【4900】薬を自己判断でやめてから約5年後、自分のことを噂されているような気がし始め、まもなく医療保護入院になりました(【0657】の20年後)

Q:  林先生大変お久しぶりです。当サイトで、20年前に 【0657】統合失調症(精神分裂病)で入院治療を受け症状はなくなりました。でも私は本当に統合失調症なのでしょうか。(2004.8.5.) をご質問させて頂いた、現在50代男性です。
私は20代の頃統合失調症を発症し、退院後は日々の暮らしを平穏に過ごしていました。それからの20年のご報告と質問です。

その当時、20代の自分は、ストレスの掛かる無理をした生活送っていたので、たまたま精神に不調をきたし、一時的におかしくなっただけだと思い、自分は統合失調症ではない、ただ体と心に疲労が蓄積し調子が悪くなっただけだと考え(その証拠に、退院後当時の薬も予防的な量)、自分が統合失調症ではないのではないかと疑問を抱いたので、このQ&Aでご質問させて頂きました それが【0657】./psyqa0657.htmlでした。

30代は経過が良好で、実家に住みながら普通にアルバイトをしながら過ごし、ジムなどに通っていました、ダイエットも成功し25キロぐらい痩せれました。
通院も月に一回から六週間に一回程度で、処方はリスパダール1mgでした。友人とも会って一緒に遊んだり、電話で長く話したりもしました。また家族とも旅行に行ったり、ほとんど健康な人と同じ暮らしを送っていました。

そして、ほとんど治ったようなので自分の希望で実家を離れ一人暮らしをを始めました。一人暮らしをしてからも五年ぐらい経ってからも、健康な人となんら変わらない生活を送っていました。
さらに、主治医からも完全寛解していると言われ、凄くうれしくなり、もう自分は健康な人と同じなんだと思い、その時は病院に入院したことも完全に過去の話になり、家族も普通の人と全く変わらないと喜んでくれました。

それぐらいの時期から、病院に通院する際に、主治医に薬を飲むのをやめたいと言うようになりました。しかし、主治医はこの病気は寛解しても再発のリスクが高いので、予防的に飲んでいた方が良いと言い、断薬は認めてもらえませんでした。

そして、自分はついに、20代の頃は確かに統合失調症に罹患したけど、若かったし、精神的に負荷のかかるストレスで一時的に発症しただけだ、自分は軽症なんだ、もう大丈夫と思い、ついに自己判断で通院は継続しながら、断薬しました。薬は飲んでるフリをして捨ててました。
30代の半ばで薬を飲むのをやめて(自己判断、主治医には内緒)、五年経過しても、なんともなく、凄く嬉しかったです。自分はもう精神病ではないんだ、 正直精神病というコンプレックスもあり、それからも解放されました。ただ家族や主治医には、薬は飲んでいないことを隠していました。

さらに、それから五年ぐらい経過し、四十代前半になった時ぐらいから、自分の住んでいる賃貸マンションで、他の住人が自分の噂話をしているような気がしてきました。ただ、集合マンションだとそういうことはあることなので、住人による世間話や噂話など、それに八年ぐらい住んでるので、顔見知りの住人も増えてきたので、気分転換で新しい部屋に引っ越すことにしました。

引っ越しして、別の土地の新しい部屋で新生活が始まると、最初は良かったのですが、次第にそこでも他の入居所が自分のことを色々知っている、マンションの近所の人もなんとなく自分のことを知っているのではないかと思うようになりました。そのうち、自分のことを知っている人が多いのは、ネットに自分のことが書かれているからだと思い、自分の書き込みを探したりもしました。

