【4298】60 代の母親の危険な運転
Q: 私は30代女性です。60代前半の母について相談します。母親の運転に同乗することがあるのですが、この1~2年ほどで運転が危険になっていると感じます。一番最近では、後ろの車がスロープではなく段差のあるところから降りてきたことが気になり「後ろの車!後ろの車がー!」と何度も言いながら前を見ずに運転して赤信号に減速せずに突っ込み、横断歩道を横断中の歩行者2名が飛びのいてなんとか当たらず。ということがありました。わたしが「信号!赤!止まって!」と叫んでも「後ろの車がねー。」と話していて止まりませんでした。とても危険な運転だった。人身事故を起こすところだった。と注意すると不機嫌になってブスっとしたまま翌日の夜までわたしの話すことを無視していました。これ以外にも同じようなパターンで信号無視を2回しています。いずれも事故にはなっていません。わたしが同乗している時だけで2年で3回の信号無視です。普段、母は毎日通勤で運転しています。大変危険だと思うのですが、高齢で免許を返納するような年齢ではないし田舎なので車がないと生活できません。わたしは素人なので信号無視の他に危険な運転の兆候を見つけることができないのですが、60代、1~2年で信号無視が増えたのは認知症などの始まりでしょうか?それを心配するのは早すぎますか?
林: 60代前半になって危険な運転をするようになった。これは当然に認知症の始まりの可能性が十分にある状態です。そして診断が何であるかということよりも、危険な運転をするという事実が重要で、その内容が信号無視の繰り返しということは、重大な事故に繋がり、ご本人に加えて他人に深刻な危害を加えるという結果に繋がるおそれが十分にあります。このような危険な運転による他害は、ある意味、暴力よりはるかに危険なものです。
田舎なので車がないと生活できません。
そのような事情はしばしばあるものですが、それでもこの【4298】の危険な運転は、運転を禁止すべき状態であると言えます。そして病院を受診し、認知症の可能性を念頭においた検査・診断を受けてください。
認知症の初期症状として法に触れる行為が見られることは少なからずあり、そのような行為の一つが自動車運転における問題です。そして、この【4298】に見られる問題のパターンは、前頭側頭型認知症に見られる頻度が高いものに一致しています。ルールの軽視と、それに対する反省が欠如していることがその理由です。
しかし先に述べたとおり、診断が何であるというよりも今は、危険な運転をするという事実が重要で、その意味でも、まずは運転を禁止し、それから診断を受けることが勧められます。
(2021.5.5.)