【4923】姉が自殺してしまいました。私は姉の SOS を見落としたのでしょうか

Q: 私は20代女性です。
1年前、当時29歳の姉が自殺してしまいました。本当に突然のことで、両親や姉の交際相手も非常に驚いていました。前兆があったようには思えず、なぜ、という思いでした。
最近ようやく気持ちが落ち着き、姉のパソコンやスマホを見せてもらったのですが、どうやら職場での噂話や、SNS上の陰口を苦にしてのことのようだと分かりました。
履歴などを確認したところ、噂や陰口はどれも本当に呆れるような、低俗な内容でした。パソコンにはSNSの投稿を写した数百枚のスクリーンショットが残されていました。姉は見なければいい書き込みをわざわざ見て、幼稚な陰口を投稿したほんの2、3人のことを異常に気にして、みすみす傷つきに行っていたようにすら見える状態でした。姉は昔からくよくよ悩みやすい性格だったのですが、これを見て初めて、姉は心を病んでいたのではないかと思いました。

姉の遺書は2通ありました。
1通目には家族や交際相手、勤め先の方々、飼っていたウサギへの謝罪とお礼が綴られていました。
2通目には「楽しい」とだけ書かれていました。困惑したのですが、どうやら退職した元部下がSNSに投稿した「自分で自分の首を絞めて楽しい?」という言葉への当てつけらしいのです。姉は首を吊って亡くなりました。

姉と私は就職を機に実家を出て、お互い離れて暮らしていました。姉は新卒で入った会社で、役職にも就いて忙しそうにしていました。
亡くなる1年ほど前に、仕事のことを話しました。
「同部署の先輩より先に昇進して気まずい(笑)。その人と仲のいい人が社内に変な噂を流しているようで、時々嫌になる」 この変な噂というのは、姉が他の社員のミスや不祥事をでっちあげて、自分の評価を相対的に上げている、だから早く昇進した、というものだったと思われます。馬鹿げた話です。

「会社の飲み会で先輩たちが、あいつ(元部下)のアカウント知ってる?最近お前ボロクソ言われてるぞと教えてくれて、どれどれと見たら本当にボロクソ書かれていて笑った。帰ってきてから泣いた(笑)。不満があるなら直接言ってくれればいいのに。仲間内だけでなく、社内の結構な人数が投稿を見ていることに気づいていないようだけど、社員が見れば一発で私だと分かる内容で、勘弁してほしい。言葉は過激だけど、固有名詞を出さない書き方だから訴えることもできない」
私は実害がないのなら、そんなの言わせておけばいい、見ないようにしたほうがいいと言いました。姉は気にしやすい性格だったので心配でした。
姉は「でも、今までまじめに頑張ってきたおかげで、味方してくれる人が周りにいっぱいいる。根も葉もない噂なんだから堂々としているようにする。交際相手にも同じことを言われた。気にするな、そんなのわざわざ見て落ち込むなとちょっと叱られた」と笑っていました。

それから1年ほどは特に落ち込む様子もなく、プライベートでも仕事でも変わったところはなかったようです。一緒にスポーツ観戦や旅行に行きましたが、明るく元気そうに見えました。
噂話や陰口のことは話さなくなっていました。しかし態度や言動には表さないものの、この間も一人で思い詰め、大量のスクリーンショットを残したり、部下が退職した後もSNSをチェックし続けたり、アカウント同士の繋がりから人間関係をあぶり出そうとしたり、異常に思えるくらい執着していたようです。

姉は昔から他人にどう思われるかを気にする性格で、くよくよ悩み続けるところがありました。学校では授業中に間違いを指摘されて笑われたり、部活の試合でミスをしたりすると過剰なほど落ち込み、家に帰ると泣いていました。大学へ進学する時、今までは制服でよかったが今後は私服だからと、服や化粧品を買い込み、アルバイトの給料のほとんどを使っていて、そこまでしなくてもと感じるほどでした。大学の構内で服装を笑われた、間違いなく私のことを指していたとしばらく落ち込み、たくさんのファッション誌を取り寄せていたこともありました。
飲食店でアルバイトをしており、働き始めた頃はかなり不安定な様子でした。怒鳴ったり嫌味を言ったりする客ばかりではないと思いますが、1人でもそういう人に当たると疲れ切った様子で帰宅し、自室にこもり泣いていました。

こういったことはありましたが、学校にも通えていて、部活も、飲食店のアルバイトも続けていました。くよくよしがちな性格ではあるものの、そのせいで日常生活に支障をきたすほどではなかったと思います。両親が、姉は「気にしい」だが泣いてまた出かけていく。泣くことが姉なりの発散方法なのだろうと言っていたのを覚えています。しかしその「気にしい」が最悪の形になってしまいました。ほんの数人のくだらない陰口に悩み続け、ある日突然自室で首を吊りました。正直、なぜそんなことで、たったそれだけのことでと思ってしまいます。

姉の「気にしい」は病的なものだったのでしょうか。性格だからと考えずに医療につなげていれば結果は変わったでしょうか。第3者の目から見て、私は姉のSOSを見落としていたでしょうか。今さら何もかも遅いのは分かっていますが、ご意見を頂けますとありがたいです。

 

林: 大変なご悲嘆の中、ご丁寧にメールをお送りいただきありがとうございました。内容を拝見いたしますと、お姉さまが質問者に、職場のこと、SNSでの中傷のことをお話されたのは自殺の約1年前で、その後はお元気にされていたように見えたことが読み取れます。それでも結果から振り返ってみれば、お姉さまの元々の性格傾向から考えて、職場でのこと、SNSでの中傷のことは、お姉さまにとっては普通に考える以上に苦しかった可能性に思い当たり、現に自殺されてしまったことからは、単なる可能性ではなく事実そうであったということになると思われます。けれどもそれは結果から振り返ってみればそうだということであって、リアルタイムでそれを認識することは、特に離れて暮らしておられたという状況では、ほとんど不可能であったと思います。

姉の「気にしい」は病的なものだったのでしょうか。

結果からみればそうだったと言えるでしょう。

性格だからと考えずに医療につなげていれば結果は変わったでしょうか。

変わった可能性はあると思います。あくまで可能性ですが。

第3者の目から見て、私は姉のSOSを見落としていたでしょうか。

見落としていたとは言えないと思います。

お姉さまのご冥福をお祈り申し上げます。

(2025.2.5.)

05. 2月 2025 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 自殺