【2516】 嘘の多い彼女は本当にうつ病でしょうか

Q: 30代男性です。私の友人に今30歳の女性がいます。彼女は現在精神科にうつ病で通ってはいるものの、医者や家族だけでなく、私に深い相談をしてきます。現在、かなり具合が悪いのか、ストレスを感じると起立生貧血のようにいきなりバタッと倒れます。痙攣も起こすみたいです。今、循環器科で24時間の血圧を測ったりしています。因みに、うつ病が原因でその様なことがあるのでしょうか。
あと問題なのは彼女が本当にうつ病か…という疑念です。きっかけは彼女の嘘でした。相談にのっていると、明らかに筋の通らない話がでてきます。彼女は以前付き合っていた男性と関係を保つために、どうやらしたく無い性行為をずっと我慢していた様なのです。最初も付き合っているとはいえ、レイプだったようです(相手の男に確認済み) 彼女は今でも前の男性とのそういう関係や、された事を少しでも話すと涙が溢れてきて、感情が爆発し、過呼吸に陥ってしまうほどです。様々な事を話しても統計的に性に関する話、特に前の男性との事がダメです。彼女の記憶を辿っていくと、男性に性行為を強要され、その後もガマンしていたという数ヶ月めから明らかなに記憶の欠如がみうけられます。同棲していたのですが、何をしていたか、何処にいったかなど殆ど思い出す事が出来ません。ただ覚えている事もありますし、私と話して思い出せた事もあります。しかし、あまりに記憶が無かったり、彼女自身が確信をもってしていないと思っていたことが、相手の男に要求されると性行為として応じていたという事実が明らかになったため、自身がより嫌いになり、信じられなくなったようです。 よって現在、服薬による自殺行為を繰り返しています。しかし、いささか疑念があります。わたしは彼女に「今の薬はいくら飲んでも死なないから無駄だよ」と以前教えておきました。もちろんそういう事をさせないためです。しかし、それを理解しているにも関わらず、何度も薬を飲み「もう疲れました。さようなら」の様なことを言うわけです。彼女が辛いのは事実だと思いますし、死にたいと思う感情がわくのも理解出来ますが、これはいわゆる「心配して欲しい。かまって欲しい」という深層心理による物なのでしょうか。つまり、恣意的に行なっている可能性です。 そう思うのは、先に書いたように彼女には間違いなく過去の記憶一年分以上が殆どありません。彼女がその事実を知った時のショック度合いから間違いはなさそうです。しかし、それと同時に虚言癖とでも言うべきか、意識的に嘘をつくことがかれこれ30回はあるかと思います。もしかするとその中にも本当に最初は気づかなくて、途中で気づき、言いづらかったのもあるかもしれませんが、一年以上何度も確認し続けても嘘をつき続けたものもあります。彼女自身、嘘をつくこと、ついてしまったことを非常に後悔し、もうしないと約束するのですがまた繰り返すという状態です。よくよく考えてみると、自分はこういうタイプの人間だ。だからこれはしていないに決まっている。と決め込んで嘘もしくは勘違いをしているようにも捉えられますが。彼女は物事を思考する事が異常に不得手になっています。 男性と別れたあと、自分から別れを切り出しさったのにも関わらず、その後何回も映画を見にいったり、家にいって料理を作ったりとしていました。本人は全く覚えいませんが、男から証拠の写真を回収したので間違いはありません。それも彼女にはとてもショックなようです。ただし感情が爆発し、仕事もいけなくなり病院へいったばかりだったので、服薬の副作用による行為なのかなという気もしますが如何でしようか。 これらはうつ病では無いと思うのですが、如何でしょうか。

 

林: この女性はうつ病ではなく、解離性障害です。

ストレスを感じると起立生貧血のようにいきなりバタッと倒れます。痙攣も起こすみたいです。

これは、伝統的な精神医学では、ヒステリー発作と呼ばれていた症状です。現代では転換症状(「てんかん」と読みますが、「癲癇」とは全く別のものです)とも呼ばれ、解離性障害にしばしば伴う症状です。

彼女の記憶を辿っていくと、男性に性行為を強要され、その後もガマンしていたという数ヶ月めから明らかなに記憶の欠如がみうけられます。同棲していたのですが、何をしていたか、何処にいったかなど殆ど思い出す事が出来ません。

これは解離性健忘と解釈できます。
そして、この女性のように、トラウマとなる体験と、解離性障害には、相関があります。
「相関があります」という表現の意味は、「相関はあるが、因果関係があるとまではいえない」ということを暗喩しています。この【2516】の質問者が述べているように、この女性は

それと同時に虚言癖とでも言うべきか、意識的に嘘をつくことがかれこれ30回はあるかと思います。もしかするとその中にも本当に最初は気づかなくて、途中で気づき、言いづらかったのもあるかもしれませんが、一年以上何度も確認し続けても嘘をつき続けたものもあります。

とのこと、解離性障害ではしばしばそういうことがあり、すると、本人が語るトラウマの体験が事実かどうかという疑いが当然生まれることになります。
実際には、トラウマ体験が解離性障害の原因になっているに違いないというケースは多数存在します。しかしその一方で、トラウマ体験が虚言にすぎないのではないかという疑いが濃厚なケースも多数存在します。

なお、

わたしは彼女に「今の薬はいくら飲んでも死なないから無駄だよ」と以前教えておきました。もちろんそういう事をさせないためです。しかし、それを理解しているにも関わらず、何度も薬を飲み「もう疲れました。さようなら」の様なことを言うわけです。彼女が辛いのは事実だと思いますし、死にたいと思う感情がわくのも理解出来ますが、これはいわゆる「心配して欲しい。かまって欲しい」という深層心理による物なのでしょうか。つまり、恣意的に行なっている可能性です。

このような言動も、解離性障害の人に時折みられるものです。もう一度伝統的な精神医学の用語を持ち出せば、「ヒステリー性格」と呼ばれていたものによく合致します。

よくよく考えてみると、自分はこういうタイプの人間だ。だからこれはしていないに決まっている。と決め込んで嘘もしくは勘違いをしているようにも捉えられますが。

虚言の多い人を観察すると、そのように解釈できると感じられることはしばしばあります。しかし虚言とは結局は本人の主観にかかっていますので、最終的にはこの解釈が正しいかどうかを決める方法はありません。

これらはうつ病では無いと思うのですが、如何でしょうか。

最初にお答えしたとおり、うつ病ではありません。

(2014.1.5.)

05. 1月 2014 by Hayashi
カテゴリー: うつ病, 精神科Q&A, 虐待, 解離性障害 タグ: , |