【3758】母はそのまま帰って来ませんでした
Q: 私は7人兄弟の末っ子、現在29歳女です。
とても長くなってしまいますが、お時間のある際、お読み頂けると嬉しいです。
まず、幼少期の大きな出来事があった部分のご説明と、不思議に思っている部分の質問からさせて頂きます。
まず私が3歳の頃、両親が蒸発し、一週間ほど兄弟7人のみで生活し、どうにもこうにもとなったために、長女が田舎にいる父方のお母さん(私達にとってのお婆ちゃん)に電話をし、助けを求めたところ、お婆ちゃんや親戚などが助けに来てくれ、お婆ちゃんは、年齢的にも経済的にも全員を引き取ることは出来ないと判断し、私と一つ上の姉(4歳年上の当時7歳です)のみ、お婆ちゃんに引き取られ、他の5人は親戚の家へと引き取られ、兄弟は離れ離れとなりました。
お婆ちゃんに引き取られた後の生活の記憶はきちんと鮮明にあります。
ですが、そこからプツンと記憶がなく、一年後、気づいたら、行く宛のない子供や老人などを住み込みで面倒を見るということを行なっている家があり、そこの家の方が里親となり、その大きな家の一部屋をお借りして、兄弟7人で生活していました。
(里親となった方は実の子がおり、実の子たちと本家の一部屋で住んでいて、私たちは離れのような家の一室だったので、完全に別々の生活でした。)
後から聞くと、姉が暴れてお婆ちゃんを蹴ったりなどし、次の日お婆ちゃんが倒れ、どこかは知りませんが、内臓破裂していたそうで、入院となり、そこでお婆ちゃんの知人のつてで、その里親の元へ行くことになったとのことです。
その家は、兄弟全員を引き取ると言ってくれ、そこで兄弟7人再会し一緒に過ごすことになったという流れだったそうです。
そこからその里親の元での生活は、鮮明に覚えています。
ですが、また一部大切な記憶が抜け落ちていることを、中学生になった頃に兄弟から聞いて知りました。
それは、施設に引き取られ1年程経った頃、実の母親が私たちに会いに来て、2日間一緒に過ごしたことがあり、そのこと自体は覚えているし、どんな風に過ごしたのかも鮮明に覚えているのですが、再会した瞬間の記憶と、母がまたいなくなったときの記憶がありません。
母はその日、「今日は私が迎えに行きます」と、私の保育園のお迎えを自分が行くという旨を里親に伝えたそうです。
私が「今日は保育園をお休みしてお母さんと居たい」と駄々をこねたそうですが、母が私にも「今日はお母さんが保育園のお迎え行くんだよ、お友達を紹介してね」と言い、単純な私はお友達に本当のお母さんを見せれるということに喜び、お母さんと約束の上、保育園に行ったそうです。
ですが、待てども母は来ず、大分遅くに、保育園から里親の元へお迎えがまだ来ないと連絡が入り、急いで迎えに行くと、「お母さんが来るから待ってる」と言い、説得するのが大変だったとのことです。
結局、母はそのまま帰ってくることはなかったそうです。
ですが私にはそのことだけ記憶がないのです。
更に不思議なのは、その家には、今思えば酒乱の中年の男性も住み込んでいて、一度その男性から殴る蹴るの暴行を受け、血まみれになるケガを負ったことがありますが、その記憶はしっかりあります。
(その時友達が遊びに来ていて、その友達の前で暴行されたのですが、その友達の横に立ち第三者の目で私を見ているといった感覚で覚えています。)
また、その家にはいわゆる訳ありの人たちが沢山住んでいたので、そういった暴力や、言葉の暴力などは沢山あり、そのほとんどは同じように自分の表情やその時の感情などまで、記憶にしっかり残っています。
長くなりましたが、このように当時の他の記憶はしっかりあるのに、大きな変化や大切な出来事だけは本当に綺麗にすっぽりないというのは、一体どういうことなのでしょうか?
