【4482】短期精神病性障害の再発不安
Q: 30代女性です。
件名のことについて御見解を伺いたくメールさせていただきました。
これまでの経緯は以下のとおりであり、現在は問題なく過ごしておりますが、再発しないか不安で仕方がありません。
ご多忙のこととは存じますが、御見解をお聞かせいただければと思います。
【質問】
・再発の可能性は高いか
・再発の不安が再発の引き金になることはあるのか
【経緯】
私は30代の女性で、新卒で就職してから、特になんの問題もなく日常生活を送っておくりました。 これまで自身で特に気になるような精神症状はありませんでした。他人から指摘されたこともありません。
一年ほど前、職場の男性が絡んだ性的なトラブルにあい、被害直後は恐怖などを感じず普通に会社に行って普通に働いていました。
食欲が全くわかず、睡眠も1日2~3時間しか取れない状態でしたが、なぜか体力だけはあり2週間ほどその状態で働き続けたところ、出勤したら急に周囲の社員がトラブルについて噂をしている声が聞こえ、自宅にいても加害男性が私を殺しに来るというような幻聴が聞こえるようになりました。
その時は本当にそういう会話があるのだと信じていたので、幻聴に従い避難したりしました。
しかし、翌日にこれは幻聴ではないかと気付き、精神科を受診しました。薬の名前は忘れてしまいましたが、向精神薬を処方され、ゆっくり寝たら幻聴は3日ほどで無くなり、それ以降幻聴が聞こえることはなくなりました。
その後一刻も早くその土地を離れたくて、すぐに職場を退職し、引っ越しましたので、そのまま病院には行かず薬も2週間ほどで辞めました。
ここまでの出来事が被害に遭ってから1ヶ月くらいの間の出来事です。
その後、1ヶ月ほど新しい土地で1ヶ月ほど引きこもったところで、そろそろ前を向こうと転職をして現在は普通の日常生活を送っています。
【現在】
幻聴は転職の初日に聞こえたような気がした(あの人は以前の職場でこういう被害に遭ったと聞こえたような気がした)以外は一度も聞こえておりませんが、ふとしたときに当時のように後をつけられていないか、また自宅に突然来たりしないか、一生監視されるのではないかという恐怖を感じています。
そして、ある日突然また自分がおかしくなってしまうのではないかという恐怖が常にあります。
新しい土地で精神科を受診したところ、恐らく短期の精神病性障害で、高ストレスが原因であり、情緒的に同じレベルのストレスを受けなければ大丈夫だろうと言われました。
しかし再発率の高い症状だと知り、やはり不安が拭えず、また不安になったらいつでも受診してくださいと言われましたが、同じ理由で答えをいただいたことで再度受診するのもどうかと考えると一人で不安に耐えるだけの日々です。
一番怖いのは、幻聴の声に従い誰かを傷つけたりしないかということです(ネットやニュースでそういう話を聞くので)。
私は再発する可能性がそれなりに高いのか、御見解をお聞かせいただければと思います。
よろしくお願いいたします。
林: このように、明確な強いストレスがあり、そのストレスと意味的にも関連した精神病症状(たとえば幻聴)が現れ、しかしそれは一過性できれいに消失し、この精神病症状のエピソード以外には、それ以前もそれ以後も日常生活に特に問題がない場合は、この【4482】の質問者が受診した医師の説明の通りで、
短期の精神病性障害で、高ストレスが原因であり、情緒的に同じレベルのストレスを受けなければ大丈夫
と考えるのが普通で、かつ、それが正しいと言えます。
ですから、殊更に再発について不安をお持ちになる必要はありません。
ただし、たとえ一過性でもこのような精神病症状が現れたということは、同様の症状が現れやすい傾向を体質的に持っているということは言えます。(大部分の人には、この【4482】の質問者と同じようなストレスを受けても、精神病症状は現れませんから、この【4482】の質問者は精神病症状が現れやすい素因を持っているということになります)
したがってご質問への回答は次の通りということになります。
・再発の可能性は高いか
相対的には高いです。相対的という意味は、人間すべての平均よりは高いということです。このことを理由に、再発について不安を持ち続ける必要はありません。
・再発の不安が再発の引き金になることはあるのか
「引き金になることはあるのか」という質問には、どんな場合でもイエスです。「ない」などと言えるはずはありません。また、「引き金」という言葉はかなり広い範囲の意味を含んでいますので、どんなことでも引き金になることはあります。したがってこのご質問は無意味です。
(2022.4.5.)