【4160】治療で改善したようにみえる強迫性障害の弟への家族としての接し方

Q: 21歳女性です。
強迫性障害に関して少しわからず悩んでいる部分がありメールをさせていただきました。私の弟は1ヶ月くらい前に強迫性障害である可能性が高いと診断されました。症状は自分ではやりたくないのに自傷行為をしろと脅迫されており辛いといった感じでした。具体的には目を刺さなければならないとか首を折らなければならないとか高いところに登らねばならないとかです。今までなんとか抑えてやらないようにしていたけど限界で苦しいと相談されて心療内科やカウンセリングを進めました。そして薬をいただいて1週間くらいたち、その頃になると薬が効いている感じがしない、本当に治るのか?自分みたいな症状の人があまりいないみたいでわからない、怖い、治すことは正しいのか?というようになりました。毎日苦しそうにわからない、怖い、治るのか、これでいいのか?と聞かれ曖昧な返答をするしかなくちゃんと返せなくて苦しんでいるのに助けてあげられないことに自分まで苦しくなってしまいましたどうにかいい返答ができないかネットで検索したり周りに相談したりするようになりました。

それから3週間くらい経って今は以前より少しずつ表情やご飯を食べる量が良くなって少しずつ精神面も良くなっているのか前は意識が邪魔して書けなかったレポートもかけるようになり図書室に出かけたりもできるようになりました。側から見たら順調に見えます。今まであんなに苦しそうに相談をしてきていたので、今はどんな調子なのか?気分的には前より良くなっているのか?実は辛いことを隠しているのではないか?気になり始めました。自分の気づかないところですごく気を使う弟のことだから、もしそんなことがあって気づけなかったらどうしようと不安になるのです。
でも今本当に病気から意識を反らせていてうまくいっているのだとしたらこれは再び意識させてしまうトリガーになりかねないのではないでしょうか?そう思うと聞かない方がいいんだろうとも思います。
こういうことは聞いた方がいいのでしょうか?それとも聞かない方がいいのでしょうか?

 

林: 確かに、本人に今の病状を聞く・聞かないは、どちらも一理あるところで、実際には客観的にどう見えるか、本人と質問者の関係は具体的にどのようなものか、といった微妙な要因によって、どちらが適切かが決まることになるでしょう。
しかしこれでは回答になっていないので、どんな場合でも適切である原則をお示ししますと、それは、「本人がつらいと言える環境を常に維持すること」です。つらいのにそれを言い出せないような環境ですと、周囲が気づかないうちにどんどん悪化するということになりかねないからです。これはかなりしばしばあることで、たとえば病状がよくなったときに周囲が喜びすぎると、その後に病状が悪くなったとき、周囲を失望させないようにと本人が気を使って、良い状態が続いていると言うというのはよくあるパターンです。この場合の「周囲」とは、ご家族だけではなく、主治医のことも少なくありません。

(2020.11.5.)

05. 11月 2020 by Hayashi
カテゴリー: 強迫性障害, 精神科Q&A