【3033】弟は医療保護入院になりました (【3012】のその後)

Q: 【3012】弟の統合失調症の再発の兆候および再発後について‏で回答いただいた30歳男性です。ご回答いただきありがとうございました。

結論から申しますと、弟は医療保護入院となり、現在約1ヶ月が経過しております。
医療保護入院となった経緯をお話します。

悪化の主原因は失恋でした。
悪化前は失恋と認識していましたが、悪化後は相手を恋人と思い込んでいました。

前回の後、再度病院を訪れ、主治医と話し、「次、遁走したら入院」と警告を受け帰宅しました。
しかし、その夜、ゲームセンターに行くと言ったきり出て行ってしまい、また帰ってこなくなりました。

警察に再度、家出人捜索願を出し、失恋の相手を恋人と思ってしまっていることも伝えました。
奇しくも行きつけのゲームセンターの駅とその相手といつも帰りで別れる駅が同じであり、事件に発展する可能性もあるため、2つの警察署で連携して探してもらえるようになりました。

次の日に携帯電話で連絡がつきましたが、「その相手の家に泊まる、帰らない」と言って電話を切られました。
その後は、電池が切れてしまったために連絡がつきませんでした。

遁走してから2日目の夜に2つの警察署とは管轄が異なる警察署にて保護されました。
大型量販店に2日間とも入店し、商品を持ち、笑いながら走り回っていたところを店員が警察へ通報したようです。なお、警察経由でその量販店へは出入禁止を言い渡されていました。

捜索願を出した警察署では保護され次第、措置入院となるだろうと言われていましたが、2つの警察署とは管轄が異なったため、単に家族へ引き渡されただけでした。
服薬を拒んだのですがなんとか飲ませ、薬が効くまで車で当てもなく方々をめぐりました。

その後薬が効き始め眠ったため、入院先を紹介してもらおうと深夜の電話窓口に相談するも症状が落ち着いている(眠っているため)、入院を断られるだろうとのことで紹介していただけません。
明くる日は主治医の病院が休みで、一抹の望みで役所の電話窓口を頼ったところ、病院を紹介してもらえました。
また、ストーカーと呼べる行動もしていたため警察も危惧していたため、警察官に帯同されながら病院を受診、医療保護入院となりました。

今まで想定しえなかった絶望の連続でした。

入院中は保護室に入る、薬の増量などを行い、入院後約1ヶ月で被害妄想はなくなっているように見えました。
しかし、妄想が抜け切れないような状態です。(両親には敵意を示すので、面会できているのは私のみです。)

順調に回復すればよいのですが、相手方がストーカーでの被害届出書を警察に提出したようで、1ヶ月前の入院直後と昨日警察より電話がありました。退院後、ストーカー規制法で警告を受けるかもしれません。
それがまたストレスになるのではと心配はしておりますが、まずは弟の回復を願い待ちます。

最後に質問となりますが、弟が悪化したときの発言で心に残っているものがあります。
ひとつは「自分は親離れできているのに、なぜ子離れできない!」、もうひとつは「発狂するのが怖いのだろう?」で、どちらも母親に対しての発言です。

ひとつめは以下のような経過で思考が変化したのではないかと思います。
「親離れできていない自分への焦り」→「親離れしなくてはいけない」→(思考の飛躍)→「親離れできている」→「自分はできているのに、なぜ母親はできない?」と考えるようになった。
ふたつめは発狂を一番恐れているのは本人ではないか?と思われます。

統合失調症であるがゆえ、どのような思考でそのように至ったのか考えることは意味がないのかもしれません。
真実は本人にしかわかりませんが、上記のように考えることもできますでしょうか?

また進展がありましたらご連絡させていただきます。

 

林: 経過のご連絡をいただきありがとうございました。【3012】の後、かなり綱渡り的な時期もあったようですが、何とか大事に至らず入院となってよかったと思います。この後は徐々に回復していくことが予想されます。しかし、退院後も再発のおそれはあると認識すべきです。そして次回の再発時もこのようにすむかどうかはわかりません。【3012】の回答の通り、薬物療法の見直しが必要でしょう。

ご質問の件、

ひとつめは以下のような経過で思考が変化したのではないかと思います。
「親離れできていない自分への焦り」→「親離れしなくてはいけない」→(思考の飛躍)→「親離れできている」→「自分はできているのに、なぜ母親はできない?」と考えるようになった。

そのように考えることは可能です。そしてそれは事実かもしれません。しかし、いかなる心理的理由があろうとも、これは統合失調症の再発であり、再発を防止するためにはより強力な薬物療法が必要であるという点は動きません。心理的メカニズムを過剰に重視することは非常に危険です。

ふたつめは発狂を一番恐れているのは本人ではないか?と思われます。

この二つ目の質問には意味がありません。「恐れている」というのは主観的な感情であって、誰が一番であるとかないとかいうことはできないからです。

(2015.8.5.)

05. 8月 2015 by Hayashi
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