【4415】恋に落ちたら統合失調症が再々発しました。 ( 【4081】【4297】【4362】のその後)

Q: 【4362】退院して2年で再発し、再入院して回復しました【4297】患者が病名を知らずとも適切な薬を飲み症状が落ち着いていたらそれで治療としては成功でしょうか 【4081】双極性障害と診断されているが統合失調症ではないかにて回答いただいている30代前半女性です。前回の再発、退院から3ヶ月後に再々発しました。今は1ヶ月入院しており一時帰宅で様子見をしています。退院予定は1ヶ月後です。

今回は、きっかけは恋愛でした。SNSで知り合った中南米出身のポスドクの人と1週間、リモートでお話したりメッセージのやりとりをしていました。とても優しく穏やかで知的な方で、楽しくお話をしていました。が、1週間後に相手から「元カレと別れてどのくらいなの?」と聞かれて「え、この人わたしみたいな人のこと恋愛対象として見てくれてるのかな?わたし精神疾患があるって最初に伝えてるのにいいのかな?◯歳なんて年増なのに…。」ととてもドキドキし、「この人と絶対両思いになりたい!中南米だからスペイン語覚えてお話しがしたい!」(ここまで英語で会話とメッセージをしていました。)と図書館でスペイン語入門の本を何冊もかりて勉強をはじめ、3日ほど断眠しました。ドキドキとしてから次はイライラしはじめ、突 然相手に「あなたは話の聞き役ばかりして自分のことを話さないんですね。意見を言ってください!」と怒りのメッセージを送り、相手から「議論がしたいわけじゃないから。友達になれそうだと思ったけど無理そうだね。じゃあね。」とフラれてしまいショックを受けました。

ここから、またしても家族の声で幻聴がはじまりました。親戚に医者で大学の教授をしている人がおり、その親戚とポスドクの人の研究内容が似ていました。その親戚の名前を相手に伝えていたので、ここまでの相手とのやりとりを全て親戚に連絡されたと考えました。そしてその親戚からうちの親に連絡が入って家族がヒソヒソとポスドクの人とのやりとりを読み上げる声がしていました。声はどんどんエスカレートして大声で聴こえるようになり、職場ではマスクや昼の薬を忘れたり前日の仕事をどこまでやったのか覚えていなかったり出勤時間が1時間早くなっていたりして、仕事どころではなくなり病院に行きました。

また即入院となり、ハロペリドールとアキネトンの5mlの注射を打たれてハイテンションだったのがダウンしてゆっくりと休めました。幻聴が怖くて脈がとても早くなっており、理屈は分かりませんが採血する血管が出てこないとナースに言われて、3人ナースが何度も交代しながら血管を探してくださってなんとか採血できました。そしてお薬の調整(飲み薬にセレネース2mgとアキネトン1mg追加)をされて幻聴が聴こえなくなったので一時帰宅となりました。職場はとても理解がある人たちと仕事をしているので今回の入院も回復するまで待ってくださっています。

この先、入退院を一生繰り返すのはゾッとします。精神科の閉鎖病棟は本当に廃人のようになってしまった人や奇声を上げる人がおり、常に緊張感があります。

今回は恋愛感情を相手に持ってしまい、ドキドキしたことが原因で再発しました。
「30歳を越えているのにそんな子どものような些細なことで」と呆れられてしまうと思いますが、”ストレス”でも”恋愛”でも再発してしまうわたしはどうやって生きていけばいいのか今は途方に暮れています。わたしは楽しく恋愛することもできないで何に希望を持って生きていけば救済されるのでしょうか?家族のことも大事に思っており、大好きなのに入院中は親を責め立てる悪口を口にしてしまっています。

仕事を絶対にやめないでコツコツと続けようと思っています。仕事が今の生き甲斐です。”楽しいこと””幸せなこと”も再発につながるなんて…本当にショックです。現状報告でした。退院したらポスドクの人と仲直りしてスペイン語教室に通うように考えています。

 

林: その後の経過のご連絡をいただきありがとうございました。
事実だけをはっきりお伝えしますと、これはとても平凡な経過です。安定していた統合失調症の方が恋愛をきっかけに再発するのは非常によくあることです。恋愛に限らず、本人にとって関心の高い出来事や、その後の人生を左右する出来事は、再発のきっかけになりやすく、たとえば「色、金、地位に注意」などと言われることもあります。言うまでもありませんが、色は恋愛、金は金銭的変化、地位は職業上の変化です。
しかしこれらは人生では避けられないことですから、現実には、再発のリスクとのバランスで考えるということになります。非常に重症の統合失調症であれば、再発のリスクは極力ゼロにすべきで、そうであれば色も金も地位も断念したほうがいいということになるでしょう。【4415】の質問者はそこまで重症であるとは言えませんので(そこまで重症でないケースの方が圧倒的に多いものです)、バランスを考えることが勧められ、それは具体的には、急激で大きすぎる変化は避け、ゆるやかな変化にとどめるということになります。
けれどもこれは、「金」「地位」についてはある程度予測し、避けるべきものは避けることが可能でも、「色」については、突然にやってくることも十分にありえますので実際には難しいでしょう。すると、「色は再発のきっかけになりうる」という自覚を持って、慎重に進めるというのが現実的だと思います。

”楽しいこと””幸せなこと”も再発につながるなんて…本当にショックです。

残念ながらそれが現実です。しかしだからといって”楽しいこと””幸せなこと”をすべて避けた方がいいということではありません。現実を認識して、慎重に生きてください。

(2021.11.5.)

その後の経過(2022.3.5.)

05. 11月 2021 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 統合失調症 タグ: |