【2961】20 年ひきこもりの弟をどうやって受診につなげるか
Q: 弟は20年ほどひききもりです。弟は現在30代後半です。私は姉です。
家族が病院に相談に行き、話しを聞いていただいた先生からは統合失調症の疑いありと言われています。
受診へのつなげかたについてご指導いただけませんでしょうか。
実は、今から10年以上前、弟が20代の頃、私のみで病院受診したところ弟は初期の統合失調症と診断されました。
その旨、両親に言いましたが両親はそれは絶対ないと拒否、おおごとにするな、勝手に病院受診などするな、という態度でした。躊躇し、ここで診断を活かしきれませんでした。
その後は、病院でなく、私個人で民間を何軒もまわりましたが、ひきこもりは改善されませんでした。
近年弟が自殺未遂をするようになりました。
(その他、被害妄想、人に笑われている、覗かれている、盗聴されている等あります)
民間でなく病院しかないと、最近数件の病院へ行き見解を伺ったところ、診断はまちまちでしたが、統合失調症、および、境界性人格障害の可能性を示唆されました。
病院側は、あとは本人に受診していただく必要があるとのことでした。
そこから統合失調症の本を初めて多量に読み、やはり大変思い当たる症状が多かったです。
境界性人格障害も当てはまる気がしました。どちらにしろ、本人に病識がありません。
遅ればせながら初めて「弟が病気のようだ」と本によってはっきり私自身自覚しました。
両親にも読ませましたら、やっと両親も自覚が芽生えてくれたようでした。
ただ本人を受診させることにまだ躊躇しています。(恨まれると思っているようです)
次に自殺未遂したら、私が、救急車を呼び受診につなげるしかないと思っています。
しかし、自殺未遂を待っていてよいものか、というあせる気持ちもあります。
あせりは禁物ですか? それとも、このあせりは正解でしょうか?
病院の話をすると必ずキチガイ扱いするのかと激怒することが多かった弟です。
(これも病識がないゆえのことだったと今は思っています。)
だから迅速にしたいものの、病識がまだないのでどう受診を勧めるかで迷っています。
本人が自覚しやすいような状況を作ってからでないとと、次の自殺未遂を待つのがよいとお思いになりますか?
待たないとしたら説得ということになるかと思いますが、「気を楽にするために、受診してみようよ」という焦点をずらした説明の説得をことあるごとに根気よくやっていくのがよいものでしょうか?
頭ははっきりし、普段はまともで知的な会話は十分できるので、林先生の本や事例をずばり見せ、
「何度も自殺未遂して、外が怖く家にずっといる、そんな気持ちになっているのを心配している。辛かった様子がこういう事例に似ている。そうだったら、認知の脳の病気かもしれない。あなたは悪くない。全世界どの時代も男女差なく1/100人ととても多い病気だ。誤解されているだけ。受診してみてその病気じゃなければ、今が少しでも楽になる道を医師と一緒に考えてもらおう。でも統合失調症と診断されるなら、脳の病気なんだから、今までの辛い状況や感じ方が病気のせいだったのだと思う。治療して、調子を戻し、元気になってほしい。あなたなりに、幸せになってほしい。」
と言ってしまってよいものでしょうか?
お考えお聞かせ願いたく、何卒宜しくお願い致します。
林: お悩みのご様子、お察し申し上げます。
しかし、自殺未遂を待っていてよいものか、というあせる気持ちもあります。
あせりは禁物ですか? それとも、このあせりは正解でしょうか?
そのあせりは当然です。次の自殺未遂が、未遂に終わるという保証はどこにもありません。自殺未遂を待つのではなく、強制的な手段を用いてでも、入院させてさしあげるのが本人のためです。
とは言え、これまでの経過やご両親の姿勢からみて、それが非常に困難であるのも理解できるところです。
すると次善の策として、自殺未遂などの何らかの大きな問題が発生したときに入院させるという方法が考えられます。
この時、確実に入院させられるように準備することが必要です。
次に自殺未遂したら、私が、救急車を呼び受診につなげるしかないと思っています。
「受診につなげる」という表現で、どこまで具体的にお考えになり、計画されているのか不明ですが、「受診」だけでは不十分です。救急車でたまたま搬送された病院では、自殺未遂の当面の治療だけが行われ、「後日、必ず精神科を受診してください」という実質のないアドバイスをいただくだけに終わることになりかねません。
これを避けるためには、今の時点でご家族が精神科の病院と緊密に相談し、自殺未遂などの出来事があった場合には確実に入院できるよう準備をしておくことが必要です。救急搬送されたときに入院のチャンスを逃したら、もう二度目はないと考えなければなりません。
これに関連して、
やっと両親も自覚が芽生えてくれたようでした。
ただ本人を受診させることにまだ躊躇しています。
ご両親がそのような態度ですと、適切な治療は望めません。このケースは本人の同意なく入院していただかなければ、治療は開始できないと思われますが、その際、ご家族が入院に躊躇されれば、病院は強制的に入院させることはしませんので(確実な自傷他害のおそれがあれば別です)、治療の機会は失われることになります。
なお、
待たないとしたら説得ということになるかと思いますが、「気を楽にするために、受診してみようよ」という焦点をずらした説明の説得をことあるごとに根気よくやっていくのがよいものでしょうか?
その説得を続けることは勧められます。しかしそれによって受診につながることは、ここまで慢性化した状態では、まず期待できないでしょう。説得することの意義は、ご家族がご本人のことを親身になって心配しているという気持ちを伝えるということにとどまります。
頭ははっきりし、普段はまともで知的な会話は十分できるので、林先生の本や事例をずばり見せ、
「何度も自殺未遂して、外が怖く家にずっといる、そんな気持ちになっているのを心配している。辛かった様子がこういう事例に似ている。そうだったら、認知の脳の病気かもしれない。あなたは悪くない。全世界どの時代も男女差なく1/100人ととても多い病気だ。誤解されているだけ。受診してみてその病気じゃなければ、今が少しでも楽になる道を医師と一緒に考えてもらおう。でも統合失調症と診断されるなら、脳の病気なんだから、今までの辛い状況や感じ方が病気のせいだったのだと思う。治療して、調子を戻し、元気になってほしい。あなたなりに、幸せになってほしい。」
と言ってしまってよいものでしょうか?
無駄だと思います。少なくとも実質的な効果は期待できません。それをするならもっと早く(10年以上前に)するべきでした。
以下はこの【2961】の質問者への回答ではありません。読者への説明です。
実は、今から10年以上前、弟が20代の頃、私のみで病院受診したところ弟は初期の統合失調症と診断されました。
その旨、両親に言いましたが両親はそれは絶対ないと拒否、おおごとにするな、勝手に病院受診などするな、という態度でした。
ご家族のこのような態度が、治療の機会を失わせ、統合失調症の方の人生を台無しにしてしまうのはよくあることです。
その後は、病院でなく、私個人で民間を何軒もまわりましたが、ひきこもりは改善されませんでした。
具体的にどのような方策を講じたか不明ですが、統合失調症である以上、薬物療法をしなければ改善は望めません。
(2015.5.5.)