【4462】妄想性障害と診断された夫の今後
Q: 私の夫(30歳)は私の不貞行為を疑っており妄想性障害と診断されて1年になります。本当に妄想性障害なのか気になっています。なぜかと申しますと、私が浮気をしてることを同僚が話ししていると訴えており、その中には自分たちしか知らないことを知ってる人がいたという発言や、自分が仕事にかなり集中している時に、同僚がいきなり不貞に関する内容を話しだし、私たち夫婦の名前はでてきてないことが多いが、数回私たち夫婦の名前をはっきりと指し、私が不貞している内容を話ししていたことがあったというのです。なので、私は幻聴もあるのでは?と思いました。
主治医に幻聴があっても妄想性障害と診断されるのですか?とお尋ねしたところ以下のような回答がありました。主治医によりますと妄想性障害の診断詳細は下記です。(1)仕事ができていること(主人の上司からも話を聞いてますので仕事ができていることは間違いありません)(2)妄想の内容が奇怪でないことと妄想内容が不貞を疑っていることだけに限定されている(3)統合失調症の幻聴は本人が幻聴と会話するような内容なので統合失調症ではない(4)妄想に関することで生活のレベルが下がったことはあるが、その他に今のところ支障はでていないといったところです。
そこで林先生にお聞きしたかったことは
A 林先生のご経験からみてもこの診断に間違いはなさそうでしょうか?
B 更に妄想内容が増え、収拾がつかなくなったりすることもあるのでしょうか?
C 統合失調症の初期症状ということはないでのしょうか?
D 私が不貞行為をしそうな性格(ながされやすい所)が妄想を確信にさせていると夫は言ってますが、私の性格が仮になおれば病気が改善するのでしょうか?
E 自分の気に入らない人とは一切付き合わないという趣向があります。本人いわく、低俗な人と関わったら良くないことが起きると思っているようです。これは病気の一環なのか性格なのか、この趣向はずっと続くと覚悟しないといけないのでしょうか?
主治医にお聞きすることも大切だと思うのですが、家族としてどのような覚悟(可能性)をして生きていかなくてはならないのか、把握しておきたくセカンドオピニオンを林先生にも求めたいと以前から思いた次第です。
林: 妄想性障害と統合失調症の区別は実のところ曖昧です。
【4455】パラノイアの有効な治療法、【4456】妄想性障害を統合失調症と誤診されることの心配などもご参照ください。
統合失調症ではなく妄想性障害であることの根拠として主治医の先生が挙げておられる(1)(2)(3)(4)、すなわち、仕事ができている・妄想の内容が奇怪でない・幻聴が対話性でない・生活レベルの低下が妄想によるものに限定している、は、いずれも、「典型的な統合失調症とは異なる」とまでは言えますが、統合失調症という診断を否定する根拠にはなりません。この主治医の先生のご説明は、「このケースは私が統合失調症と呼んできたものには一致しない」という、ご自身の見解を表明しているものにすぎません。しかしながら、統合失調症の診断というものはつきつめればすべてそのようなものであると言うことも不可能ではありません。そうしますと、標準化されている診断基準に適合するか・しないか のみが、唯一の「正しい」診断ということになりますが、そう単純にはいかないことが多々あるのが精神医学というものです。
ご質問項目についての回答は次のようになります。
A 林先生のご経験からみてもこの診断に間違いはなさそうでしょうか?
統合失調症の診断は、「経験からみて」「間違いない」かどうかという観点で決められるものではありません。
B 更に妄想内容が増え、収拾がつかなくなったりすることもあるのでしょうか?
十分にありえます。
C 統合失調症の初期症状ということはないでのしょうか?
十分にありえます。むしろその可能性の方が強いように思います。
D 私が不貞行為をしそうな性格(ながされやすい所)が妄想を確信にさせていると夫は言ってますが、私の性格が仮になおれば病気が改善するのでしょうか?
しません。あなたの性格とは無関係です。
E 自分の気に入らない人とは一切付き合わないという趣向があります。本人いわく、低俗な人と関わったら良くないことが起きると思っているようです。これは病気の一環なのか性格なのか、この趣向はずっと続くと覚悟しないといけないのでしょうか?
病気です。治療しなければ悪化します。治療を受ければ改善が期待できます。
(2022.3.5.)