【2677】「特に太っていないのに、“自分は太っている”と思い込み、強迫的に痩せる努力をしている状態」が拒食症だとして、「自分の娘が特に太っていないのに、”自分の娘は太っている”と思い込み、強迫的に痩せさせようとしている状態」は何かの病気ですか?
Q: 私は20代の女性です。私の拒食症にまつわる経験についてお話させてください。私は12歳(小学6年生)の時に、ちょっとしたきっかけからダイエットをはじめ、身長154cm体重40kgまで減らしました。体力が落ちて、部活で倒れたこともありましたが、食べ物のことと体重のことと、顔についている肉を落とさなければならないという強迫観念でいっぱいで、太るのが怖くて仕方なく、ダイエットをやめられませんでした。どうやったらダイエットをやめられるか常に悩んではいましたが、両親に言っても、母は頼りない人で何の意見もなく、父は「(この体型が)ちょうどいい!」と断言して全く救いになりませんでした。嘔吐なしの制限型の拒食だったので、精神的にもとてもキツかったです。そして、中3になって更に体調を崩し、気分的にも落ち込むようになり、ダイエットをやめないと学校に通えなくなると感じ、ある日を境にいきなり拒食から過食に転じてしまいました。嘔吐なしの過食です。体重は52kgまで一気に増えました。食べるようになったこともあって、学校と部活はなんとか通えましたが、気分の落ち込みと体のだるさは良くなりませんでした。活発に動けなくなり、ダイエットはもうできないと感じていました。
さて、ここまでは前置きで、ここから本題です。
リバウンドすると、父が大激怒しました。「みーんな細くて可愛いのに、おまえだけ細くもない、可愛くもない、勉強も1番じゃない、才能もない、なーんにもない。物笑いだ。このままじゃ生きていけない。ダイエットしないとどうしようもない。」と説教され、殴られる毎日になりました。父は私の体型に異常にこだわっていましたが、特に強くこだわっていたのが「おなか」でした。体重は知らなかったと思います。父は私が痩せていた頃の体型をすごく気に入っていて、どうしてももう一度痩せさせたかったようです。父の説教は本当に執拗で、ものすごいおなかだ、痩せないとどうしようもない、どんなに勉強しても可愛くないから生きていけない、など悲しくなる言葉をこれでもかこれでもかと浴びせられました。父は怒り狂っていました。父の様子は、何と言ったら傷つくか?何と言ったら太ってることに耐えられなくなってまたダイエットするか?と必死なように見えました。しかし私はダイエットできる状態ではなかったので、どうすることもできず、不可抗力で罵倒され続けるしかありませんでした。父はダイエットしない私を憎くて憎くて仕方ないようで、粗探しをしては執拗に嫌味を言ってくるようになりました。私はそれまでは勉強を全てに優先させていたので偏差値72ありましたが、父の執拗な嫌がらせで勉強が手につかなくなり、偏差値40にまで下がってしまいました。東大に行きたかったのですが諦めざるを得ませんでした。 ですけど、154cm52kgって、病的な肥満ではありませんよね。標準体重だし、その頃、私のことを「太ってる」と言ってくるのは父だけでした。
そこでタイトルの質問なんですが、「特に太っていないのに、“自分は太っている”と思い込み、強迫的に痩せる努力をしている状態」が拒食症だとして、「自分の娘が特に太っていないのに、”自分の娘は太っている”と思い込み、強迫的に痩せさせようとしている状態」は何かの病気ですか?それとも、好みの体型を押し付けるただのワガママなのでしょうか。 私は今も当時の苦しみがトラウマのようになっていて、時々フラッシュバックを起こし、怒りで自傷行為をしてしまいます。
林:
「自分の娘が特に太っていないのに、”自分の娘は太っている”と思い込み、強迫的に痩せさせようとしている状態」
その結果として、娘の体重が病的に減少した場合、これを代理拒食症 anorexia nervosa by proxy と呼ぶ場合があります。これについての説明はかなり特殊な回答になりますので、林の奥に 代理拒食症 として記すことにします。
但しこの【2677】では、娘(つまり質問者本人)は、親の意向に従わず、したがって体重が病的に減少しているわけではないので、代理拒食症にはあたらないということになります。すると、ご質問、すなわち、
「特に太っていないのに、“自分は太っている”と思い込み、強迫的に痩せる努力をしている状態」が拒食症だとして、「自分の娘が特に太っていないのに、”自分の娘は太っている”と思い込み、強迫的に痩せさせようとしている状態」は何かの病気ですか?それとも、好みの体型を押し付けるただのワガママなのでしょうか。
に対する答えは、「そういう病気はない」ということになります。
但し、病気ではない場合、ではそれはワガママかということになると、それは容易に答えることはできません。精神科の病気の多くは、病気と認知される以前は、ワガママとか性格の問題などと考えられていたという歴史を持っているからです。
(2014.5.5.)