【4398】私の苦しみは幼少期の虐待が原因だと思います

Q: 会社員の25歳男性です。精神病に興味があり、林先生のサイトを拝見させていただいております。幼少期の虐待と精神疾患をテーマに2011年に先生が書かれた【1901】から【1948】までの記事のうち、最初と最後、そして興味を特に強く引いたものや他の記事で引用があった20くらいをまず拝見させていただきました。
私自身、幼少期に兄から肉体的・精神的な虐待を受け、他の家族の誰も味方してくれず、家の外に助けを求めることもできなかったため、酷く苦しんですごしてきた記憶があると思います。思いますというのは、兄を中心に、兄が暴れ出すことを恐れているらしい他の家族も虐待の事実をはっきりとは認めてくれないため、私自身もそれが事実である自信をもてないからです。 兄はナルシストなのだと思います。自己愛性人格障害というものなのではないのかと思うこともあります。幼少期の私に「自分は天才で、学校では誰もが自分を尊敬している」「俺は将来世界を救う」「俺を嫌いな人間は頭がおかしい」「世界は自分のように美しくならなくてはいけない」といったような内容の話を繰り返し繰り返し言い続けました。私は自己主張が苦手な性格のため、黙ってそれを聞いていました。それによって、当時は本当に兄は凄い人間なのだと思い込んでいました。
しかし、その思い込みは少しずつ訂正されていきました。発端は、私が兄より偏差値の高い大学に入学したことだと思います。その頃の兄は「人間は学力では価値が決まらない」などとしばしば大声で叫んでいたと思います。しかし、少なくともそれで、学力では私を含め兄よりいい大学に通う多くの人に、兄は劣っていることが証明されたわけです。その後、兄の人間関係がかなり限定されているらしいことや、兄が就職して2年で社内のトラブルで退職したこと、父の自営業を継ぐことになったのにきちんと働いていない様子が父から聞かされること、普段の言動に何か違和感が感じられることなどから、兄はなんらかの精神疾患を持つ人間なのではないかと考えるようになりました。今はわかりませんがかつては兄も精神科に通っていました(病名はナルコレプシーで、病気だから仕事中に眠るのは悪くないのだと主張して勤めていた会社ともめたようです)。
私自身については、小さい頃から自己主張が苦手なのと協調性が弱いことで、よくいじめにあっていました。しかし高校からは勉強の楽しさにのめりこみ、それによって性格も比較的明るくなり、周りに合わせることも少しずつ覚えることができたため、友達もできるようになりました。生き物が好きで生物系の大学学科に進んだので勉強も楽しく、気の合う仲間を見つけ、それなりに楽しい生活を送ることができましたし、その後も小さいながらも自分に合う会社に就職できたことでいくらか充実した日々を送っています。
しかし、一人でいると時々、ひどく不安になります。その時思い出すのは、多くの場合、賞賛してさえいれば極端に優しい兄が、自尊心が傷ついたとき(私が原因でないこともあった)に怒り狂い、私を罵倒しながら殴ったり蹴ったりしたこと、それを他の家族が見て見ぬ振りをしていたことです。そのせいか、私は世界に必要の無い人間だと考えています。大学院に進学して気の合う友人がみんな県外に移り、実家に帰ってもなんだか居心地が悪く、就職活動も研究もうまくいかない時期には、自殺を企てるも、準備を終えてから恐怖を紛らわすために飲んだ酒で酔いつぶれて自殺に失敗しました。その後二日間、飲まず食わずでぼんやりしていました。それから、生きる覚悟を決めることができ、死ぬくらいなら何を捨ててでも寿命まで生きようと考えるようになりました。相手から嫌われることを恐れて萎縮せず、嫌なことは嫌と言うようにしました。相手の言うとおりにせずに怒られても、一度捨てた命だから殺したければ殺せ、と考えて恐怖することもなくなりました。無闇に他人に媚びることをやめ、私を自尊心を満たすために利用するような人(そういうような人によく好かれます)とは関係を絶つように心がけるようになりました。 自殺に失敗してから、かなり生きやすくなったとは感じます。
しかし、自分は狂っているように感じます。他人が信用できません。休日や夜はときどき動く気も起きないくらい無気力になります。よくわからない不安感で眠れない日もあります。頼れそうな人と一緒にいると「頼りにしたい」と「頼ってはいけない」との気持ちの間で葛藤します。巨大恐竜のような怪物になって、誰にも頼らないで暮らしたいと空想したりします。先端恐怖症の治療の名目でデプロメール1日20mgを飲んでいますが、不安感を減らすことも大きな目的であることは医師にも伝えていません。家族と会うのが苦痛なので、実家とは縁を切りました。実家とは離れた県外で一人暮らしをしています。
これらの精神的な苦しみは、幼少期の虐待と孤独の記憶が原因ではないのだろうかと考えています。 だから、【1948】の記事で、先生が「虐待はしてはならない行為です。」と言い切ってくださったのを読んだとき、とても救われるような感じがしました。自分が悪いわけではないのだと感じることができました。また、私は大学生のとき(自殺未遂の後)心療内科に通い始めましたが、それも先生がうつ病などの精神疾患に対する薬の有効性をこのサイトの各所で説明してくださったおかげです。それがなければ就職活動を成功させることもできませんでした。 そのことでお礼を伝えたかったのと、自分のような人間もいることを文章にしたくて、メールをさせていただきました。 本当にありがとうございます。これからも、先生が精神疾患で苦しんでいる人に有益なアドバイスをご提供くださることを応援しています。

 

林: 貴重な体験を詳しくお知らせいただきありがとうございました。読者の方々にとって大いに参考になることと思います。現在の症状がさらに改善し安定されることを願っています。

(2021.10.5.)

05. 10月 2021 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 自殺, 虐待