次第に、少し辛くなりはじめ、もしかしたら病気が再発しかけてるかもしれないと考え、実家の両親に相談しました、その時両親から「薬はちゃんとのんでるのか?」と聞かれ、苦しかったので、正直に飲んでないと答えました。
すると、次回外来の際、両親も同行し主治医に経過を正直に伝えました。主治医からは、薬を飲まないと症状が出ると言われ、また服薬を再開しました。
薬を飲むようになったのですが、自分でも、20代の発病時のように被害的な妄想がでるようになり、またそれを聞いた両親が、外来に同行し、少しゆっくり療養するために、入院することになりました(医療保護入院です)。
入院すると、きちんと服薬し、病院の環境が落ち着くので、症状も収まり、任意入院に切り替わり、自由に外出することもできました。ただ退院して、また一人暮らしすると同じことを繰り返す可能性があるということで、グループホームに入居することになり、探すために半年ぐらい入院しました。
退院後はグループホームに入居し、少ししてから作業所に通うようになりました、グループホームの世話人さんも病気のことを理解してくれているので非常に過ごしやすく、また作業所も楽しく通っています、作業所の施設長からも、症状は寛解していて、見た目には普通の人と変わらないと言われてます。

自分は、現在五十代になり、もうこれからは服薬しながら、今の生活に満しているので、作業所にある程度通えるようになったら、障碍者枠などで働き たいと考えています。

以上が、前回ご質問させていただいてからの(2004.8.5)【0657】の長期経過となります。

今回のご質問
(1) 私が薬を飲むのをやめて、噂話などが気になったのは、再発なのでしょか?
(2) もうこれから、薬を予防的にも飲んでいこうと思います、そうすれば再発のリスクは減らせるのでしょうか?

お願いいたします。自分はこの20年、あまり病気だと思わず、ある時からも、このQ&Aのサイトも閲覧しなくなっていました。それぐらい自分では調子は良かったです。

 

林: その後の経過、しかも20年という長期にわたる経過をご報告いただきありがとうございました。この【4900】でご報告いただいた経過は、次のように要約できます。

・20代で統合失調症発症。治療を受けて症状は皆無といっていいレベルまで消失
・その後もずっと症状なし。通院と服薬(リスパダール1日1mg)は継続。
・30代後半に自己判断で服薬中止
・40代前半に、噂されているなどの感覚(症状)が出てくる。
・まもなくその症状が悪化して精神科に医療保護入院
・治療を受けて症状が消失し、現在(50代)に至る。服薬は継続中。

以上の経過は、統合失調症として、ひとつの非常に典型的なものです。
すなわち、薬物療法で症状が消失し、服薬を続けている間は症状が消失した状態(完全寛解)が維持され、服薬を中断してまもなく再発、再び治療を受けて寛解 というもので、統合失調症における服薬継続の大切さを雄弁に物語る実例であると言えます。
主治医の先生の、
主治医はこの病気は寛解しても再発のリスクが高いので、予防的に飲んでいた方が良いと言い、断薬は認めてもらえませんでした。
というお言葉の通りです。
そしてそれに対してご本人が

自分はついに、20代の頃は確かに統合失調症に罹患したけど、若かったし、精神的に負荷のかかるストレスで一時的に発症しただけだ、自分は軽症なんだ、もう大丈夫と思い、ついに自己判断で通院は継続しながら、断薬しました。薬は飲んでるフリをして捨ててました。

というように考えて密かに服薬を中断し再発するという【4900】の経過は、実に典型的なものであると言えます。こういうパターンで再発する統合失調症の方は非常に多くいらっしゃいます。
その意味でも今回ご報告いただいた20年の経過は、多くの読者の方々にとってとても貴重で有意義なものであると思います。ご報告いただきましたことにあらためて感謝いたします。

最後にご質問にお答えします。すでにここまでの中にお答えが入っていると思いますので、ごく簡潔にまとめます。

(1) 私が薬を飲むのをやめて、噂話などが気になったのは、再発なのでしょうか?

その通りです。

 (2) もうこれから、薬を予防的にも飲んでいこうと思います、そうすれば再発のリスクは減らせるのでしょうか?

もちろん減らせます。この【4900】のケースでは、服薬を続ければ再発のリスクはほぼゼロにできると思います。

(2024.12.5.)

05. 12月 2024 by Hayashi
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