【4556】被治療者間、治療者と被治療者の人間関係について
Q: 40代女性です。 毎月興味深く拝読させていただいております。
以前少しだけ精神科にかかっていたことで色々考えることがあり治療経験ご経験豊富な林先生にメールいたしました。(今は元気に生活しています)
(1) 被治療者間の人間関係について
精神的な疾患を抱えた方同士のインターネットやSNSなどを見ると、疾患が重い方が優れているという謎のマウンティングがある気がします。
病院にかかっていないよりかかっている人が上、より強い内容や量の薬を飲んでいる方が上と言った雰囲気です。「あなたなんてまだまだだよ。私なんて」みたいな。
一般的な常識とは少し違う気がします。精神疾患を引き起こす被害についても地位の上下がある気がします。
(2)治療者と被治療者の人間関係について
また治療者の側にも、色々な決めつけがある気がします。まるでその治療者の回答に合わせないとおかしいような、被治療者の態度を求められている気がします。回復についても治療者のとおりの手順で回復しないといけないような、そのように演じなければというプレッシャーも感じたりしました。自分の感じたことや個性を無視されている気がしました。
これは私の私的な意見ですが、こういう患者間や治療者と患者間の関係性について林先生は何か上記の件で思われることがありましたら伺えますでしょうか。
どうぞよろしくよろしくお願いいたします。
林:
(2)治療者と被治療者の人間関係について でご指摘の点については、治療者の側に問題がある場合と、被治療者(患者)の側に問題がある場合の両方があると思います。つまり、質問者が指摘されるような「決めつけ」が、実際に治療者にある場合と、そのような「決めつけ」はないにもかかわらず、被治療者がそのように感じてしまう場合です。この二つは「場合」というより「要素」で、治療者-被治療者という人間関係には常にある程度はあるもので、どちらの「要素」が大きいかはケースバイケースというのが事実なのだと思います。
(1) 被治療者間の人間関係について でご指摘の点については、そのような印象があると私も思います。理由のひとつには、そもそも、SNSなどで自らの症状を開示しようと考える人の中の一部の人の心理として、自分の病気の大変さを人に知ってほしいというものがあると思います。そしてそういう人の発言する声は大きくなりがちなので(「声が大きくなる」というのはもちろんたとえです)、余計に目立つことになるのでしょう。もちろんSNSで症状を開示するのはそういう人ばかりであるとか、そういう人が特に多いという意味ではありませんが、逆に病気の大変さを人に知ってほしくないと考える人はSNSにそういう内容を投稿しないとまでは確実に言えるでしょう。それから投稿者の中にはなりすましや虚言者も相当に含まれていることも十分に考慮する必要があります。
(2022.10.5.)