【3012】弟の統合失調症の再発の兆候および再発後について
Q: 統合失調症を患う24歳の弟を持つ30歳男です。
弟、父、母、3人住まい、私は一人暮らしをしております。父方の祖母が統合失調症で自殺しており、叔母も確証はありませんが、振る舞いを見ていると統合失調症を患っているように見えます。
8年前、弟が高校2年生の時、幻聴および独語の症状が現れました。
家族から本人に病院を受診を打診したところ、素直に従い受診、投薬、自宅療養により寛解までこぎつけ、今は正社員として社会人と過ごしています。また、継続して受診し、薬を飲んでいます。
今までにも空笑い、軽度な妄想など再発の兆候があり、私が両親に病院受診を強く薦め、投薬を増やし、再発を未然に防いできました。
・4日前
電話した際、被害妄想による興奮状態で私と会話したため、いつものごとく病院受診を薦めました。しかし、本人は受診を拒否、また本人の仕事もあるため、次の休みまで受診を保留としました。結果として3日ほど受診が遅れています。今思えば直ちに受診させるべきでした。
・3日前
興奮状態もなく淡々としており病院にいくことも了承していたようです。
・2日前
仕事からの帰宅時に電話で友人の家に泊まるという電話があり(実際にそういう約束はしていない)、興奮状態で会話していたようです。
本人は終電ごろに帰宅しました。両親は泊まるという発言を信じてしまったようです。
・1〜0日前
緊張型の症状が消えず受診拒否をなんとか説得し、病院を受診しましたが帰宅後に妄想による独語、足を踏み鳴らす、壁を軽く叩くなどの奇異行動を行うようになり、薬を飲むことも拒否していました。その時点で私は両親から電話をもらい、実家に向かいました。
その後、ふとした瞬間に落ち着き薬を飲ますことができましたが、飲ませることに安堵した両親が気を抜いたところに、ふらっと外へ出て行ってしまいました。その後に私が到着、入れ違いでした。
外出から全く帰ってこず、両親と私が周辺を探すも見当たらず、警察にも捜索願を出しました。5、6時間経過した明け方ごろ帰って来ました。外出前に薬を飲んでいたこともあり、病状沈静化、眠気により道端で寝てしまっていたようです。私自身も全く眠れず生きた心地がしませんでした。
帰宅後は妄想発言を行っていますが、「ちょっと変なことをいうんだけど」、「なんで外に出てしまったんだろう」など自分の奇異行動を自覚しているタイミングが混在しています。通常いない私がいることでイライラさせやすいことが分かったため、両親に任せ私は帰宅しました。明日再度病院を訪れ、両親が本日の経過を主治医に話し、指示を仰ごうと思っております。
職場での聞き取り、本人からの発言により、仕事のミスがあること、失恋したことなどさまざまなストレスがかかり再発したようです。
私や両親からすると、突然の再発のように見えています。
しかし、考えてみれば1ヶ月ほど前からダンスゲームをしに、ゲームセンターに外出するなど、積極的になり始めました。私や両親は積極的になったのは良い兆候だと思って、気にしておりませんでしたが、これも再発の兆候だったのでしょうか?兆候を見抜くのに苦慮しております。
また、何とか薬を飲ませることができたため、今後も継続して薬を飲ませることはできると思っています。再発することで慢性化しやすくなると聞いておりますが、弟を再び寛解へ持っていけるでしょうか。
長文となり申し訳ありませんが、ご回答いただけると幸いです。
林: 質問者は統合失調症という病気をよく理解しておられ、これまで弟さんを適切にサポートされてきたことが窺われます。質問者が持っておられる知識を考えますと、統合失調症についての基本的な説明は不要と思われますので、ここではこの質問者にとって有益と思われることのみを回答いたします。
考えてみれば1ヶ月ほど前からダンスゲームをしに、ゲームセンターに外出するなど、積極的になり始めました。私や両親は積極的になったのは良い兆候だと思って、気にしておりませんでしたが、これも再発の兆候だったのでしょうか?
その通りです。統合失調症の人と長くつきあってみると、それまでのその人とはニュアンスの違った言動が現れたときが、再発の徴候だということがわかってきます。再発の徴候は、わかりやすさからいうと、次のような順番になります。
1. 幻聴や被害妄想など、統合失調症の典型的な症状の軽いものが現れる。これはわかりやすいです。
2. 不機嫌になる。怒りっぽくなる。【0534】統合失調症の再発の兆候か、それとも単なる夫婦喧嘩かがその実例です。 1.に比べるとわかりにくいですが、こういうパターンの再発もあるという知識があれば、比較的気づきやすいものです。
3. それまでのその人とはニュアンスの違った言動が現れる。この【3012】はその実例と言えます。このパターンも再発の徴候としてはかなり多いのですが、「それまでのその人とはニュアンスの違った言動」といってもかなりの幅があるため、なかなか気づきにくいものです。しかしこういうパターンもあるという知識があれば、早い段階で再発であると気づくことができるでしょう。
私や両親は積極的になったのは良い兆候だと思って、気にしておりませんでした
「それまでのその人とはニュアンスの違った言動」は、このように、一見すると良い徴候に見えることもよくあります。本人も自分の病気は良くなったと思い、自己判断で薬を減らしたりやめたりして、さらに再発が促進されることもよくあります。
また逆に、薬を減らしたりやめたりした結果、良くなったように感じられることもあります。【1640】統合失調症の薬を自己判断でやめた結果、生き生きと生活しているや【2444】私は自然治癒力で統合失調症を治しました がその実例です。
再発することで慢性化しやすくなると聞いておりますが、弟を再び寛解へ持っていけるでしょうか。
おそらく持っていけると思います。再発することで慢性化しやすくなるというのが正しいかどうかは、実は難しいところです。
なお
今までにも空笑い、軽度な妄想など再発の兆候があり、私が両親に病院受診を強く薦め、投薬を増やし、再発を未然に防いできました。
とのことですが、過去に再発が複数回あったということは、薬の量が足りないか、適切でないと考えるべきでしょう。もちろん薬は必要最小限にすべきであり、再発の徴候があればその時点で増薬するというのは適切な方針ではありますが、他方、再発は少ないほうがいい(というより、再発ゼロを目指すべき)のは当然ですし、いつも再発の徴候に気づき未然に再発を防止できるとは限りません。したがって、この【3012】のケースのように、過去に再発が複数回あったということは、薬の量が足りないか(つまり、必要最小限よりさらに少ない)、適切でないと考えるべきです。薬物療法の見直しが必要なケースであると言えます。
(2015.7.5.)