【4232】読んだ文章などが頭の中で声になって響く
Q: 30代、男性です。数年前から、自分の考えたこと或いは文章を読んだ際に、その考えや文章が頭のなかで声となって響くという症状に悩んでいます。黙読した時に自分の声が聞こえるというものとは違い、自分の声(自分の声ではありますがなぜか子供のような声)と機械音が合わさったような声で、テープを早送りしたように早く聞こえます。新聞記事程度の長さの文章であっても読むのにかなり苦労し、長文は読めません。小説の場合だと、長いということもありますが、登場人物の声がすべて自分の声と機械音が混ざったような声で聞こえ、そのスピードが早いため全く頭に入ってきません。また、自分の意志とは関係なく考えることがやめられず、それが頭のなかで声となって響くため、うるさくてなかなか入眠できず困っています。声は一日中聞こえるわけではなく、文章を読む時以外では入眠時や湯船に浸かっているときなど、周りが静かなときに多いようです。聞こえるのは自分が読んだ文章或いは考えた内容であり、他人の考えや声ではありません。イヤホンをつけてある程度のボリュームで音楽を聞いたり、ラジオを聞いたりすることでかなり声を打ち消すことができるのですが、それがないと文章を読むときには音楽やラジオが手放せません。
数年前に体調を崩しうつ病と診断され精神科に入院した際に、ある看護師に、人に見られるのが嫌で閉めきっていたカーテンを無理に開けられたり、睡眠中に顔に懐中電灯を直接当てられたりといったことがあり、頭のなかで「苦しい、苦しい」と何度も叫ぶうちにその声が消えなくなったことがきっかけだと思います(その時には病状で苦しかったことや、休職していたため仕事の事を考え先が不安で苦しいと感じていたこともあり、はっきりとこれが原因だと言い切れないのですが、多分そうだと思います)。看護師の行為については、その後に自分の態度が反抗的であり気に食わなかったというニュアンスの話を本人から聞いており、思い返した時に自分としてもそういった態度をとっていたようで、それが原因のようです。その看護師を恨んでいるというわけではなく、症状を何とか改善したいと思っています。こういった症状は病気だとしたらどういった病名で、治療方法はあるのでしょうか。ご回答いただけると幸いです。
林: あなたは統合失調症の可能性が高いです。
自分の考えたこと或いは文章を読んだ際に、その考えや文章が頭のなかで声となって響くという症状に悩んでいます。
考想化声と呼ばれる、統合失調症に典型的な症状です。
また、自分の意志とは関係なく考えることがやめられず、それが頭のなかで声となって響くため
「自分の意志とは関係なく考えることがやめられず」は自生思考、そしてそれが「それが頭のなかで声となって響く」というように声として体験されるというのは、統合失調症が発症するときの一つのパターンです。
聞こえるのは自分が読んだ文章或いは考えた内容であり、他人の考えや声ではありません。
聞こえる声は自分由来であるという認識が保たれていることがわかります。統合失調症が進行すると、その認識は徐々に失われていき、幻聴という形になります。
数年前に体調を崩しうつ病と診断され精神科に入院した
おそらくその「うつ病」は、統合失調症の前駆状態であったのでしょう。
統合失調症が発症するときの最初期の症状は非特異的な不安やうつであることが多く、そこから自生思考、考想化声、そして他者からの声として体験される幻聴へと進行していくのが一つの典型的とされるパターンです。
ある看護師に、人に見られるのが嫌で閉めきっていたカーテンを無理に開けられたり、睡眠中に顔に懐中電灯を直接当てられたりといったことがあり、頭のなかで「苦しい、苦しい」と何度も叫ぶうちにその声が消えなくなったことがきっかけだと思います
それはきっかけではなく、その体験自体が統合失調症の症状であった可能性が高いです。(その体験が幻覚や妄想であったという意味ではありません。体験自体は事実で、その受け取り方・認知の仕方に、統合失調症の影響が色濃く出ていたという意味です)
こういった症状は病気だとしたらどういった病名で、治療方法はあるのでしょうか。
病名は統合失調症の可能性が最も高いです。統合失調症の薬物療法を受けることで改善が期待できます。
(2021.2.5.)