【3361】急性一過性精神病性障害と診断された弟が退院してから仕事に行かれなくなった

Q: 私は3人兄弟の長女(30代後半、既婚)で、上に兄(40代前半)、下に弟(30代前
半、既婚)がいます。

弟は、3年程前に心療内科にて鬱病と診断され、退職。
退職後 半年程経った後に、実家の会社(両親・兄・私、他従業員もいます)に入りました。

転職時期と重なって、当時一人暮らしだった弟は1週間ほど行方が分からなくなり、その間、連絡が取れない日々が続きました。
その後、当時交際中だった県外に住んでいた義妹のもとに現れた時には妄想や妄言が激しく、2日後に私・義妹・両親で精神科に連れて行きました。 (その時の症状は、後ろからずっと車で誰かがついてくる、知らない車を義妹だと思ってついていく、小さな音が大きく聞こえて異常に怯える、1週間ほど風呂に入らない、裸で外に出ていく、不眠、目がギラギラしている等)
精神科で、弟はいかに自分が精神的な病気ではなく冷静かを話していましたが、お医者様に急性一過性精神病性障害と診断され、入院後すぐに症状は落ち着きましたが、念の為とお医者様に言われ、2ヶ月間入院しました。

退院後、3ヶ月程休んだ後に休みながらも実家の仕事に復帰しました。

それから現在まで、弟は1週間のほとんどを朝から仕事に行くことなく、半分休んで、半分は午後から出勤する生活です。(実家の会社なので、その事で辞めさせられることは今の所ないです)

職場での人間関係があまり良くありません。
仕事に出勤出来ないのが根本的な原因で、弟本人にもその自覚はあります。
特に、一緒に働く兄が弟の勤務態度に腹を立てて仕事中もプライベートもほとんど無視。それが更にストレスの原因となっているようです。

仕事の日は朝から起きれず、一日中ごはんも食べずに寝ている日もあるようです。
酷い時には起きれないと20時間くらい寝ています。

かと思えば、休みの日は早起きして遊びに行ったり(海外旅行にも数回行っています)ということもあります。
昨年結婚した義妹も弟にどのように接すれば良いか分からない状態です。
義妹は遠方から嫁いできて、弟は病気も治りすっかり職場復帰しているものだと思っていたそうです。
嫁いで来て一年間、専業主婦で、そんな弟の様子を間近に見続けてきて義妹も何をいってもどうすることも出来ない現状に限界を感じ始めて、離婚も視野に入れています。

入院した精神科からは薬をもらっているのですが、義妹の話だと飲んだり飲まなかったりしているようです。
(弟が管理している為、義妹は薬の種類は分からないのですが、エビリファイという薬がゴミ箱にあったそうです。)
最近は、病院にも行っている気配はありません。

普段の弟はというと、仕事以外ではとても明るく人懐っこいです。
しかし、仕事の話、兄の話になると、急に機嫌が悪くなり口数が減ります。

実家が裕福なので、両親の援助もあり、生活に困っていないのが弟夫婦の現状。
両親は時間が解決してくれる、今は休む時で無理をさせたくないと、甘やかしているように見えます。
弟が仕事の時に寝過ぎているのが甘えから来るものなのか、入院した病気をまだ引きずっているのか、また別の病気なのか…。
通院治療が必要なのか、私が家族として何か出来ることがあるのか…。

この先、弟が人並みの社会生活を送れる日が来るのでしょうか?
病気なのか、出来が悪いのか、どちらにしても可愛い弟です。
小さなことでもいいので、教えていただけることがあればお願いします。

 

林: 急性一過性精神病性障害については、
【2115】急性一過性精神病性障害と診断された妻の経過
【3213】急性一過性精神病性障害と統合失調症の違いは何ですか(【3149】の追記)
【3149】急性一過性精神病性障害とは
などをご参照ください。【2115】の回答に記した通り、この診断名がつけられるのは、
(1)文字通り急性に発症し、一過性におさまった場合
(2) 急性期に、暫定的につけられる場合
(3) 本当は統合失調症の可能性濃厚(または、統合失調症と確定診断されている)だが、本人や家族の心情を考えて統合失調症という病名を告げることを回避する場合
です。そして、実際には(3)すなわち統合失調症である場合が多いものです。【2115】も、その回答に記した通り、統合失調症と診断するのが妥当です。
一方、
【2139】妻の妄想が2,3日で消えました
のようなケースは急性一過性精神病性障害という診断が維持されるのが妥当です。

この【3361】については、おそらく統合失調症と診断するのが妥当なケースと思われます。入院が2ヶ月におよんでいること(医師は「念のため」と説明したようですが、症状が消失していれば、いくら「念のため」とはいえ2ヶ月も入院させるのは考えにくいです。何らかの症状があったと推定すべきでしょう)、現在も抗精神病薬(エビリファイ)が処方されていること、また、現在も発症前の状態までは回復していないこと、そしてそれは陰性症状とみて矛盾はないこと、が統合失調症であろうと判断できる理由です。

もっとも、現在の状態は、職場でのお兄様との葛藤に対する自然な反応とみる余地もありますので、もしそうだとすれば統合失調症の可能性は薄れることになります。

けれどもそれは表面に現れる行動だけからは判断できませんし、統合失調症だった場合、

入院した精神科からは薬をもらっているのですが、義妹の話だと飲んだり飲まなかったりしているようです。
(弟が管理している為、義妹は薬の種類は分からないのですが、エビリファイという薬がゴミ箱にあったそうです。)
最近は、病院にも行っている気配はありません。

そんな状況では早晩再発し入院前のような激しい精神病状態に陥るおそれが高いです。

両親は時間が解決してくれる、今は休む時で無理をさせたくないと、甘やかしているように見えます。

それはあまりにいい加減な判断と言うべきです。そのように根拠のない楽観的なご家族の姿勢は、しばしば病気を最悪の経過にしてしまうものです。

通院治療が必要なのか、私が家族として何か出来ることがあるのか…。

主治医の先生にお会いして、診断を含め、現在の弟さんの状態をどうみておられるのかよくお聴きください。まず現実を把握しないことには、先に進むことはできません。

(2017.1.5.)

05. 1月 2017 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 統合失調症 タグ: |