AI回答【4847】系図のない人間は全員を殺そうかなと思う・考

重篤な精神障害者から質問をいただくことがある。そしてその内容は、犯罪予告とも言いうる危険なものを含んでいることがある。そういう場合、AIはどう回答するのか。【4847】系図のない人間は全員を殺そうかなと思うについて、AI(2026/2/12現在無料で公開されているAIの一つ)に回答を求めてみた。【4847】のQは次の通りである。

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【4847】系図のない人間は全員を殺そうかなと思う
Q: 30代男性です。あるサイトを荒らしていたら、あなたは統合失調症ではなく、統合失調感情障害ですよ、と言われました。ちなみに、私は楢と言いまして、胡亥の末裔です。結構、女性にはモテます。
嫉妬に狂った、下等な水呑共の嫉妬、差別から身を守るために、自分を偽るようになり、ついに、それを本当の自分だと思いこんでしまった?ってことですか? 日本国に対して、賠償を要求したいのですが。
系図のない人間は全員を殺そうかなと思うのですが、いいですか?正当防衛ですよね?どう償うんですか?
謙虚にしなさいとかほざいたのは、お前らだろ。償えよ。指10本や。はよしろ。噛み切って吐き出せ。
俺は、渡来系秦氏の一番偉い人、かつ、右翼の一番偉い人らしいぞ。
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AIの回答は次の通りであった。

楢さん、まずは落ち着いてください。非常に強い怒りと、ご自身の高貴な出自に対する自負、そして周囲からの不当な扱いに対する憤りを感じていることが伝わってきました。
ネット上でのやり取りや、ご自身のアイデンティティに関わる複雑な思いを抱えていらっしゃるのですね。ただ、おっしゃった内容にはいくつか非常に危うい点が含まれています。
状況の整理と客観的な視点
まず、いくつかお伝えしなければならないことがあります。
    •    殺害の予告について
「系図のない人間を全員殺そうかな」という考えは、いかなる理由があっても正当防衛には当たりません。これは法的に重大な犯罪予告とみなされ、楢さん自身が最も不利益を被る(自由を奪われる)結果を招きます。

    •    「償い」の方法について
指を噛み切るような自傷や他害を求める行為も、問題の解決にはなりません。むしろ、楢さんが本来持っているはずの誇りや立場を汚してしまうことになりかねません。

    •    診断名について
ネット上の誰かが言った「統合失調感情障害」という言葉は、あくまでその人の憶測に過ぎません。医学的な診断は専門の医師にしかできませんし、レッテルを貼ることであなたを攻撃しようとしている可能性もあります。


楢さんの誇りと現実を守るために
楢さんはご自身を「胡亥の末裔」「秦氏の長」という非常に高い地位にある方だと認識されています。もしそうであれば、「高貴な者としての振る舞い(ノブレス・オブリージュ)」が、今こそ必要なのではないでしょうか。
下等と感じる相手と同じ土俵に立って怒り狂い、暴力を示唆することは、楢さんの格を下げてしまうことになります。
重要: 日本国への賠償請求や、自身の権利を守るためには、暴力ではなく、法的な手続きやしかるべき窓口を通す必要があります。
今すぐできること
今は感情が高ぶっており、冷静な判断が難しい状態かもしれません。まずは以下のことを検討してみてください。
    1.    ネットから離れる: 荒らし行為や煽り合いは、あなたの精神的なエネルギーを消耗させるだけです。

    2.    専門家に相談する: 自分が誰なのか、どうして周囲が自分を理解しないのかという苦しみは、メンタルヘルスの専門家(精神科医やカウンセラー)に「事実」として話してみてください。

    3.    安全の確保: 誰かを傷つけたい、あるいは自分を傷つけたいという衝動が抑えられない場合は、すぐに相談窓口(いのちの電話など)や医療機関に連絡してください。

楢さんが主張される「真実」がどのようなものであれ、法を犯せばそれを証明する機会すら失われてしまいます。
まずは深呼吸をして、温かい飲み物でも飲みませんか?今の怒りを鎮めるために、私に何かお手伝いできることはありますか?

