【4716】統合失調症が再び悪化しているのか判断がつきません
Q: 私は30代の女性です。
先生のご意見をお伺いしたいことがあり、メールさせていただきました。
まず前提として、ざっと私のことをお話ししますと、
・私と姉は、ともに親からの虐待を受けて育ちました。
・私は昔から人が怖くて、すれ違う人たちが自分の悪口を言ったり嘲笑しているように感じ、街中のあちこちに同じシールが貼られているのは自分が見張られているからだと感じていました。
20代の頃に精神科を受診したところ、統合失調症との診断。
自殺企図を繰り返し、数度入院。精神障害２級。
（なお肉親の状況については、
・姉 →自殺。解離性同一性障害と診断されていました。
・父→ 境界性パーソナリティ障害と診断されていたそうです。すでに他界していますが自殺ではありません。
・母→以前は仮面うつ病と診断されていると聞いていましたが、そののち統合失調症の診断に変わったそうです）
その後引っ越しの都合で主治医が変わったのですが、新しい主治医にどうしても好感が抱けず、病院から足が遠のいてしまいました。
しかしなぜかそのころから自然に症状が軽くなり、ほとんど問題なく生活できるようになって、結婚もしました。それが５年ほど前のことです。
なので私はすっかり良くなったと思い安心していたのですが、最近、街を歩いていると、すれ違う人が怖くて仕方ありません。
近くを歩いている人が急に走ってきて私を刺すのではないかとか、エスカレーターに乗っているときは後ろの人に突き落とされるのではないかとか……。
ビクビクして、何度も周囲をチェックしてしまいます。
そこで、先生にお聞きしたいことは以下の２つです。
(1) これは統合失調症の症状がぶり返してきているのかなという可能性を考える一方で、私の読書傾向として、実際に起こった殺人事件に関するルポなどをよく読むため、それに影響されて疑心暗鬼になっている（病的にではなく、一般的なレベルで。怪談を聞いたあとにお風呂に入るのが怖くなるような感じ）だけかもしれないとも思っています。
先生はどちらの可能性が高いと思われますか？
(2) もし仮に統合失調症の症状なのだとしたら、いずれまた精神科を受診することが必要になった場合、以前受診を中断した病院に戻ることはないので（結婚後に再度引っ越したので地理的にも遠くなりました）、新しい病院にかかることになると思うのですが、以前の病院からの紹介状や診療情報提供書などがなくても診てもらえるでしょうか？
もう少し私のこれまでの状況を付け加えさせていただきますと、
実は私自身は本当は統合失調症でもなんでもなく、怠けたいばかりに主治医に嘘を言っていたと、今までずっと思っていたのです。
引きこもり生活を続けたいから（10代後半から10年近くほとんど引きこもっていました）そう見せかけていただけだという罪悪感もありました。
主治医たちも私の嘘やズルを見抜いていながら、適当に調子を合わせてくれていただけだと思っていました。
しかしこちらのサイトで上記と同じようなことを相談されている方がいるのを知り、それに対して先生は「統合失調症の方がそう訴えるのは時々あること」と回答なさっていたので、自分でもよく分からなくなってきて、ちょっと混乱しています。
統合失調症は服薬をやめると早晩に悪化するパターンが多いのですよね？
それなのに私は５年近くも治療を受けず服薬もせずにいたにもかかわらず、ほとんど普通の生活を送れていたこと自体が、統合失調症じゃなかったことの証左のようにも思うのですが……。
でもプロである精神科医が私をそう診断したということは、やはりそれが事実なのでしょうか。
正確なところを言えば、死にたい気持ち自体はなくなっていません。首を吊ったり飛び降りたりすることは今でもしょっちゅう考えています。
あとは寝つきが悪く、寝ても夜中に何度も目が覚めてしまったり、悪夢ばかり見るのは、通院していた頃から現在まで変わらず続いています。これは今でも正直結構困っていますが、生活に大きな支障が出るレベルではありません。
しかしこれらは単に私が虐待されていた生い立ちによるものであると思っています。
少なくとも統合失調症によるものではないですよね？
結局何が言いたいのかというと、病気なら病気でいいし、違うなら違うでいいのですが、過去から現在を通して、自分が病気なのかどうかがよく分からなくなっていることがすごく不安です。自分が何者なのか分からないような感覚です。
あまり気にせず今まで通り過ごしていいのか、それとも受診の必要があるのか、道を示していただけると大変ありがたいです。
よろしくお願いいたします。
林: 統合失調症が再発しかかっていると思います。精神科を受診し治療を受けてください。
20代の頃に精神科を受診したところ、統合失調症との診断。
自殺企図を繰り返し、数度入院。
このように、統合失調症と診断された後に、
病院から足が遠のいてしまいました。
しかしなぜかそのころから自然に症状が軽くなり、ほとんど問題なく生活できるようになって、結婚もしました。それが５年ほど前のことです。
このように症状が軽快することは、典型的ではありませんが、統合失調症ではありうる経過の一つです。【4585】統合失調症は自然治癒しますか 、【4589】昔のことを振り返ると統合失調症に似ている症状がありました などをご参照ください。
統合失調症は服薬をやめると早晩に悪化するパターンが多いのですよね？
それなのに私は５年近くも治療を受けず服薬もせずにいたにもかかわらず、ほとんど普通の生活を送れていたこと自体が、統合失調症じゃなかったことの証左のようにも思うのですが……。
統合失調症ではなかったとお考えになりたいという気持ちはよく理解できますが、上記の通り、統合失調症ではそのような経過を取ることがあり得ます。
なので私はすっかり良くなったと思い安心していたのですが、最近、街を歩いていると、すれ違う人が怖くて仕方ありません。
このように、以前と同様の症状が現れているのは、再発の兆候とみるのが妥当です。
(1) これは統合失調症の症状がぶり返してきているのかなという可能性を考える一方で、私の読書傾向として、実際に起こった殺人事件に関するルポなどをよく読むため、それに影響されて疑心暗鬼になっている（病的にではなく、一般的なレベルで。怪談を聞いたあとにお風呂に入るのが怖くなるような感じ）だけかもしれないとも思っています。
統合失調症の再発を否定したいという気持ちがそのような解釈に傾けているのだと思います。
先生はどちらの可能性が高いと思われますか？
統合失調症の再発の可能性の方が圧倒的に高いです。
正確なところを言えば、死にたい気持ち自体はなくなっていません。首を吊ったり飛び降りたりすることは今でもしょっちゅう考えています。
それも統合失調症の症状である可能性は十分にあります。【4585】統合失調症は自然治癒しますか の方も同様の症状を記しておられます。
しかしこれらは単に私が虐待されていた生い立ちによるものであると思っています。
それもまた、統合失調症の再発を否定したいという気持ちによる解釈だと思います。「生い立ちによる」という解釈の方が納得しやすいという事情もあるため、そのように解釈する方はとても多いのですが、そうしているうちに症状が悪化して統合失調症であったと気づくというケースは膨大にあります。
少なくとも統合失調症によるものではないですよね？
統合失調症によるものである可能性が圧倒的に高いです。
(2) もし仮に統合失調症の症状なのだとしたら、いずれまた精神科を受診することが必要になった場合、以前受診を中断した病院に戻ることはないので（結婚後に再度引っ越したので地理的にも遠くなりました）、新しい病院にかかることになると思うのですが、以前の病院からの紹介状や診療情報提供書などがなくても診てもらえるでしょうか？
もちろん診てもらえるのが普通です。受診して適切な治療を受けてください。
(2023.8.5.)
