【4819】一過性の幻聴のようなものはありうるのでしょうか

Q: 30代男です。いつも興味深く拝見させてもらっています。
私はこれまで精神疾患になったことも精神科を受診したこともないのですが、今思いかえすと「あれはもしかして統合失調症の前駆症状だったのでは?」ということがあり、気になっています。調べてもわからないので林先生の意見を聞きたいです。以下に記述します。
症状は「母と姉の話し声が聞こえる」というものです。時期は高校卒業間近でしたので、かれこれ15年ほど前のことになります。聞こえるのは決まって夜ベッドに入って少し経った時で、母と姉の話し声であるのですが、話している具体的な内容まではわかりませんでした。ヒソヒソ話の音量を少し上げた程度という感じです。頻度は毎日ではなく週に2~3回でした。同じようなことが20歳前後までありましたが、高校卒業間近の時期がほとんどで、その後は年に数回だったと思います。当時は「あーなんで寝るときにわざわざ大声で話すんだよ!うるさいなぁ」くらいにしか思っておらず、毎日聞こえるわけでもなかったため、母や姉に「うるさいからやめて」と言ったり「何を話してたの?」 と聞いてみたこともありません。
何の疑いももたず、ただ母と姉が夜喋ってるときうるさかったよなぁと思っていただけなのですが、よくよく考えたらドアも閉めてて自分の部屋から母や姉の部屋までは距離があったので、仮に話していてもよほどの音量でなければ聞こえるはずがありません。また、自分が寝るタイミングに合わせて母と姉がわざわざ聞こえるように話すということも通常は考えられません。
その時期を思い返しても精神的にとても辛かったとかはありません。大学受験が終わり、家を引っ越す(引っ越しといっても遠方でなくとなりの町への引っ越し)タイミングであったのですが、家も新しくなるし新たに大学生活が始まるのでどちらかというとウキウキしていた感じです。
冒頭にも書きましたが、精神疾患になったことも受診したこともありません。また、恐らく22歳以後は話し声が聞こえることもなく現在に至っております。
こういった一過性の幻聴のようなものがありうるのでしょうか。ご回答頂ければ幸いです。

林: ご質問のうち、

一過性の幻聴のようなものがありうるのでしょうか

については、このご質問を文字通りに受け取ってお答えするとすれば、イエスです。
「幻聴」は主観的体験ですから、本人が体験していれば、他の誰がなんと言おうと、それは「あった」のであって、誰も否定することはできません。
ただこのとき、本人の記憶違いではないか、つまり、体験したと思い込んでいるだけで実際は体験していなかったのではないか、という疑問はありえますが、これについては検証する方法がありません。

しかしご質問の主旨はそういうことではなく、このような一過性の幻聴が統合失調症の前駆症状と考えられるか否か ということであろうかと思います。それに対する回答は、
「抽象的な可能性としてはイエス、このケースについて具体的に答えるとすればノー」ということになります。
「一過性の幻聴(などの精神病症状。または、幻聴「らしき」体験)は統合失調症の前駆症状としてありうる」のは事実ですから、抽象的にはイエスです。
しかし具体的にこの【4819】のケースを見ますと、この一過性の幻聴以外には前駆症状と思われる症状が一切ないこと(ただしメールはご本人からの報告のみですから、厳密には他の症状の有無は不明ですが)、この一過性の幻聴体験は統合失調症の幻聴との類似度が低いこと、そして、入眠時幻覚の性質もありそうなことが、「このケースについて具体的に答えるとすればノー」という回答の理由です。

(2024.4.5.)

05. 4月 2024 by Hayashi
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