【4591】私のかつての妄想は統合失調症の症状だったのでしょうか
Q: 現在25歳の女性です。高校生の頃から人の視線が気になる、周りの人が自分を笑っている気がする等の症状がありました。20歳になるとこの症状が悪化し、外食に行っても周りの目が怖くて食器を持つ手が震えて食事が出来ない程になり、鬱のようになってしまい鬱の薬と睡眠薬を服用し始めました。現在10か月ほど薬の服用を自己判断で中断しています。
鬱症状は2年ほど前から改善していたのですが、1年ちょっと前にしばらく強い妄想に悩まされていました。「家に強盗が入ってくる」というもので、一時は「玄関から誰かが入ってこようとする。気付いた自分は鍵を閉めようとするがかからず、相手がドアを開ける」夢をほぼ毎日見ていました。ただの妄想だと自分でも分かっているのに、夜になるとどうしようもなく不安になって玄関の鍵がちゃんとかかっているか毎晩確かめていました。家族に頼んで鍵も1つ増やしてもらいましたがそれでも不安感や悪夢は収まらず、3か月ほど強い妄想のある状態が続きました。妄想は「家に強盗が入ってくる」だけで他にはありませんでした。
この妄想は次第に収まり、鬱の症状も改善しているように感じたため現在は薬は何も服用していないのですが、今思うと上の妄想は統合失調症か何かの症状だったのではないかと感じています。現在は特に妄想のようなものはなく、高校生の頃からあった自分が笑われているような感覚も大分薄れています。ただ「強盗が家に入ってくる」妄想は祖父がぼけた時に抱いていた妄想と全く同じで(祖父は家に泥棒が入っている!と言って家中に鍵を付けていた)、自分も病気だったらまたこの先妄想に悩まされるかもと少し不安です。
この不安はたまに感じる位で眠れなくなる程のものでもないのですが、勝手に断薬したことも原因かもしれないと反省しています。今は夜ちゃんと寝て決まった時間に起きれているので睡眠薬は必要ないと思うのですが、鬱の薬は再開するべきでしょうか?(当時飲んでいた薬はトラゾドン25mg、アリピプラゾール3㎎、ベルソムラ15㎎です)また上の妄想は統合失調症の症状だと思いますか?
林:
上の妄想は統合失調症の症状だと思いますか?
統合失調症の可能性はあります。
統合失調症の初期や前駆期は、幻覚や妄想があまり目立たず、うつ病と診断されることが少なからずあります。うつ病の診断は結果的には誤診ということになりますが、それは後からふりかえってみればということで、幻覚や妄想があまり目立たない時期に統合失調症と診断するのはかなり難しい場合があるというのが事実です。
この【4591】のケースでは、
高校生の頃から人の視線が気になる、周りの人が自分を笑っている気がする等の症状がありました。20歳になるとこの症状が悪化し、外食に行っても周りの目が怖くて食器を持つ手が震えて食事が出来ない程になり、鬱のようになってしまい鬱の薬と睡眠薬を服用し始めました。
これらは統合失調症の疑いある症状であるといえます。この時期にうつ病と診断されることはありうることです。
現在の症状は、
「家に強盗が入ってくる」
という妄想であるとのこと、この妄想だけが症状ということになりますと、統合失調症とはい言い切れませんが、統合失調症の可能性はあるということを前提に、診療を受け続けることが必要です。
(2022.12.5.)