【3983】内科でうつ病と診断された部下の対応に困っています

Q: 50代男性、管理職です。4ヶ月前の異動で配属された直属の30代の部下(年下、係長級)の対応に困っています。半年ほど前から体調が悪いとちょくちょく休むようになりました。自ら「うつ」と発言しています。症状は朝起きると吐き気がし嘔吐してしまう、頭痛がする、気分が落ち込むなどを訴えています。日によって波があり、普通に過ごす日もあります。本人いわく、土日は元気とのことです。半年前には計5日程度会社を休みました。職場の業務にも徐々に影響が出てきています。見かねた私の上長が、体調が悪いなら診断書をとってきなさいと指示したところ、内科(専門:循環器内科)医院の医師から「うつ病」との診断書を持ってきました。診断書には、「上記疾患で通院治療中です。症状に波があり、時折休憩が必要です。」と記載されています。非常に不明瞭に感じます。実は私も10年ほどまえに「うつ病」で2か月くらい休職した経験があります。その経験から言えば、何故専門外の内科へ行くのか理解できません。本人に専門医の受診を勧めましたが、その先生を信じているので他の病院には行きませんと拒否されました。その後も体調の波があり度々会社を休んだり、社内で休憩したりしています。人事部門に相談し、産業医(内科)に今後の対応を相談しました。結果、本人にいくら専門医への受診を勧めても拒否し続けると思われるので、通院している内科へ会社関係者が同行してはとのアドバイスをうかがいました。(その産業医は彼はうつ病とは思えないと言っていました。また、内科医はそう簡単にうつ病の診断書を書かないのではとも言っていました。)その際、?現状?今後の治療方針?今後の見込みを伺うとともに、それとなく専門医への受診を内科医から本人に勧めてもらっては、、、とのことでした。

その後、上長と私で本人と面談し、内科への同行を打診しましたが、会社の人間と病院に行くことには同意できない。通院はプライベートな問題なので。業務命令であればやむを得ないが、その際は法律等根拠を示してほしい。また、面談自体がストレスに感じる、私の態度が威圧的である、とまで言いました。一旦、引き下がりましたが、今後の対応に悩んでいます。

彼は、超有名私立大学理工学部の大学院を修了して当社へ入社しました。しかし、持ち前の性格、業務遂行能力、コミュニケーション能力のせいなのか、係長級どまりで職位解任を控えています。プライドが高く、同期入社組から部長、支社長が誕生するたびに、愚痴をこぼしています。私はうつ病ならじっくり休養して治療に専念してはと提言しても、私しかできない仕事がたくさんあるからそうはいかない。迷惑をかけないよう注意するのでしばらく様子を見てほしいというばかりです。親しい社員には、「仕事自体が嫌、会社に行きたくない。でもやめるわけにはいかない。」などとこぼしているようです。私の見たところ、本人と親しい社員は片手どまりです。仕事に関しては、これまで経験してきた定例業務は行うものの、突発的に発生した業務、難易度の高い業務に対してはあからさまに嫌がる態度を示します。そのくせ、雑事等は部下に丸投げするなどして、常に定時に退社しています。うつ病の経験者としては、この部下の言動・行動からして、本当に「うつ病」なのか疑問に思わざるを得ません。職場のメンバーも腫れ物に触れるような雰囲気です。先生の著書を複数拝読しましたが、擬態うつ病、自
己愛性パーソナリティ障害、仮病に思えてなりません。会社の助言、アドバイスを一切聞き入れないこの部下への対応方法、先生の所感をご教授いただければ幸いです。

 

林: この30代の社員の方は、うつ病の可能性は低く、擬態うつ病でしょう。他方で、発達障害の傾向がありそれによる二次的な症状という要素もありそうですが、それは擬態うつ病という判断を排除する根拠にはなりません。

ただし、擬態うつ病というのは正式な病名ではありませんし、内科医からとは言えとにかくうつ病の診断書が出されている以上、会社としてはうつ病としての対処が求められると考えなければなりません。これは医学的にも社会的にもかなりの違和感があるところですが、現在の日本の現状です。そしてこのような場合、

職場のメンバーも腫れ物に触れるような雰囲気です。

という状況になることは、現代の日本の職場で非常にしばしば発生している問題です。

会社の助言、アドバイスを一切聞き入れないこの部下への対応方法、

については、現状では、会社のルールを厳格に適用するというのが唯一と言える回答になると思います。すなわち、会社にたとえば、「社員は安定的に勤務しなければならない」「安定的な勤務とは、月の休みが3日以内であることを指す」などの成文化されたルールがあれば、もしそのルールを遵守できず、そしてその遵守できない理由が病気なのであれば、会社としては安全配慮義務などの理由で、休んで治療に専念することを指示する、というのが一つのパターンです。

なお、この【3983】のケースのように、出勤はするものの本来求められている業務ができないことによる問題は現代の日本の企業でかなり深刻な問題になりつつあります。その原因は単一ではありませんが、この【3983】のケースのような擬態うつ病はその中でかなりの割合を占めていると考えられます。

(2020.2.5.)

05. 2月 2020 by Hayashi
カテゴリー: うつ病, 擬態うつ病, 精神科Q&A