【2808】子どもの頃幻聴などの症状がありましたが、自然に治りました
Q: 私は27歳の女性です。
私には6〜17歳くらいまで精神病とおぼしき症状がありました。
精神科にはかからず自然に治ったのですが、あのときの病気が何だったのか非常に気になっていますので、わかりましたら教えて下さい。
（ちなみに私は現在は精神科に通院しています。23歳のころ強迫性障害と診断されました。薬を飲めば生活に支障はなく、普通に会社員をしています。）
幻聴が聞こえるというのが主な症状で、「自分の首を締めろ」「両親を刺せ」「部屋の中を三週歩け。そうしないとお前を殺す」などという命令が主でした。
私はその声を「神の声」と呼んでいました。その声の主は私の頭の中にイメージとして浮かんでおり（実際に見えるわけではありません）、その顔は私が産まれてすぐ亡くなったという、祖父の遺影にそっくりでした。
その声にはかなりの強制力があり、私は必死の思いで逆らいましたが、そのうち本当に人を傷つけてしまうのではないかと思うと怖くて、身動きがとれないよう自分で自分の手を縛ったこともありました。
グロテスクな表現や暴力的な表現が怖くて、たまたまテレビなどで見てしまうと、自分が触発されて暴走してしまうのではないかと思い、不安におそわれました。
自分のとった行動が、世の中の出来事に影響を与えてしまうのではないかという妄想もありました。
例えば、自分が今手を洗うと、そのせいでどこかで旅客機が墜落するのではないか、などの考えです。そんなはずはないと頭では考えながらも、そういうとき私は手を洗えませんでした。
高校生くらいから、幻聴はなくなりましたが、その代わりに「親を刺す」「自分の目を潰す」などの考えが浮かんできたり、（上手く説明できないのですが）そのような衝動が湧いてくるようになりました。
衝動を抑えきれず、実際に自傷行為を行ったこともあります。
しかしそのころから、症状は半年に一度くらいのペースで、二ヶ月間くらいあらわれるようになり、それ以外のときは普通で、症状に波がありました。（幻聴だったときは波はなく、常に症状がありました。）
17歳の夏、その症状が最もひどく、大変悩まされました。
しかし夏がすぎると症状がなくなりました。
それ以来、現在までその症状は出ていません。
当時私は子供ながらに、自分が他の人と違うということを理解しており、小学生のとき母親に一度、高校生のとき学校の先生に一度話した以外には、誰かにそのことを話したことはほとんどありません。病院にも行ったことはありません。
自然に治ったこの症状はなんだったのでしょうか。
現在のかかりつけの医師に聞いたところ、「脳が子どもから大人へ変化していく過程で、そういう症状がでることはしばしばあります。今はもう治ったなら気にすることはありません」とのことでした。
また「あなたの家系に精神病の方はいますか？」と聞かれ、精神病の者はいないと回答したところ、「それならなおさら安心ですよ」と言って頂けました。
しかしどうも不安ですので、今回林先生におたずねしました。
ご回答頂ければ幸いです。
林: 子どもの頃の症状は、かなり統合失調症の可能性が高く、しかし27歳の現在、そうした症状は事実上ゼロで、到底統合失調症とはいえない。この【2808】の経過は【2072】小中学校時代の私は統合失調症だったのでしょうか。今も独り言だけはあります。
に類似したものです。私のサイトのサイト内検索に「前駆」「偽陽性」を入れて検索していただくと、関連したケースや、このような事象をめぐる問題などを扱ったケースがヒットしますので、それらもご参照ください。統合失調症という事実の第6章 予防 も参考になると思います。
「あなたの家系に精神病の方はいますか？」と聞かれ、
これは、【2007】統合失調症らしい症状が私にはあるのですが、悪化のおそれがないのなら病院には行きたくありません に紹介した、統合失調症の前駆症状の診断基準にある、遺伝的素因についての質問であったと解釈できます。
なお、この【2808】のケース、23歳から現在まで強迫性障害で治療中で、
3歳のころ強迫性障害と診断されました。薬を飲めば生活に支障はなく、
とのことですが、強迫性障害は時に統合失調症との区別が困難な場合があること、強迫性障害の薬は統合失調症の薬と一部共通していることを考えると、実はこの【2808】のケースは統合失調症で、いま飲んでおられる薬で症状が落ち着いているという解釈もできないことはありません。主治医の先生がそう考えておられるかどうかはわかりません。ただ一般的には(だからこのケースに当てはまる可能性が高いと言っているわけではありません)、本人には統合失調症でない病名を告知し、実際には統合失調症の治療を続けているというのはしばしばあることです。
(2013.10.5.)
