【4313】思い出すと高校生の頃から周期的な憂鬱を繰り返しています(【4217】の追加)
Q: 【4217】うつ病が自然治癒することはあるのでしょうかの30代男性です。 丁寧にご回答を頂きありがとうございました。大変興味深く拝読致しました。
その上で再度ご質問させて頂きます。
【4217】に回答頂いた中で、
「大学3年頃から半ば引きこもりのような状態になり~ という状態が4年くらい続き、自然に回復しています。この4年間がうつ病の診断基準を満たす状態であったか満たす状態でなかったかは微妙ですが、診断基準を満たす・満たさないにかかわらず、うつ病の発症(上記の「本当の意味でのうつ病の発症」)であったとみることが可能です。」
とありますが、【4218】の内容と少し類似する部分もあり、大学に入った当時は人生の目標があり、それに向かってかなりハードな日々を過ごしており、今考えればそれらがきっかけだったようにも思います。今考えれば子供じみたことにも思えますが、腕にはリストカットの跡もまだ何本か薄く残っています。痛みに耐えかねて大量の血が流れる程は切れず、本当に死ぬ気があった訳では到底ありません。
思い出すと高校生の頃から、通常は自信があり精力的に活動しているのですが、周期的に酷く気分が落ち込んで憂鬱になり、自分が酷く無価値な人間に思えて、人と関わるのを避けるようになることが周期的にありました。友人からは周期的に機嫌が悪くなることがある、と当時言われていたことを思い出しました。最初の兆候だったのでしょうか?
また、【4217】の回答には、
「その後、特に治療を受けずに回復したこの【4217】のケースは、現在は、現在まで10年ほど同じ会社に勤務しており、結婚も出来、子どもにも恵まれました。
とのこと、寛解状態が続いていると判断できますが(厳密にはそう判断できるかどうかはわかりません。この10年間に、うつ病の小さい波があったか否かがこれだの記載からは不明だからです)、今後うつ病を発症(厳密には再発)する可能性は相対的に高いと認識し、その兆候に注意することが必要でしょう」
とありますが、私には現在も周期的にうつのような状態があります。あまり短い周期ではなく、半年や一年くらいの周期ですが、つい先週までは自信に満ち溢れて精力的に何の苦もなく仕事をこなしていたのに、今週は自分に自信がなく職場でも不要な人間に思え、酷く心細く憂鬱な気分に襲われる、といった具合です。しかし自分でその 兆候、自分の状態をある程度客観的に捉えることができ、家族や子供と過ごしたり、他の得意な仕事で自分を回復したり、自然と元の状態に戻っていますが、こういうこともうつ病ではあり得るのでしょうか。周期的にうつのような状態にはなっても、今の自分には到底大学の頃のような状態に戻ることがあるとは思えません。
ただし、このうつ的な傾向が尾を引いて、本来発揮できるはずの能力が発揮できていない、人生の様々な局面で度々ブレーキがかかっているような感じが常にあります。通院や投薬で、この周期的なうつ傾向は緩和するでしょうか?
また、将来的な発症に備える意味でも、一度精神科を受診した方が良いのでしょうか?
林: 追加のご報告をありがとうございました。今回のご報告を拝読し、この【4313】のケースは、【4217】の回答に記した、
うつ病を発症して精神科を受診した方によく話をお聞きすると、ずっと以前に、うつ病と診断できるレベルには達しないものの、軽いうつ病の症状があったことが判明することがあります。
に当てはまることが確実であると判断できます。
類似の回答として、【3527】に、
双極性障害の方に過去のことをよくお聞きすると、学生時代などに気分変調のエピソードがあったことが見出されることは少なからずあります。
とお書きしたものがあり、【3527】は診断が双極性障害であるという点は【4217】、【4313】とは異なりますが、周期性の経過を取る気分障害(うつ病と双極性障害の両方を含みます)では、過去に、病気とまでは診断できない程度の軽い症状を呈する時期があった、という点は共通しています。
今回の【4313】のメールの、
思い出すと高校生の頃から、通常は自信があり精力的に活動しているのですが、周期的に酷く気分が落ち込んで憂鬱になり、自分が酷く無価値な人間に思えて、人と関わるのを避けるようになることが周期的にありました。友人からは周期的に機嫌が悪くなることがある、と当時言われていたことを思い出しました。最初の兆候だったのでしょうか?
は、まさにそれに当てはまるものです。つまり高校時代に最初の兆候が見られていたということになります。【4217】でいただいた情報からは、大学3年頃をうつ病の発症(本当の意味でのうつ病の発症)とお答えしましたが、今回いただいた情報に基づけば、発症(本当の意味でのうつ病の発症)は高校時代という判断に変更されます。
いずれにせよ回答のコアとなる部分は【4217】と同じで、
今後うつ病を発症(厳密には再発)する可能性は相対的に高いと認識し、その兆候に注意することが必要でしょう。
というものになります。
私には現在も周期的にうつのような状態があります。あまり短い周期ではなく、半年や一年くらいの周期ですが、つい先週までは自信に満ち溢れて精力的に何の苦もなく仕事をこなしていたのに、今週は自分に自信がなく職場でも不要な人間に思え、酷く心細く憂鬱な気分に襲われる、といった具合です。
うつ病の症状とみてほぼ間違いないでしょう。(【4217】の回答に記した通り、うつ病の診断基準を満たす症状かどうかは別の話です)
しかし自分でその 兆候、自分の状態をある程度客観的に捉えることができ、家族や子供と過ごしたり、他の得意な仕事で自分を回復したり、自然と元の状態に戻っていますが、こういうこともうつ病ではあり得るのでしょうか。
十分にあり得ます。(ただしこれも、現代のうつ病の診断基準に適合するものだけをうつ病と呼ぶという立場を取った場合には、「あり得ない」という回答になるかもしれません)
周期的にうつのような状態にはなっても、今の自分には到底大学の頃のような状態に戻ることがあるとは思えません。
それは全く甘い考えです。
ただし、このうつ的な傾向が尾を引いて、本来発揮できるはずの能力が発揮できていない、人生の様々な局面で度々ブレーキがかかっているような感じが常にあります。
その「感じ」の程度や持続期間によっては、現代のうつ病の診断基準を満たすかもしれません。
通院や投薬で、この周期的なうつ傾向は緩和するでしょうか?
緩和するでしょう。(そのことと現代のうつ病の診断基準を満たす・満たさない は別の話です)
また、将来的な発症に備える意味でも、一度精神科を受診した方が良いのでしょうか?
これはなかなか難しいところです。受診した場合、医師の判断としては、(1)経過観察 (2)抗うつ薬等による治療開始 のどちらも考えられます。 (1)によって、将来のどこかの時点で治療開始の判断を下すためには、かなり高い技術と慎重かつ詳しい観察が必要です。現在の保健診療の範囲でそのようなことが現実に可能かはかなり疑問です。(もっと喫緊の治療を必要とする患者が当然に優先されるからです) (2)に関しては、【4313】のケースのこれまでの経過と現在の症状からみて、治療を開始することが適切かどうかは、少なくとも一部は医学を超えた判断になります。上に述べたとおり、「通院や投薬で、この周期的なうつ傾向は緩和する」とまではかなり確実に言えますが、そのことと、ではそうすべきかということは別の話です。この点については【3868】も是非ご参照ください。
(2021.5.5.)