【2593】自分がうつ病だと信じて治療を続けている姉、本当は統合失調症だと思うのですが、今の治療でいいのでしょうか
Q: 遠方に住む姉のことでお伺いさせていただきます。 姉は現在45歳、子供もある専業主婦です。実家がすぐ近所にあり、両親と姉の一家は頻繁に行き来をして半分同居のような状態です。34歳の頃から数日間、時々手が震えたりぶつぶつ独り言を言うようになり、ある日から私と私の主人と息子が姉に呪いをかけている、夜中に大きな音をたてて起こされるなとど言うようになりました。(当時は出産のため、私たち家族も実家に同居しておりました。)私の主人に殺される、と怖がるようになり、実際にはいないのにベランダから私たち夫婦が見ているとか、インターホンに姿がうつっている、髪を逆立てて襲ってくるなどと言うようになりました。両親が精神科に連れて行きましたが、2回通っただけで通院を嫌がりそのままになりました。いただいた薬も飲むとだるくなり家事ができないと、いつの間にかやめてしまったようです。その時には、カウンセリングをしたような段階ではっきりと病名の診断は受けていなかったようです。本人に病識はなく、すべて私たち夫婦の呪いによるものなので、私たちが離れれば不安も消えるのだと信じ込んでいました。その後私と主人、息子は遠方に越し、姉も落ち着いた状態に戻ったのですが、数年に一度、両親が私たちを訪ねて留守にする時や私たちが里帰りをすることになる度に、自分の身が危険である、両親が危ないと非難のメールが続き、里帰りしても最初の数日はぎこちなくとも会話ができると思っていると、ある日からこちらを避けたり、怖がったりします。この10年(治療に向かわない期間があまりに長かったと私自身悔いておりますが)、体調のよい時期は家事も育児もすべて普通にこなし、まったく普通のメールを送ってきますが、私の里帰りが近づいたり両親がこちらに来ることを予定すると、私の息子が亡くなったと思い込んでお悔やみのメールを送ってきたり、息子が勝手に家に上がりこんできて困る、今もいるから帰るよう言ってくれとメールで言ってきたりします(実際には息子は行っておりません。)そうして、後から自分が変なことを言ったとかしたということは覚えていないようです。 おそらく、家族以外のまわりの人からは、姉は普通に見えますし、病気とはわからないと思います。 私は姉は統合失調症ではないかと思うのですが、3ヶ月ほど前に頭痛や手足のしびれ、息苦しさが始まり、本人は更年期障害だと言い張って、婦人科で診察をした結果、「うつ病」と診断されました。婦人科のお医者様から心療内科を紹介しましょうと薦められましたが、抵抗がある場合はそのまま婦人科で治療を続けてもよいとのことで、姉は現在、婦人科から処方された「補中益気湯」、「パキシル」、「リーゼ錠」を服用しています。 本人はうつ病だと信じて、ゆっくり治療すると言っておりますし、両親も義理兄も「病院に行ったことでまず第一歩を踏み出せた、これからゆっくり見守りながら」と言っておりますが、私としては、婦人科のお医者様はこれまでの経緯をすべてご存じないだろうということで不安を感じております。 今の処方をしていただいた薬を飲み続けることにも意味があるのでしょうか。一刻も早く主治医の先生にすべてをお伝えして、投薬の変更が必要か、精神科で受診するべきかを判断していただくべきではないでしょうか? まとまりのない長文となり、申し訳ございません。遠方のため(それと姉から敵視される立場にあるため)私の意見はなかなか姉に伝わらず、先生からご覧になられたご意見をお聞かせいただきたく思います。よろしくお願いいたします。
林:
私は姉は統合失調症ではないかと思うのですが、
そうです、お姉様は統合失調症です。
本人は更年期障害だと言い張って、婦人科で診察をした結果、「うつ病」と診断されました。
うつ病と診断されたと「聞いた」、という意味と思われますが、このような場合、医師は、本当は統合失調症と診断していても、うつ病などの病名を告げることはありますので、この医師が本当はどう診断していたか、これだけではわかりません。
婦人科のお医者様から心療内科を紹介しましょうと薦められましたが、抵抗がある場合はそのまま婦人科で治療を続けてもよいとのことで、
統合失調症では、とにかく治療を始め、そして続けることが第一ですので、このような診療の形も理にかなっているといえます。すなわち、(1)統合失調症という病名を受け入れられそうになければ、とりあえずはうつ病という病名を告げておく(これも擬態うつ病の一種ということになります。隠蔽型の擬態うつ病です) (2)精神科や心療内科での治療が受け入れられそうでなければ、とりあえずは内科なり婦人科なりで治療をする という形です。
(但し精神科Q&Aは医療相談ではなく単に事実を回答するものですから、そうした事情は考慮しません。実際の診療と精神科Q&Aは全く異質のものです)
その意味では、
本人はうつ病だと信じて、ゆっくり治療すると言っておりますし、両親も義理兄も「病院に行ったことでまず第一歩を踏み出せた、これからゆっくり見守りながら」と言っております
という考え方も一理あるところです。統合失調症という病名に直面させることで、治療そのものが開始できなければ何もならないからです。
けれどもこの【2593】のケースでは
姉は現在、婦人科から処方された「補中益気湯」、「パキシル」、「リーゼ錠」を服用しています。
とのこと、この処方では統合失調症がよくなることはありません。
すなわち、この処方を見る限りでは、
私としては、婦人科のお医者様はこれまでの経緯をすべてご存じないだろうということで不安を感じております。
という質問者の危惧はもっともであり、この婦人科の医師はお姉様の病気を誤診している可能性が高いといえます。
そうなりますと、
今の処方をしていただいた薬を飲み続けることにも意味があるのでしょうか。
「意味はありません」がシンプルな答えということになります。
しかし、実はこの婦人科の先生は、統合失調症という診断を含め、すべての事情を把握したうえで、あえて最初は抗うつ薬などを処方しているということも、考えられないではありません。(ほとんど考えられないとは思いますが)
一刻も早く主治医の先生にすべてをお伝えして、投薬の変更が必要か、精神科で受診するべきかを判断していただくべきではないでしょうか?
この先生がお姉様のことをどう把握しておられるかがわからない以上、質問者からすべてをお伝えするというのは正しいといえます。そのうえで、最も適切な方針をご相談すべきでしょう。
ただその際に一つだけ注意すべきことは、精神科以外の医師は、「うつ病」であれば何とかご自分で扱えると考えていても、「統合失調症」となると、それだけで完全な拒否反応を示すことがしばしばあるということです。つまりこの【2593】のケースに当てはめると、もしこの婦人科の先生が、お姉様をうつ病と誤診していて、しかしそのように誤診している限りは何とかご自分で対処されようと考えていたところ、統合失調症であるとわかった途端に冷静さを失い、自分ではどうすることもできないから家族で何とか精神科に連れて行ってくれ、の一点張りになる可能性があるということです。
それを「注意すべき」と言われても質問者にはどうすることもできないかもしれませんが、そういう可能性があることを事前に理解しておくことは少なくとも必要でしょう。
(2014.3.5.)