【3878】虚言癖と非常識な贈り物

Q: 私は47歳女性です。
現在75歳の母について、ハッキリさせておきたいと思い、メールをしました。
2年程前、母はなんらかの精神疾患だったのでは?と思いはじめ、妙に納得したのです。
かれこれもう、30年も前から、母の行動に困ることがありました。私が高校生のときの出来事。2歳年下で高校に入学したばかりの弟の部屋に、私の同級生の男子たちが数人、遊びにきていました。しばらくして、その男子たちから呼ばれて聞いたことは、母が、その男子たちが弟に、高校をやめるようにけしかけていると、事実ではないことを、学校に電話をしたというのです。男子たちは、誤解させるようなことをしてしまったのかもしれないと私に謝りました。彼らは高校を辞めたいと言っていた弟を励ましていたと知りました。とてもショックでした。

この件はまだ、息子を案じるがための母心と解釈できないではありませんが、私も弟も、決してそうではないことを、察していました。母の特徴的な行動だったからです。このような母の行動が、私の記憶には幾つもあります。私が中学のときは、担任に電話をしては、私が家庭ではなかなかお手伝いをしないと話したり、職場や教習所など、行くとこ行くとこ、ありえないことを言っては電話をするのです。職場には、私が辞めるつもりで休職していたときに電話をし、私のプライベートの話を、まるで相談でもするかのように、電話をしたのです。ちなみに私は、素行が悪かったということは一切ありません。また母には、度々、虚言癖もありました。普通の会話の中に当たり前のように虚言が入ります。
母は炊事洗濯ができない人でもなく、仕事ができないわけでもありません。むしろ、私が15の時に父が亡くなったので、それからは女手一つで働いてきた人ですが、人間関係や母の評判は如何なものかと案じることもありました。

なぜ今になってこんなことに気づき、こちらにメールをしたかと言いますと。前々から母は、人に贈り物をするのが好きだったのですが、子供から見ても、それはやりすぎではないかと思うことが度々あり、時には、逆に気分を悪くされて、返された人もいらっしゃいました。しなくてもいい人にお中元をしたり、お祝いを送ったりするのです。
今や年金生活で、姉夫婦の近くに住んでいますが、お金が入ると贈り物に使っているとのこと。姉の話を聞いていると、母はお金の管理ができておらず、贈り物をして困ったら、姉や孫にまで泣きつくと聞きました。

そこで、お恥ずかしながら、初めて母を、病気ではないかと、ようやく思えたのです。お金の管理も、年老いたからではなく、もしかしたら、昔からだったのではと、思い当たることがありました。
もっと早くに気づくべきだったでしょうが。でもこれは、私の素人判断です。
林先生にお聞きし、もし病気であれば、どういった病気なのかお聞きしたい。まずは私の長年の、母に対する不信感に、決着がつきますし、もう高齢だからと半ば諦めていますが、もし今からでも、できることがあるなら、みんなが困らないように、できるだけのことはしていきたいと思います。例えば、精神科の受診は今からでも必要なのか、それとも無駄なのか。私達が気をつけることはなにか。もし病気だとすれば、今後悪化はするのか。なんでもかまいません。
アドバイスをお願いしたく思います。

 

林: お母様には病的な虚言があります。はっきりと言えるのはそこまでです。

母には、度々、虚言癖もありました。普通の会話の中に当たり前のように虚言が入ります。

と質問者も明言されていますが、そこまでに書かれている、

母が、その男子たちが弟に、高校をやめるようにけしかけていると、事実ではないことを、学校に電話をしたというのです。

私が中学のときは、担任に電話をしては、私が家庭ではなかなかお手伝いをしないと話したり、職場や教習所など、行くとこ行くとこ、ありえないことを言っては電話をするのです。

なども当然に虚言の範疇に入ります。(すると、質問者がおっしゃる「虚言」の具体的内容をもっと知りたいところではあります。)

病的な虚言の実例は、 虚言癖、嘘つきは病気か に多数掲載してありますが、その中には非常識な贈り物をするというケースはなく、その点がこの【3878】についての興味深い特徴であると言えます。

病的な虚言は、実際には表面化していないだけでかなり膨大なケースが存在すると思われますが、精神医学の死角にあって信頼できるデータに乏しいため、このケースについてもはっきり言えるのは「病的な虚言があります」という単純な事実にとどまります。したがってここから先は根拠の乏しい推定にすぎませんが、「虚言」と「非常識な贈り物」は、自分をよくみせる、自分を注目させる、という目的のためには、手段を選ばない(「選ばない」とまでは言えなくても、「普通ならしない手段を選ぶ」)という共通点があるのかもしれません。病的な虚言者の少なくとも一部はB群パーソナリティ障害(自己愛性パーソナリティ障害、演技性パーソナリティ障害、境界性パーソナリティ障害などを含みます)であることも、この推定をある程度は裏付けるものです。病的な虚言とパーソナリティ障害の関係については、美少女L、その他、の虚言もご参照ください。

精神科の受診は今からでも必要なのか、それとも無駄なのか。

残念ながら、精神科を受診しても無駄だと思います。虚言は精神医学の死角にあって、ほとんど精神医療の対象として扱われていないからです。

(2019.9.5.)

05. 9月 2019 by Hayashi
カテゴリー: パーソナリティ障害, 精神科Q&A, 虚言 タグ: |