【4660】社会不安障害の症状らしいことがわかりましたが、私の状態は「日常生活や社会生活に支障が出る状態」と言えるのでしょうか
Q: 20代後半の女です。
わたしにはもの心ついたときから不安障害だと思われる症状がありました。具体的には、発表など人前にでるとひどく緊張してしまう(指先が冷える、声が震える、頭が真っ白になる)、発表があるとその資料をつくる段階から緊張してしまう(手汗足汗がとまらない、憂鬱な気分で作業に取り掛かることができない)、緊張で声が震えることで変なひとと思われないかと考えて憂鬱になる、人前で作業すると震えてしまう(文字が震えてしまう、汗をかく、カチコチとした動作になる)、人前にでることが恐怖でなるべくそのような機会を避けてしまう、人前で電話対応をすると緊張する、顔が分からない匿名のチャットでも人数が多いと緊張して会話に参加できない、などです。
ネットで症状を調べると社会不安障害の症状らしいことが分かりました。投薬や認知行動療法で治療できるとも書いてありました。治療したいと思いましたが、病院には行っていません。理由はいくつかあります。ひとつは20代前半頃までよりは症状が軽くなっているからです。例えば、昔はバイト先で仕事に必要な電話対応ができなかったのですが(声が震える、パニックになる)、社会人になって何回も対応するうちにできるようになりました。慣れたらできるなら病気ではなく性格の問題なのかもと思い受診していません。もうひとつの理由は、ネットで症状を調べると必ずでてくる「日常生活や社会生活に支障が出る状態である」というものに自分が当てはまっているか分からなかったからです。わたしは人前にでることは苦手ですが、仲のよいひとや一対一のコミュニケーションなら問題なくできます。仕事もなるべく人前にでないものを選んだのでできていると思います。大勢のひとを前にする機会さえ避ければ普通の人でいられます。主にそのような理由で病院には行っていません。
そこで先生にお聞きしたいのは、わたしの今の状態は「日常生活や社会生活に支障が出る状態」と言えるのかということです。たしかに日常生活は送ることができています。ひとりで収入を得て暮らせています。ですが不安障害と思われる症状のせいで、本来やりたかった仕事を諦め(私は医療従事者になりたかったのですがこんな私には無理だろうと学ぶこともしませんでした)、結婚式に憧れながら、でも式当日になったら緊張で変なわたしを見せてしまうとだろうと考えてしまう、この状態は「日常生活や社会生活に支障が出る状態」なのでしょうか。病院に行って治療を受けたほうがいいのでしょうか。治療を受けたとして完治できるものなのでしょうか。
聞きたいことは以上です。はじめて自分の症状を文章にしたのでおかしなところがあるかもしれません。すいません。先生に回答いただけると幸いです。
林: 精神症状とはどれも主観的な体験で、ではそれを病気とみなすかどうかということになりますと、本人かまたは周囲の人々がそれによって苦しんでいるか・困っているかということを基準にする以外にありません。ご質問の「日常生活や社会生活に支障が出る状態」は、診断基準などに記されているそのことを表す文言で、文言として書かれていると客観的な基準であるかのような錯覚が生まれがちですが、実のところは主観にすぎません。したがいましてご質問の、
この状態は「日常生活や社会生活に支障が出る状態」なのでしょうか。
に対する答えは、「あなたがそれによって苦しんでいればイエスです」ということになります。
そうしますと、
私は医療従事者になりたかったのですがこんな私には無理だろうと学ぶこともしませんでした
このことをどう考えるかということになるでしょう。つまり「夢をあきらめる」ことをどう考えるか。病気でなくても「夢をあきらめる」ことはごく普通にあることですから、それだけをもって病気であることの基準にするというのは納得し難いと思います。しかし逆に、「あなたがその夢をあきらめたのは病気のせいで、その病気は治療できる」と説明されれば、それはそれで光が見えたと感じられるでしょう。ここにはそもそも精神障害とは何か、精神の病とは何か、という根本的な問題が見えてきます。
(2023.4.5.)