【3625】統合失調症の新入社員について  

Q: 40代前半の会社員(女性)です。
ひと月ほど前に30代後半の男性が技術職で入社しました(私の部下になります)。
面接時にそわそわした挙動があったのですが、技術職には多少変わった方もみえますし、健康状態も良好ということで採用しました。
しかし、入社直後から居眠りや水分の過剰摂取(2時間に軽く1リットルは飲んでいます)、常にそわそわしていたり、大きな声で独り言をいうなど、普通でない行動が見受けられたので、本人に理由を問いただしたところ、統合失調症で通院中であることを告白しました。
本人曰く、医者は就労可能であると診断しており、薬を飲んでいれば支障はなく、上記の症状は薬の影響によるもので、病気のせいではないと言っています。
ただ、素人目に見て生活に支障がないとはいいがたいようにみえます。

病気発覚後、総務や役員を交えて話し合いを行いましたが、重大な病気を隠していたので解雇やむなし、という意見とひとまず休職させ、病状が安定してから再度就労させるという意見で割れております。
そして本人は、医者は就労可能と言っているし、自分自身働きたいと思っているので通常通り勤務したいと申しております。
ちなみに、当社は小規模な会社ですので、産業医はおりません。
医者の診断書は本人が持ってくることを拒否しています。

私としては休職させて、病状が安定してから再度就労させたいと考えていますが、 診断書すら持ってこない人間が、果たして病院に素直に行くだろうかという心配と、弊社の技術職は残業が多くハードなため、病状が安定したとしても、このような病気の方に勤まるのだろうかという心配があります。
勤務状況がハードなため、病状が悪化するということは絶対に避けたいことです。
統合失調症の方にハードな仕事が難しいということであれば、一般事務等の職種に変えたり、最悪退職勧奨も検討しなければなりません。
ただし、一般事務に配置転換となると給与を大幅に下げなければなりませんので、本人が拒否する可能性があります。
このような病気の方でも、精神的負荷の高い仕事はできるものなのでしょうか。

 

林: 統合失調症であっても、適切な治療を受けていれば、健常者と同じか時にはそれ以上の職能を発揮する方はいらっしゃいます。もちろんそうでない場合もあります。いずれにせよ「適切な治療を受けていれば」が前提条件ですので、この【3625】のケースでは、まず、適切な治療を受けているかどうかが問題になります。また、医師が就労可能と言っているというのであればそれを証明する診断書が必要なのは当然で、診断書提出を拒否されているということは、残念ながらこの【3625】のケースは不誠実であると言わざるを得ません。また、会社の側からすれば、精神疾患に限らず、病気の人を無理に働かせるのはむしろ不当ですし、病気のために仕事内容に配慮する必要も当然にあるわけですから、診断書の提出を求めるのは義務であるとも言えるでしょう。

勤務状況がハードなため、病状が悪化するということは絶対に避けたいことです。

そのためにも診断書の提出は必須です。

病気発覚後、総務や役員を交えて話し合いを行いましたが、重大な病気を隠していたので解雇やむなし、という意見とひとまず休職させ、病状が安定してから再度就労させるという意見で割れております。

重大な病気を隠していたので解雇やむなし」という意見の方がいらっしゃることは理解できますが、統合失調症は軽い場合もありますので、統合失調症であればすべて「重大な病気」(隠していた場合、解雇に値するまでに重大な病気)とは限りません。(それは一般論で、この【3625】がどうであるかは別の話ですが。) また、「ひとまず休職させ」という判断も、会社側だけで下すのは不合理です。仮に休職させたとしても、復職にあたって「病状が安定」ということを会社はどのようにして判断される予定なのでしょうか。やはり医師の診断書の提出を再度求めるというのが筋を通した対応ということになります。それでもご本人がどうしても提出を拒むのであれば、強い対応もやむを得ないでしょう。

(2018.2.5.)

05. 2月 2018 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 統合失調症