【3942】統合失調症患者と思われる方のレイシズムについて

Q: 私は30代男性です。
先日ユーチューブにて趣味の動画を鑑賞していたところ明らかに統合失調症と思われる方の動画投稿を見つけてしまいました。
その内容はカメラ撮影をしながら町中を歩き回り「在日韓国人(実際は差別用語でしたので変えました)が電磁波を放出し集団ストーカーをしている」「日本人を殺そうと計画を練っている」「精神病(これも精神疾患者への差別用語だったため変えました)は存在しない病気」「精神病院(これも汚い表現)に措置入院した」等の聞くに堪えぬ罵詈雑言の演説が投稿されておりました。

私はつい義憤に駆られてしまいその方のブログにてその内容の反論をしてしまいました。
理路整然に書いたつもりですが書いた後に、精神病に明るくない私がそのような方に強い言葉をかけるのはむしろさらにその病気を悪化させることとなり、かえってその方にとって逆効果になるのではないかとふと感じてしまいました・・・しかしなにもしなければ彼、彼女らは今後もそれらの行為を続けてしまう。

やはりそういった人たちに対し精神医学を学んでいない者は一切関わりを持たぬことが最善なのでしょうか?

乱文申し訳ありません。日本人としてそのような差別はどうしても許せなかったので投稿させていただきました。

 

林: 病気の症状が、周囲にとって迷惑になるとき、心ある第三者には深い苦悩が発生するものです。(ここで「迷惑」とは、精神的・身体的なあらゆる他害行為を含みます。この【3942】で示されているような動画の作成・公開ももちろん含みます)
その苦悩の源には、病気の本人と周囲の両方にとって十分に納得できる解決策は存在しないという事実があります。この【3942】の質問のポイント、すなわち、

そのような方に強い言葉をかけるのはむしろさらにその病気を悪化させることとなり、かえってその方にとって逆効果になるのではないかとふと感じてしまいました・・・しかしなにもしなければ彼、彼女らは今後もそれらの行為を続けてしまう。

という葛藤は、まさにこの苦悩を体現するものです。

けれども、興味本位が無関心に優るのと同様に、この【3942】のようなケースでは、不適切対応は無視に優ります
(「興味本位は無関心に優る」については【2783】興味と興味本位の違いは何ですかなどをご参照ください)
もしこの【3942】で示されている動画が無視され続ければ、その動画で中傷・攻撃されている人々にとっての害が続けられることになるばかりでなく、動画を作成した本人と彼の持つ病気に対する非難や、さらには偏見が強まることになるでしょう。そして、無視され続けていても仮に何らかの理由で動画が削除されたとしても、その後も同じ本人や同じ病気を持つ別の人によって同じことが何回も繰り返されるでしょう。

強い言葉をかけるのはむしろさらにその病気を悪化させることとなり

確かにその通り、病気を悪化させることになるかもしれません。したがって質問者の行動が最善だったとは言えません。けれども、無視するよりは優ります。

やはりそういった人たちに対し精神医学を学んでいない者は一切関わりを持たぬことが最善なのでしょうか?

学んだからといって適切に対応できるとは限りませんし、そもそもこのようなケースでは、すべての人が納得する絶対的に適切な対応というものは存在しません。では相対的に適切な対応は何か、それは専門家だけがいくら考え議論しても到達できない答えであって、多くの人々がこの問題を無視せず、たとえ不適切であっても関わりを続ける中からのみ形を現すものでしょう。

(2019.12.5.)

05. 12月 2019 by Hayashi
カテゴリー: サイトの方針, 精神科Q&A, 統合失調症