【3761】何回も薬をやめ再発している統合失調症の息子

Q: 現在32歳の息子は18歳のとき、大学受験を機に発症しました。私は60代の母です。
最初は醜形恐怖のような症状でしたが、その後、診断は統合失調症に確定しています。
発症してから半年ほどして近くのクリニックをようやく受診し、その後通院を続け、(その頃はリスパダール2mg/日ほどでした。)デイケアにも通い、楽しそうでした。醜形恐怖で引きこもりがちでしたのでこのままこの調子でいけるかなと思っていました。
「みんなは幻聴聞こえるらしいんだけど僕には無い」と言い、しかし醜形恐怖のような症状の苦しみは4年ほど続きました。
その頃は病気を隠してバイトもしておりました。医師からも軽い症状だしバイトもして良いとの事でしたので。
バイトは楽しそうでしたし私もうれしかったです。同年代の方たちと病気を隠しながらとはいえ普通に近い生活が楽しめていたのですから。息子の笑顔が見れるのが何よりうれしかったです。

しかしその後、症状が盗聴とか被毒妄想など段々広がって行き、親に対しても疑いの感情を持ち始め、夜になると家におらず車でコンビニなどの駐車場に止め寝泊まりするようになりました。
親に対する疑惑、不信感のようなものから家に居るのがいやだったようです。その頃は幻覚が白か黒かの間のグレイの状況で病気に吸い込まれそうな自分や、浮かび来る幻覚に苦しんでいたようです。調子が良い時は「お父さん、お母さんを信じたいんだけれど頭がそう考えちゃって否定できない時があって苦しいんだよ」と言っておりました。しかし次の日には別人のよう殺気立ったり。この頃より通院も一緒に行くことを拒みはじめました。
医師との診察では本人は絶好調と言っていたようです。が、この頃から怠薬も始まっていたのだと思います。
段々家族に対して刺すような目つきになり、ネットに俺のことを投稿して悪口を言ってるとか、毒を入れたと食事も食べなくなり、家でのやりとりがとても大変になって行きました。
そして4年前、神奈川の自宅から大阪まで高速で行ってしまい、大阪で警察に保護されました。とても高速に乗り運転するほどの運転歴、技術は無く、事故無く無事で良かったと胸をなでおろしました。
それを皮切りに初入院。今まで、6回の入院を繰り返しております。
怠薬癖がついてしまい、退院後しばらくすると崩れてきて、家族も3ヶ月間は波風立てないように息をひそめて暮らしております。
入院も3ヶ月すると病状に関わらず強制的に退院させられますし、「3ヶ月は我慢して家族で見て下さい。法律ですから」と言われます。
長期療養型病院は高齢者が多く、遠く山奥にしかないしデメリットが多いのでお勧めしないと言われます。
うちのように本人がデイケアにも通わない、家族が地域で孤独に看なければいけない負担の重さを解って頂けないのがつらいです。
怠薬癖はどうにか工夫はできないものでしょうか?よろしくお願い致します。

 

林: 統合失調症の多くは、服薬を続けていれば安定しているものですが、このケースのように怠薬(服薬の自己中断)によって再発を繰り返す例が少なくありません。もちろん病気の性質と服薬の必要性を本人に説明し理解していただいたうえで薬物療法を続けるというのが正道であり理想ではありますが、そもそも病識を欠くことが多いという統合失調症という病気の性質上、そう理想通りにいかないケースは多々あります。
そのような場合の一つの方法としては、月に一度注射することで毎日の服薬と同じ効果を出せるデポ剤という薬を使うことです。この【3761】のようなケースはデポ剤を使うことを検討するのがよいと思います。

なお、

入院も3ヶ月すると病状に関わらず強制的に退院させられますし、「3ヶ月は我慢して家族で見て下さい。法律ですから」と言われます。

とのことですが、そんな法律はありません。退院させられるのは主に診療報酬上の理由でしょう。それは法律といえば確かに法律ですが、「強制的に退院」までを法律が定めているわけではありません。入院は短期間が望ましいというのは一般論としてはその通りですが、よくなっていないのに退院させられるのでは、患者や家族にとっては入院の意味がありませんから「病状に関わらず強制的に退院させ」るということがもしあるとすれば、病院としての責務をはたしていないと言えるでしょう。これでは3ヶ月分の入院費を稼ぐために入院させているという批判は避けられないところです。

長期療養型病院は高齢者が多く、遠く山奥にしかないしデメリットが多いのでお勧めしないと言われます。

これについては地域によって異なりますので、何とも言えません。

(2018.12.5.)

05. 12月 2018 by Hayashi
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