【4416】高校を 2 回卒業したような記憶がある
Q: 30代女性です。
夢で見た記憶なのか現実のことなのか分からなくて動揺しています。
私は、中高一貫校卒業→4年制大学卒業→看護学校卒業という経歴を現在病院で働いています。この間浪人等なくストレートです。
ある時から「私は高校に2回通った」という謎の記憶が出てきてしまいそれが夢か現実かわからなくなってしまいました。普通は夢で見たことは夢とはっきりわかるのですかこの時は本当にそうだと思ってしまい、精神疾患の前兆でないかと思い今回質問しました。
両親に聞けば1発で妄想がそうでないかわかるのですが、心配させたくないので聞くことができません。これが妄想なら、なぜ体験したことのないことをあたかも体験したかのように感じてしまうのかと考えると不安です。
高校に2回通ったと思うリアルな記憶がある(2回目は仕事をしながら通い直したのでセンター試験や大学受験はしなく3年生の時は暇だった、2回目なのに数学の出来はさっぱりだった、制服を着るのが恥ずかしかった、など)一方現実的にありえない設定(就業しながらもう一度同じ昼間制の高校を出るなど)というのもあります。
統合失調症に関する本を読んでみましたが、例に書いてある妄想とはちょっと違うかなと思いました。
記憶に関してなぜこのようなことが起こるのか、これが何を意味するのか知りたいです。
林: これはかなり稀な症状です。整理のため、まず、その記憶の内容が真である/偽である に二分してみます。
(1) 真であったとすれば、解離性健忘として無意識の中に封印されていた記憶が蘇ったというのが最も考えられる解釈です。「ある一定期間についての記憶がリアルなものとして思い出されたという主観的体験」は、まず間違いなく解離性健忘からの回復です。けれどもこの【4416】のケースの「蘇った記憶内容」は、常識的にはあり得ない内容ですので、「その記憶の内容が真である」という前提がかなり危ういものです。もっとも、常識からかけ離れた事情があったからこそ解離性健忘になったという解釈が可能ですので、内容があり得ないというだけで、真の記憶でないと結論することはできません。(現実的にあり得ない「設定」が記憶の中にあるようですが、それは記憶の混乱と解することができますので、記憶内容が基本的には真であることを否定する根拠には必ずしもなりません)
(2) 偽であったとすれば、定義上は偽記憶ということになります。けれども、「高校に2回通った、その内容まで具体的な記憶がある」というのは、偽記憶としてはかなり例外的で、何らかの精神疾患の前駆症状の可能性ありと言えます。
両親に聞けば1発で妄想がそうでないかわかるのですが、心配させたくないので聞くことができません。
そのお気持ちは理解できますが、やはりこれはご両親に事実を確認されたほうがいいと思います。そしてもし記憶内容が事実でなければ、必ず精神科を受診したほうがいいでしょう。事実であった場合も、相当複雑で強烈な事情が高校時代にあったと推定できますので、精神科受診が必要になるかもしれません。
(2021.11.5.)