ことなどが、「解離性健忘の色彩がある」の根拠です。しかしこれだけでは何とも言えません)
心療内科の先生にかかったのですが、私の言動が胡散臭かったのか、「心配ならMRI撮るよ」と言われ、MRIを撮ったのですが、「こんなにきれいな脳をしているじゃないか」と言われ、結局何もしてもらえませんでした。
このときの質問者の言動が胡散臭かったかどうかはともかく、胡散臭いのはこの心療内科医のほうです。MRIだけで記憶障害の診断ができるはずはありませんし、この【4332】の記憶障害がMRIで異常が見出せる性質のものとは思えません。(このケースでMRIを撮ること自体は正当な医療行為です。しかしMRIが正常だという結果をもって終わりにするのは不当です)
もっと信頼できる医師を受診し、まずは記憶の検査を受けてください。
(2021.6.5.)