【4128】妊娠による一時的な反応でしょうか 

Q: 現在第2子を妊娠中の32歳女性です。妊娠12週です。
妊娠6週から妊娠10週までつわりが重く、体重が5kg落ちました。点滴や飲み薬で治療し、最後は、入院しますか?と聞かれました。
仕事は妊娠後も続けておりますが、つわりで寝たきりの時期はだいぶ仕事の効率も落ちました。今考えると、どうやって期日内に仕事をやり遂げられたのか自分でも不思議です。ほとんど記憶がないです。
妊娠11週から落ち着いてきていて、今はだいぶ体の調子がいいです。

ところが、つわりが落ち着くに連れて妊娠11週あたりから、どうも自分がおかしい気がするのです。
なんとも表現しづらいのですが、常に心の中がざわざわとして粟立つような感じがあります。焦燥感に駆られる、という感じですが何に焦っているのか分かりません。
物理的にもおヘソの辺りのお腹の中や表面、そして下半身の表面がざわざわして気持ちが悪く、さすれば楽になるような気がするのですが、実際にはさすっても楽にはなりません。

ぼーっとしてテレビも本も見ずに横になって天井をただ眺めていることも多いです。そして、はやく死にたいなあ、でも今私が死んだらお腹の赤ちゃんも死ぬから死ねないけど…と思うのです。

積極的に自殺したいとは思いませんが、車に轢かれてもいいなと思い、車が来ていても気にせず道路を横断したり、病気になったら死ねるなぁと思います。 死んだら第一子の成長が見られなくなりますが、それも気になりません。(以前は、 子が大きくなるまで死ねないなと思っていました。)

寝ている時だけ苦痛がないので、常に寝ていたいのですが、眠りにつくことがなかなか出来ず、3時間ほどぼーっとして、やっと眠りについたかと思うと、深夜や早朝に目が覚めてしまい、半分起きたような、寝たような状況でベッドにいます。

お風呂も入れず、3日に一度心を奮い立たせて入ります。家事も出来ず育児もできないので、この1週間は夫に息子を連れて実家に帰ってもらっています。

食事は食べないとという義務感で、食パンやカップラーメンを食べています。何を食べてもつわりで美味しくないです。吐くことはほとんどなくなりましたので、体重は2kg戻って、現在妊娠前から-3kgです。

妊婦健診で、産婦人科のお医者さんに相談した方がいいでしょうか? 眠れないので、睡眠薬が欲しいですとだけ伝えましたが、寝れる時に寝ましょうね。赤ちゃんが産まれたらもっと大変ですからその準備だと思ってね。と言われ処方してもらえませんでした。流れ作業であまり会話ができる感じでもなく、寝れないこと以外はまだ何も伝えていません。第一子の時はこのようなことはありませんでした。こうした精神症状も妊娠による一時的な物なのでしょうか。

 

林: うつ病を発症した可能性が高いです。

妊娠による一時的な反応でしょうか

というように、妊娠中の変化は、すべて妊娠と結びつけて考えそれに納得される傾向があり、そのようなことは多くの場合は正しいものですが、この【4128】は、

なんとも表現しづらいのですが、常に心の中がざわざわとして粟立つような感じがあります。

まずこの症状だけからみても、うつ病発症の疑い濃厚です。
また、

ぼーっとしてテレビも本も見ずに横になって天井をただ眺めていることも多いです。そして、はやく死にたいなあ、でも今私が死んだらお腹の赤ちゃんも死ぬから死ねないけど…と思うのです。

積極的に自殺したいとは思いませんが、車に轢かれてもいいなと思い、車が来ていても気にせず道路を横断したり、病気になったら死ねるなぁと思います。

このように、生きることに対する欲求が薄れるというのは、うつ病にかなり特徴的な症状です。この状態が悪化すると、「自殺したい」という希死念慮が現れます。一般的には希死念慮こそがうつ病の症状で、それはある意味その通りなのですが、「自殺したい」という気持ちはうつ病以外でも現れることはしばしばあります。それに対して、この【4128】のような形で「生きることに対する欲望が薄れる」というのは、よりうつ病に特異的と言えます。

さらには、

死んだら第一子の成長が見られなくなりますが、それも気になりません。(以前は、 子が大きくなるまで死ねないなと思っていました。)

これもまた「生きることに対する欲望が薄れる」ことの延長線上にある、虚無感とでもいうべき症状です。
さらにこの【4128】には、睡眠障害、そして体重減少を伴う食欲低下がみられます。これらは妊娠に伴う正常範囲のものとの区別が難しいところもありますが、上のような他の症状とあわせれば、うつ病の症状であるとみるのが妥当です。

妊婦健診で、産婦人科のお医者さんに相談した方がいいでしょうか? 

是非そうしてください。産婦人科医から精神科医を紹介していただくのが最も推奨できる方法です。

(2020.9.5.)

05. 9月 2020 by Hayashi
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