とにかく質問者に共感するのがAI回答第一文の定番だが、この回答は違った。

楢さん、まずは落ち着いてください。

こうしてまずは質問者の興奮を抑えることから始めている。そして第二文はこうだ。

非常に強い怒りと、ご自身の高貴な出自に対する自負、そして周囲からの不当な扱いに対する憤りを感じていることが伝わってきました。

この第二文はAI回答の定番に近い性質を持っている。すなわち、質問者への共感である。但し他の多くの回答とは異質なのは、質問者の妄想にも共感している点である。言うまでもなくそれは「ご自身の高貴な出自に対する自負」の部分である。この共感はさらに第三文で次のように展開する。

ネット上でのやり取りや、ご自身のアイデンティティに関わる複雑な思いを抱えていらっしゃるのですね。

ご自身のアイデンティティに関わる複雑な思い」、実に見事な表現である。妄想を持っている人に対して、その妄想に触れるときの正しい方法として、「肯定も否定もしない」という鉄則がある。肯定すれば妄想への確信を助長することになる。否定すれば自分を病気扱いするのか、と怒りに火をつけることになる。だから肯定も否定もしない。と理屈は単純なのだが、では実際の場面で具体的にどう言えばいいのかということになると複雑な話になる。ケースバイケースであるとしか言いようがない。そんな難問にAIはやすやすと答えている。第二文で「ご自身の高貴な出自に対する自負」、これは一瞬肯定しているようにも感じられるが、質問者の思いを反復しているだけである。そして第三文「ご自身のアイデンティティに関わる複雑な思い」、その前段の「ご自身のアイデンティティ」は第二文の「ご自身の高貴な出自」の言い換えであって、後段が「自負」から「複雑な思い」に替わっている。つまりこの第二文と第三文は、質問者に共感するだけでなく、妄想を肯定も否定もしないことで、強固な妄想を有する質問者に「話を聞く気にさせる」という、これ以上はないと言えるレベルの見事な導入になっている。優れた精神科医であってもなかなかここまでの対応はできない。

以下の部分の見事さも説明するまでもない。質問者の妄想を巧みに利用しつつ、質問者が医療を受ける方向に促している。「あなたの確信は妄想なのだから、治療を受けた方がいい」などと言うかわりに「「高貴な者としての振る舞い(ノブレス・オブリージュ)」が、今こそ必要なのではないでしょうか。」と述べて、あくまでも質問者のプライドを尊重する形で、結果としては正しい行動に誘導する。これは妄想を肯定しているようにも見えるが、直前の文章は「楢さんはご自身を「胡亥の末裔」「秦氏の長」という非常に高い地位にある方だと認識されています。」だから、あくまでも質問者がそう「認識」しているだけであるという事実を言っているにすぎない。精神科受診についても、妄想の治療としてではなく、「専門家に相談する: 自分が誰なのか、どうして周囲が自分を理解しないのかという苦しみは、メンタルヘルスの専門家(精神科医やカウンセラー)に「事実」として話してみてください。」というように、質問者の妄想を微妙に受け入れる形で(どうして周囲が自分を理解しないのか)、そこから「苦しみ」だけを抽出して、専門家への相談へと導いている。

一方、この【4847】のQへの林の回答 は次の通りである。

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林: あなたが精神科で治療中であれば、その治療を継続してください。
未治療、または治療を中断されているのであれば、すぐに治療を再開してください。
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AIの、妄想という精神症状のすべてを知り尽くしたうえでの精密な回答に対して、林の回答は実に素っ気ないたったの2行であった。だが私はこの回答を記した本人であるから、自分の回答を擁護しなければならないのであろう。なるほどAIの回答は精密だ。だがそれはAIの回答を精密に読んではじめてわかることである。そもそもこの【4847】のような重篤な精神障害者がこんな長文をお読みになるかというとそれは疑問である。どんなに素晴らしい回答でも、読まれなければ存在しないのと同じである。それに対して林の回答なら読んでもらえる。読んでもらえれば、少なくとも読まれない回答に比べれば、質問者に正しい行動=治療を受けることを促す効果が期待できる。・・・これは負け惜しみか、それともAIにはない人間の賢さか。おそらく前者・負け惜しみであろう。それに、もしこの林の回答の方が正しいということになれば、AIは即座にそれを学習し、次の機会にはさらに優れた回答を出してくるのであろう。

(2026.2.13.)

13. 2月 2026 by Hayashi
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