自分にとってショックだったことを忘れているだけか?と思ったこともありますが、ではなぜ、暴力なども自分にとってショックな出来事なはずなのに、覚えているのか?ということがまた、不思議です。
そして自分でもよく分からないことを、箇条書きさせて下さい。
(1)素直に甘えることが出来てそれを許される子供たち(自分の子供ではありません)に対し苛立つ。
それは嫉妬のような感情に近い気がするが、いい大人が、こんな感情を子供に抱くことはおかしいと分かってはいるのに、自然とそういう風に子供を見てしまい、冷たく接してしまう。
(2)20歳頃、寝て起きた際に隣に寝ている自分がいて驚いた。その瞬間は幽体離脱だと思い怖くなり、自分に戻ろうと近付いてみるが、戻れなく、何度も何度も繰り返してやっと自分の体に戻れた。あれは何だったのか?
(3)自分の背後に何かがチラッと見え、人がいると思い振り返ると誰もいない。これは1日に1回はある。
(4)世界がおもちゃのようなものに見えることがあったり、逆に天井などがすごく高くなったように感じることがある。
(5)扉(引き戸タイプ)が勝手にゆっくり開いてゆっくり閉まったように見えることがある。
(6)今の自分が本当の自分なのかが不安になる。どこかで入れ替わって、そのまま偽物の私のままで生きているような気がしている。これが一番の悩みです。
(7)カッとなると必要以上に相手に対しキツイことを言ってしまい、思い返して必ず後悔するが、同時に思い返したその記憶というのは、モヤがかかったような感覚で、ハッキリとした自分の記憶ではないように感じる。
(8)意味もなくひとりで泣いている。意味はないのに、泣こうと思ってわざと泣いているという感じがする。
(9)自殺願望はないが地球ごとすべて何もかもがなくならないかな、と思う。
(10)誰かと話していると自分の話ばかりしてしまい、帰り道に「今日もなんであんなに話してしまったの?もう嫌われた!」と悩み続けて、心の中で自分自身に「バカ、何回言えば分かるの?」など文句を言っている。何度繰り返しても直せない。
(11)漠然と自分は何かがおかしいのだと思うけれど、どうしたらいいのか分からず、ずっと生き辛い感覚がある。
(12)中学生のとき、「最近のあなたはおかしい」と、里親に連れられ心療内科に行き、その際は先生から「問題はないけど少しの間頑張って来ようか」と通院を勧められたが、当時は、問題ないのに何で?と苛立ち、結局それっきり行きませんでした。今の自分はあのときちゃんと行かなかったせいなのかと、とても不安に思うことがある。
(13)空を飛ぶ夢を5日間ほど連続で毎日見て、また見なくなるが、また5日間ほど連続で見るなど、空を飛ぶ夢は必ず連続で見るが、他の夢はそんな風に続けて見ることがない為、この意味が気になる。
(14)過去の自分を思い出すとき、自分自身の姿や表情まで映るので、テレビを見てるような感覚になることがあるが、これは普通なのか?
などがあります。
自分に甘いだけなのかもしれませんし、何がと言われれば説明出来ないですが、とにかく毎日が生き辛く「楽になりたいな、行けば楽になるのかな」と、何度も心療内科に行こうか悩みながら、こんな程度で行っていいものなのか分からず、踏み切れません。
これだけの情報では判断出来ないかもしれませんが、林先生から見て、可能性のある病気などはあるのでしょうか??
また、もし受診しても「何も問題ないのに時間を取らされて迷惑な人だな」などと思われないでしょうか?
