【4856】他人の感覚を感じることがあります
Q: 20代男性です。
ここ数年、ときどき起こるのですが他人の感覚を自分の感覚として感じてしまうことがあります。夜にスマホをいじってるときにふと空に輝く星のイメージが出てきてそれが自分の感覚としてリンクして感じることが何度かありました。他にも「この世界は誰かの悲鳴で出来てるのではないか」と思ったときになんとなくその悲鳴みたいなのを感じることができました。幻聴や幻覚とかではなく、そんなしっかりしたものではないのですが自分のものとして感じることがあります。あんまりこうなると出るみたいなのはないのですが落ち込むときになりやすいかもしれません。ネットで検索してみたら離人症が出てきたのですが、感覚が切り離されるみたいに書いてあって、なんだか自分の状態とは違うような気がします。こんな感じの離人症もあるのでしょうか?
林: 離人は、幅広く、また、曖昧な概念で、そして何より重要なことは、「離人症」という独立した診断名があるとはあるのですが、特に診断名がつかない正常範囲の体験として現れることもあれば、他の病気の症状として現れることもあるということです。つまり、「離人」という体験があったというだけでは、何も言うことができないということです。
その観点からこの【4856】の内容に目を向けますと、
他人の感覚を自分の感覚として感じてしまうことがあります。夜にスマホをいじってるときにふと空に輝く星のイメージが出てきてそれが自分の感覚としてリンクして感じることが何度かありました。他にも「この世界は誰かの悲鳴で出来てるのではないか」と思ったときになんとなくその悲鳴みたいなのを感じることができました。
これらは、自分と自分以外(特に他者)との境界が不鮮明になっているという体験で、統合失調症の自我障害と類似の色彩がある体験だと言えます。
幻聴や幻覚とかではなく、そんなしっかりしたものではないのですが自分のものとして感じることがあります。
むしろそれは、統合失調症の症状の特徴、特に前駆期や初期の統合失調症で見られやすい特徴です。そこから発展して幻聴になるというのが、統合失調症の症状成立の一つの典型的な過程です。
但しこれだけでは統合失調症の疑いありとまでは言えません。【4856】に書かれている体験が、どのくらいの頻度であるか、確信度はどのくらいか、日常生活への影響はどうか、他に症状はないのか、そうしたことを総合してはじめて、統合失調症の疑いの有無と程度が判断されることになります。
(2024.7.5.)