【3780】私には虚言癖があるのでしょうか
Q: 20代女性です。 ひょんなことでこちらのサイトを発見し、以後時間を見つけては色々なQ&Aを拝読させて頂いております。その中で、虚言の欄を見ていると、自分にも当てはまることが多々みられ、今回ご相談をさせて頂くことにしました。
私が自分に虚言の疑いがあると気づいたのは精神科Q&Aの中の 【3520】私の虚言癖を読んだときです。
この方とほぼ同一のことを日頃無意識にしている事に気付きました。
具体的には、幼いころから叱られる事をどうしても避けていて、宿題が終わってない時には、親に昨日は熱があったから宿題がままならなかったと連絡してもらったりしていました。
現在にもその癖は残っており、自分の中で〔これはやらない方がいい〕と思う事案 (連日の朝帰り、バイトの欠勤など)をした際には、誰にもバレないように辻褄を合わせて正当化するための嘘をついてしまいます。
おかげで、そういったケースがバレたことはなく、ついつい口がすべる。といったこともありません。
こういった割と大きなものから、それこそ、先程あげたリンクの中にもある、朝ごはんを食べたのに食べてないなどという、つく必要もない嘘を日常的に繰り返してしまいます。このような類のものも含めると相当数の嘘をついているだろうと思います。
しかも、そのほとんどが罪悪感はほとんどない、会話の中で必要なウソであり、社交辞令やお世辞とほとんど同じものだと考えてしまいます。
返って友人などが嘘をつかずに話した時には、雰囲気や関係性が悪くなるのにどうして正直に話すの?とさえも感じてしまうこともあります。
私の中でこういった嘘は、自分の非を隠すための武器もしくは、会話を盛り上げる材料として利用しているのだと思います。そのため、嘘をつくことすらも護身のため、楽しい雰囲気のための至極当然なこととして自分の中で正当化してしまっているように思えます。
私のこの癖は虚言癖と呼べるものなのでしょうか。
林: 虚言癖と呼べると思います。
もっとも、虚言癖には、正式な定義というものがありません。そもそも虚言癖という言葉が正式な用語ではありません。他方、嘘をつくこと自体は誰でもある程度はすることですので、そういう「普通の嘘」と「虚言癖」の境はどこに線を引くのが適切かという問題が発生します。
これは精神科のほかの病気でいえば、「普通の気分の落ち込み」と「うつ病」の境はどこに線を引くのが適切かという問題と共通するところがあります。
これがたとえば幻覚や妄想であれば、それらが「ある」ことで、病気と判断するかなり強い根拠になりますが、「嘘」や「気分の落ち込み」は、それらが「ある」ことだけでは、到底病気と判断する根拠にはならないからです。
そうしますと「嘘」や「気分の落ち込み」は、それらの「量」(強さ)と「質」が、普通とは違うかどうかによって、病的かどうかを判断することになります。
このうち、「気分の落ち込み」については、うつ病の診断をめぐる問題として多くの白熱した議論が存在しますが(林の奥 の うつ病の聖杯 が参考になると思います)、「嘘」に関してはそうしたものはなく(「虚言は精神医学の死角にある」と私は考えています)、したがって実際のケースをなるべく多数参考にしたうえで考えるしかないというのが現状です。
その観点からしますと、この【3780】の質問者が精神科Q&Aの中の虚言のケースとご自分を比べてみるという方法は適切で、また、その結果、自分にも虚言癖があるのではないかとお考えてになったのも適切だと思います。
そして、虚言癖は、正式な定義さえないわけですから、有効な治療法というのもわかっていません。けれども、少なくとも本人に自覚があり、虚言はやめなければいけないという意志があれば、努力によってやめる(あるいは最小限の嘘にとどめる)ことは可能だと思います。是非その方向に努力なさってください。
(2019.2.5.)