【4595】昔の自分は精神病だったのでしょうか
Q: 21歳、女性です。昔の私は病気だったのでしょうか?
私は中学校に入ってから学校に馴染めず、不登校になりました。それまで少人数の小学校に通っていて、中学に進学してからは急に人数が増え周りは知らない子たちばかりで、小学校の頃のように気心知れた仲間ばかりではなかったので私は周りに合わせるということを知らなかったのだと思います。
なかなか友達もできず、仮病を使って休みがちになり、そんな風に学校には行ったり行かなかったりだったのでクラスメイトから軽い悪口(?)を言われるようになり、疎外感を感じて益々学校が怖くなる、行きにくくなる…という悪循環でした。
中学3年間を通して学校に通ったのはトータルで半分も行っていなかったと思います。行っても、その大半は保健室や相談室で過ごしていたような気がします。
小学校からの友人や中学に入ってからできた友人、小学校の頃から一緒で部活の先輩にも当たる友人もみんな気にかけ、学校に来なよと声を掛けてくれていました。
でもその頃の私は学校や教室という場所自体が恐怖でした。引きこもりのようになり一日中部屋でゲームをするか漫画を読んで過ごしていたような気がします。
思春期特有のものもあったのかもしれませんが学校にいると常に自分の悪口を言われている気がしていました。外出も、外出先で学校の子に会ったり人の目が怖くて家族からご飯に行こう、と誘われてもなかなか行けませんでした。
中学3年生の頃からは兄から死ね、とかキモいと言われるようになりました。
なんかブツブツ言っているなぁ、と思い耳を傾けてみると死ねと言っているのが聞こえました。私に向けて言ったものか兄が単純にストレス発散をしていたのかは分かりません。でもそういう単語を発していたのはほぼ間違いないと思います。
不登校になり、私が家に籠るようになってから元から悪かった家族関係は更に悪化し父はあまり帰ってこなくなり私と兄弟(兄,弟がいます)はほとんど口をきかなくなりました。
学校での苛めに加え、そういう家庭環境が私にとっては辛く、高校からは祖父母の家で生活をしています。
高校に入ってからは苛めというものは一切なくなり少ないながらも新たに友人はできましたが、中学校時代の学校に対する恐怖感はなかなか拭えず、高校でも休みがちでした。教室にいると息がつまりそうな思いがしていたんです。
出席日数が足りず留年したあと、衝動的に自殺未遂をしました。これが最初の自殺未遂でした。学校を早退してすぐのことでした。
勉強は好きだったし高校に対する憧れの気持ちもあったので真っ当に通いたいと思っていましたが無理なんだと悟りました。
その年の秋に通信制の高校に転入しました。そこは不登校や問題児に理解のある学校で、楽しんでのびのびと通えました。生まれて初めてのアルバイト経験をしたり、恋人もできました。
でも中学校の時の苛めや家庭環境から自分を卑下することはなかなか辞められず、自傷行為や自殺未遂も何度かしていました。
精神科にも何度か通いました。診断名はアスペルガー症候群?ADHD?何かの疑いがあると言われましたが忘れてしまいました。
薬も処方されていましたが当時は薬に対する偏見が強く、薬で治るわけがない、だとか薬漬けにされるだけだと思ってほとんど真面目に飲んでいませんでした。
自殺未遂するときは精神科でもらった薬か、同居の祖父が持病のため病院から処方されていた睡眠薬をまとめてお酒と一緒に飲んでいました。自殺未遂からICUに入ったこともあります。
当時の私は「死にたい」というよりは「辛さから逃げたい」という気持ちでした。
今なら、辛いことがあったら具体的に解決策を考えよう、だとか人に相談しようとかとりあえず気分転換をしようという風に思えるのですが、自殺という方法を選ぶ辺りがなんらかの精神的病にかかっていたということなのでしょうか。
通信制の高校を一般的な高校生よりは1年遅れで卒業し、専門学校に入学しました。
これくらいの年齢になると周りの子たちも苛めという概念は全くなく、年齢も様々な人たちが学校に通っていましたがお互いに個性を認め合っていたと思います。
学校の先生方も人間的に尊敬できる方々ばかりでした。
でも、私の中の劣等感からでしょうか、苛めにあっていたことや自殺未遂した負い目を常に抱えていました。家庭環境の事も自分の中で許せずにいました。
専門学校でも休みがちで、2年で卒業できるはずが留年し、今年の夏に休学しました。
今は実家の仕事を手伝っています。
中学生の頃は人の目が怖いだとか悪口を言われているような被害妄想に悩まされていましたが、今はそんなことは全くなく外出できますし、車の免許があるので自分の運転で色んなところに行ったり友人と会って遊んだりしています。
先生にお訊きしたいのですが、昔の私は病気だったと思いますか?
真面目に薬を飲んでいれば、自殺未遂を繰り返すことはなかったのでしょうか。
また、今現在の私は精神科やもしくはカウンセリング等にかかる必要はあると思いますか?
読んでくださり有難うございました、回答いただけるととても嬉しいです。
林:
なかなか友達もできず、仮病を使って休みがちになり、そんな風に学校には行ったり行かなかったりだったのでクラスメイトから軽い悪口(?)を言われるようになり、疎外感を感じて益々学校が怖くなる、行きにくくなる…という悪循環でした。
学校にいると常に自分の悪口を言われている気がしていました。
このように「悪口などを言われている感じ」から始まり、その後に、
中学3年生の頃からは兄から死ね、とかキモいと言われるようになりました。
なんかブツブツ言っているなぁ、と思い耳を傾けてみると死ねと言っているのが聞こえました。
このように、「なんかブツブツ言っているなぁ」というような曖昧な言葉の中に自分への悪口などを聴き取る、というのは、統合失調症の発症過程に見られる典型的なパターンの一つです。
そしてその聞き取った言葉について、
そういう単語を発していたのはほぼ間違いないと思います。
というように、聞こえたのは間違いない、と感じるのは、統合失調症の症状としての幻聴が顕在化する典型的な過程です。
そしてこの後に幻聴や被害妄想がさらに明らかになるというのが統合失調症として最も典型的な経過ですが、この【4595】で見られた行動、すなわち、
自傷行為や自殺未遂
というように、逸脱した行動(この【4595】では自己破壊的な行動)が、幻聴や被害妄想が顕在化する前に現れることもあります。
したがって【4595】のケースは統合失調症の可能性あり、ということになりますが、悪口などが事実であった可能性ももちろん否定はできませんし、かなりのストレスがある家庭環境にあったことからは、自傷行為や自殺未遂は統合失調症の発症を仮定しなくても理解できるとも考えられます。
そして、ある程度良好な環境になったときには、症状が軽くなっていることからも、原因は病気ではなく環境だという解釈が成り立ちます。
ただし他方で、統合失調症であっても、環境の影響によって症状はある程度よくなったり悪くなったりするのは十分にあることですので、「ある程度良好な環境になったときには、症状が軽くなっている」ことをもって統合失調症の診断を否定することはできません。
統合失調症は治療を受けなければ悪化していくのが普通ですが、自然治癒したかのように見えるケース、たとえば【4584】、【4585】のようなケースも存在しますので、この【4595】もその一例と見ることも可能です。 【4231】統合失調症の不完全型のようなものはあるのでしょうか もご参照ください。
(2022.12.5.)