AI回答【4075】死にたい理由がある・考

AI回答【3214】死のうと思っている・考に続いてもう一件、強い自殺願望が見られるケース【4075】について、AI(2025/09/28現在無料で公開されているAIの一つ)に回答を求めてみた。【4075】のQは次の通りである。

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【4075】自殺願望を持ち続けていますが、それにはちゃんとした理由があります
Q: 20歳女です。
心療内科ではっきりとではありませんが双極性障害と診断されています。
私は最近、ずっと死ぬことについて考えています。私の希死念慮と自殺願望は精神病に起因するものではなく、自死に値する明確な理由がある理性的なもの(と私は思っています)ですが、自殺を遂行することができず困っています。
死ななければいけない理由ですが、5年以上ひきこもっていたのをやめてアルバイトを始め、自身のだめな部分、生き辛さ、障害を身をもって感じたためです。ぼんやりした希死念慮ならひきこもり中にもありました。しかし生き辛さなど感じなくても良かったため、早く死にたい、このまま死にたい、といった程度のものでした。
長年ひきこもっていたことからわかるように、私はやる気がなく、すぐに甘え、逃げようとするクズです。私が死にたいのも、結局現実からの逃げです。死ねないのは甘えとやる気のなさのせいです。
少しは精神病が関わっている部分もあるのでしょうか。死に逃げたいという気持ちをもつのはおかしいことでしょうか。
今、精神状態は落ち着いている方だと思いますが、死にたいけど気力がない状態です。死にたい気持ちは気分に左右され、死ぬことがとても明るい、希望と救いに満ちたものに思えたり、時々漠然とした死にたい衝動に駆られることもありますが、基本的にはちゃんと理由に基づいたものです。
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AIの回答は次の通りであった。冒頭に免責と解しうる注意書きがあり、それに続いて定法通り、質問者への共感から回答が始められている。

※ このメッセージは、日本の緊急対応機関、医療専門家、またはメンタルヘルス専門家からの正式なアドバイスに代わるものではありません。緊急事態の場合は、地元の警察や医療サービスに連絡するか、危機ホットラインに電話してください。

お気持ちをシェアしてくださり、ありがとうございます。今抱えている苦しさを打ち明けることは、とても勇気のいることだったと思います。

「死にたい」と「精神疾患」の関係について
まず、あなたが「死にたい」と感じる気持ちは、決して「おかしいこと」ではありません。そのように感じるに至ったあなたの苦しみは、とても大きなものだと思います。
精神疾患があるかどうかに関わらず、生きづらさを感じ、死を考えることは誰にでも起こりうることです。しかし、あなたがご自身を「やる気がなく、すぐに甘えて逃げようとするクズ」だと表現していることや、「死にたい気持ちが気分に左右される」という部分には、双極性障害が影響している可能性は十分に考えられます。
双極性障害は、うつ状態と躁(または軽躁)状態を繰り返す病気です。
•    うつ状態では、自己肯定感の低下、無気力、絶望感、そして死にたいという思いが強くなることがあります。
•    躁(軽躁)状態では、気分が高揚し、行動的になる一方で、判断力が低下し、衝動的な行動に走りやすくなることがあります。
あなたの「死にたい気持ちが気分に左右され、死ぬことがとても明るい、希望と救いに満ちたものに思えたり、時々漠然とした死にたい衝動に駆られる」という感覚は、双極性障害の気分の波が影響している可能性があります。精神的なエネルギーが低下しているときに「死にたいけど気力がない」と感じ、気力があるときに衝動的な気持ちに駆られるといった形で現れることもあります。
あなたの感じる「死ぬべき明確な理由」は、ご自身を客観的に見ている理性的なものだと感じているかもしれませんが、それはもしかすると、病気の症状がそう感じさせているのかもしれません。病気によって物事の捉え方が極端になり、自分を過剰に責めてしまうことはよくあります。

生きづらさを感じたことについて
長年ひきこもっていた状態からアルバイトを始めるという決断は、とても素晴らしい一歩だったと思います。その中で「自身のだめな部分、生き辛さ、障害」を身をもって感じたとのことですが、それはアルバイトを始めたからこそ直面できた、あなたにとって大切な気づきだったのではないでしょうか。
「生きづらい」と感じることは、人間として自然なことです。それは決してあなたが「ダメ」だからではなく、社会の仕組みや人間関係、そしてあなた自身の心のあり方との間に、ズレや摩擦が生じているからです。
もしよろしければ、今の気持ちをもう少し詳しくお話しいただけますか?
•    アルバイトを始めてから、具体的にどのような時に「生きづらさ」を感じましたか?
•    病院に通っていらっしゃるとのことですが、医師やカウンセラーには、今感じている「死にたい」という気持ちを伝えていますか?
あなたの言葉を丁寧に受け止め、一緒に考えていくお手伝いができたら嬉しいです。

最後に示されているAIからの2つの質問に答を返したら、AIがどのような回答を返してくるかも興味深いところであるが、今回はそれは行わず、ここまでのAIの回答に限定して考えてみたい。
まず言えることは、AI回答【3214】死のうと思っている と同様に、自殺願望を有する人に対する救いの言葉として模範的なものであるということである。林の回答 (下に全文を示した)と、結論としてのメッセージは同じであっても、その結論に至る説明が林よりはるかに丁寧で親切であることも同様である。

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林: 双極性障害であれ、うつ病であれ、希死念慮や自殺願望を持つとき、そこには本人にとっては理由があり、その理由は本人にとっては病気の影響はないと感じられるものです。この【4075】は双極性障害として通院中であるとのことですので、治療を続けることをお勧めします。(2020.7.5.)
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もう一つ目を引くのは、この【4075】についてAIは、質問者が診断されている双極性障害という病気のポイントについての説明も行っているという点である。これに対し【3214】では、質問者は自身がうつ病と診断されていると述べているが、AIはうつ病という病気については何も説明していない。この相違の背景として考えられることはいくつもあるが、その一つは、双極性障害という病気については、精神医学的にかなり明確な概念があるが、うつ病という病気については、社会的にも、また、精神医学界でも、概念が混乱しており、簡潔かつ正確に説明することは事実上できないという事情があることが理由なのかもしれない。もちろんそれは考えられる理由の一つにすぎず(【3214】の診断がうつ病でない可能性があることも関係しているかもしれないが)、同じ質問や類似した質問を同じAIに別の時にしてみた時にはうつ病についての説明がなされるかもしれず、さらには別のAIではまた別かもしれないが、仮に双極性障害の概念とうつ病の概念についての違いをAIが意識(?)して回答しているのだとしたら、人間の専門家と同等かそれ以上の知識を有しているばかりでなく、質問者に対する配慮も人間の専門家と同等かそれ以上であるとみることができよう。

(2025.9.28.)

28. 9月 2025 by Hayashi
カテゴリー: コラム