このように10年程悩んでいます。
お忙しいかと思いますが、お返事を頂けると嬉しいです。
とても長く、まとまりのない文章をお読み下さって、本当にありがとうございました。
林: この【3758】には解離の症状がいくつも見られます。その根底には(つまり、原因として)幼少時の体験があると言えます。ところどころ記憶がなくなっているのは解離性健忘です。そして、「自分でもよくわからないこと」として箇条書きにさせている内容は、いずれも解離ないしは幼少時の体験を反映していると解し得るものです。
(1)素直に甘えることが出来てそれを許される子供たち(自分の子供ではありません)に対し苛立つ。
それは嫉妬のような感情に近い気がするが、いい大人が、こんな感情を子供に抱くことはおかしいと分かってはいるのに、自然とそういう風に子供を見てしまい、冷たく接してしまう。
幼少時の体験が根底にあると解釈できます。(それが意識的・無意識的であるかはともかくとして)
(2)20歳頃、寝て起きた際に隣に寝ている自分がいて驚いた。その瞬間は幽体離脱だと思い怖くなり、自分に戻ろうと近付いてみるが、戻れなく、何度も何度も繰り返してやっと自分の体に戻れた。あれは何だったのか?
幽体離脱は解離性障害の典型的な症状の一つです。
(3)自分の背後に何かがチラッと見え、人がいると思い振り返ると誰もいない。これは1日に1回はある。
「うしろに誰かいる」という、幻覚に近い症状は、解離性障害によく見られるものです。
(4)世界がおもちゃのようなものに見えることがあったり、逆に天井などがすごく高くなったように感じることがある。
(5)扉(引き戸タイプ)が勝手にゆっくり開いてゆっくり閉まったように見えることがある。
いずれも解離性障害にありがちな幻覚です。
(6)今の自分が本当の自分なのかが不安になる。どこかで入れ替わって、そのまま偽物の私のままで生きているような気がしている。これが一番の悩みです。
一種の自我の障害で、しかし統合失調症とは異なり、解離の一症状とみることができます。
(7)カッとなると必要以上に相手に対しキツイことを言ってしまい、思い返して必ず後悔するが、同時に思い返したその記憶というのは、モヤがかかったような感覚で、ハッキリとした自分の記憶ではないように感じる。
解離性健忘とまではいえませんが、それに近縁のものです。
(8)意味もなくひとりで泣いている。意味はないのに、泣こうと思ってわざと泣いているという感じがする。
解離の症状の少なくとも一部は、本人もわざとやっているように感じることがあるものです。
(9)自殺願望はないが地球ごとすべて何もかもがなくならないかな、と思う。
(10)誰かと話していると自分の話ばかりしてしまい、帰り道に「今日もなんであんなに話してしまったの?もう嫌われた!」と悩み続けて、心の中で自分自身に「バカ、何回言えば分かるの?」など文句を言っている。何度繰り返しても直せない。
(11)漠然と自分は何かがおかしいのだと思うけれど、どうしたらいいのか分からず、ずっと生き辛い感覚がある。
このような自己不全感、抑うつ感も、解離性障害ではしばしばみられます。
(12)中学生のとき、「最近のあなたはおかしい」と、里親に連れられ心療内科に行き、その際は先生から「問題はないけど少しの間頑張って来ようか」と通院を勧められたが、当時は、問題ないのに何で?と苛立ち、結局それっきり行きませんでした。今の自分はあのときちゃんと行かなかったせいなのかと、とても不安に思うことがある。
どちらかといえば通院したほうがよかったとはいえますが、通院しなかったことで重大な結果になってしまったとまでは言えません。
(13)空を飛ぶ夢を5日間ほど連続で毎日見て、また見なくなるが、また5日間ほど連続で見るなど、空を飛ぶ夢は必ず連続で見るが、他の夢はそんな風に続けて見ることがない為、この意味が気になる。
「空を飛ぶ夢」は、解離性障害で比較的よく見られる夢です。
(14)過去の自分を思い出すとき、自分自身の姿や表情まで映るので、テレビを見てるような感覚になることがあるが、これは普通なのか?
これは幽体離脱とは違いますが、それに近い、ないしは同様の背景があると解釈できる症状です。
以上、いずれもかなり典型的な解離の症状ないしはその近縁の症状とみることができます。そしてその根底には幼少時の体験があると考えられ、それもまた解離においてしばしば見られることです。
(2018.12.5.)