【4588】病気か、それとも甘えのための詐病か
Q: 10代の男性です。三年ほど前から理由は判然としないのですが、学校を休みがちになり、しばらくして、昼夜逆転や気力の低下、不安感などを呈するようになるなどし、親の勧めもあって、精神科の受診を決めました。
初診の診察では、助けてほしいという願望もあり、過剰に申告してしまい、結果、医師に、うつ状態とだけ言い渡されました。睡眠薬を処方され、その日は帰りました。
何度か診察をして、何度か親が学校になじめないこと(私はそんなことはない思います)を話すと加えて発達障害を疑われたようで、WISC-IVを受けました。
言語性IQは130程度、動作性IQは85程度で、開きが大きく、生育の状況と照ら合わせ、アスペルガー症候群の疑いアリとのことでした。
医師にカウンセリングを進められたのですが、既に受けていてることを伝えると、重複はよろしくないとのことで、やっているほうを選択しました。精神は待合にひとがたくさんいて、見られることが苦痛でじきに通院、服薬ともに断念します。
既に受けていたカウンセラーは資格を勉強中とのことで、認知行動療法というものを試されました。医師ではないようです。カウンセラーは大学構内にいらして、学生とすれ違うのが苦痛なこと、それから親とそのカウンセラーは交流があり、そのため私の話した内容をメールで親にすべて横流ししており、不愉快に感じて行かなくなりました。これは妄想ではなくメールを盗み見しました。守秘義務違反には、あたらないのですか？
初診から2年半くらい経ち、もう長く家に引きこもっています。無気力の状態が続き、最近は趣味だった読書からも遠のき、意識が張り詰めたような漠然とした不安感があり、ソワソワ家の中を歩き回ったりしています。足音で自分の存在が悟られ、昼間からどうして家にいるんだ、と、思われていないか気がかりでなりません。近所の目が怖く、少しでも隙間が開いていると窓にはりついて覗かれる気がするので、カーテンは朝昼晩問わず完全に閉め切っています。ネットでの書き込みや履歴が漏洩し、晒されて、掲示板やリアルで笑われていないか心配です。近所のひとから笑い声が聞こえるとそれが自分に向けられた嘲笑のように思います。怒りが抑えられずガラスをこぶしで割ったこともあります。部屋は前にもまして汚くなり、風呂に入る頻度もぐんと減りました。不潔です。
一方でこれらが、引きこもりを正当化するための、単なる甘えやなまけに過ぎず、症状の色彩を帯びた体験は、意識的に誘導された誇張や虚偽のような気もしてきます。もしそうなら申し訳ないです。荒唐無稽だとわかっているし、病感があるのが根拠です。ですが疑惑がぬぐえません。
先生はどう思われますか。
林: 統合失調症の前駆期あるいは初期である可能性が十分にあると思います。
三年ほど前から理由は判然としないのですが、学校を休みがちになり、しばらくして、昼夜逆転や気力の低下、不安感などを呈するようになるなどし
このような経過は【4587】と同様で、統合失調症が発症しかかっている時に十分にありうるものです。この【4588】ではそれに加えて、
足音で自分の存在が悟られ、昼間からどうして家にいるんだ、と、思われていないか気がかりでなりません。近所の目が怖く、少しでも隙間が開いていると窓にはりついて覗かれる気がするので、カーテンは朝昼晩問わず完全に閉め切っています。ネットでの書き込みや履歴が漏洩し、晒されて、掲示板やリアルで笑われていないか心配です。近所のひとから笑い声が聞こえるとそれが自分に向けられた嘲笑のように思います。
このように、被害念慮 (「被害念慮」は、被害妄想に近いけれど妄想とまでは言い切れない場合に用いられる言葉で、被害妄想との区別は曖昧です。つまり被害妄想と呼ぶこともできるということです)が出てきていますので、統合失調症の可能性は十分にあるということになります。
さらに、
怒りが抑えられずガラスをこぶしで割ったこともあります。部屋は前にもまして汚くなり、風呂に入る頻度もぐんと減りました。不潔です。
このような状態も、統合失調症の可能性ありという判断を強化するものです。
一方でこれらが、引きこもりを正当化するための、単なる甘えやなまけに過ぎず、
その可能性は低く、統合失調症の可能性が高いです。精神科で診断・治療を受けてください。
(2022.12.5.)
