【4046】統合失調症の因子を持っている人は、一生統合失調症なのではないでしょうか

Q: 28歳、独身の女性です。精神科通院歴はありません。(中学生の時に鬱による心療内科への通院歴はあります。)

中学生から10年引きこもりをしましたが、今はアルバイトをして、自分の働いたお金で独り暮らしをしています。友人や恋人もでき、とても充実し幸せなのですが、気づけばよく不快なことが起こるという妄想をしては一人でイライラしています。

例えば電車に乗って隣の人が少し姿勢がだらしないと、このあと相手がわざと寄りかかってくるのではないか?と実際には何もされていないのに寄りかかられた時の想像をして大変にイライラしています。
相手をゆすりおこし、なじり、つばをはきかけ床に倒し、顔をめちゃくちゃに蹴る想像をします。
(実際にわざと寄りかかられ胸に頬擦りされるなどの体験をして迷惑したことも2回ほどありますが、その2回以外の人にはなにもされてません。また妄想通りに相手に私がなにかをするということもありません。胸に頬擦りしてきた変態にも、三駅我慢した後に揺すり起こして顔を凝視してやっただけで乱暴は一切していません。)
ふと気づくと鬼のような形相で、キレる寸前のような顔をしています。

また、変な人がいなくとも電車に乗るだけで痴漢などに会ったときの妄想、歩きタバコの人を見ると火が服に当たる妄想など内容は多岐にわたります。
起こっても無いことなのにあまりに強い怒りが沸いてきて自分自身でも病的に感じ、これが統合失調症の妄想の症状ではないかと心配しております。
妄想はいつも起こるわけではなく、頭の中はともかく実際の行動は普通のものなので、回りにはごく普通のどちらかといえば親切な人だと思われています。

また、統合失調症を疑う他の要因としては、中学生ごろの一番不安定だった頃にも妄想がかなり強かった事があります。
父親が私の部屋に監視カメラをつけてるのではという妄想と、母親が食事に毒を仕込んでいるという妄想、考えが他人に聞かれてるのではという妄想がありました。
監視カメラなどつけようがないと分かってもいましたが、つけてるんだろ?!聞こえてるんだろ!!と強く思ってもいました。でもだんだんそんなことはあり得ないという気持ちが勝るようになり、妄想は徐々に消えて行きました。
また醜形恐怖も強く、外に出れませんでしたが、そちらは整形を機に治りました。

私が思うのは、統合失調症というのは遺伝などによりそういう病気の潜在的因子を持っているキャリアの人が一定数いて、持っている人は環境により病気が軽い時期か重い時期かがあるだけで常に一生統合失調症なのではないか?ということです。
そして私もその因子をもつ人間で、今もすこしまた悪化し始めてるのではないかということです。
私の場合は父が少し頭のおかしい人で被害妄想も異様に強いです。
また暴言を聞きながら育った子供は前頭葉が萎縮していて理性がうまく働かず、暴力的になると聞いたこともあり、自分がそのような危険人物の気がします。

今は電車に乗らないよう職場の近くへ引っ越し徒歩通勤し、妄想の回数を減らしています。
妄想がなければ本来は善良で親切な人間のつもりです。
私は今、統合失調症でしょうか?
または単に性格か、若年性更年期やホルモンバランスなど別の要因なのでしょうか?
大変に悩んでおります。

 

林:
私は今、統合失調症でしょうか?

はい、統合失調症です。

または単に性格か、若年性更年期やホルモンバランスなど別の要因なのでしょうか?

違います。統合失調症です。

私が思うのは、統合失調症というのは遺伝などによりそういう病気の潜在的因子を持っているキャリアの人が一定数いて、持っている人は環境により病気が軽い時期か重い時期かがあるだけで常に一生統合失調症なのではないか?ということです。

これはかなり正しく本質を突いた指摘です。

統合失調症というのは遺伝などによりそういう病気の潜在的因子を持っているキャリアの人が一定数いて

これは事実として正しいです。

持っている人は環境により病気が軽い時期か重い時期かがあるだけで

これも事実としておおむね正しいです。
「おおむね」という意味は、「軽い時期」という表現ですと、「軽いが、症状はある」と解されますが、「無症状の時期」もあり得るということです。

一生統合失調症なのではないか

これは事実についてではなく、言葉の使い方についての問題ということになりますが、正しいとも正しくないとも言えます。それは、質問者の表現に従えば、「ある病気のキャリアである」ということと「その病気である」ことを等しいとみなすかどうかということです。キャリアである以上、キャリアでない人に比べれば、たとえいま無症状でも将来発症ないし再発する可能性があるとまでは言えます。そのようなことを指して「病気である」というか、いわないか。これは言葉の使い方の問題です。

そして私もその因子をもつ人間で、今もすこしまた悪化し始めてるのではないかということです。

正しいと思います。そして、ある人がキャリアである場合、無症状のことがありうるのは先に述べた通りですが、この【4046】のケースは無症状にはなっていません。
統合失調症の人の中には、自分は無症状であるとか、もう自分は治ったと考える人が膨大に存在しますが、その大部分は症状があり、継続的な治療が必要です。この【4046】も、症状は軽いとまでは言えても確かに症状は存在し、継続的な治療が必要なケースです。

なお、

中学生の時に鬱による心療内科への通院歴はあります。

これも振り返ってみれば、統合失調症の前駆症状だったとみることが可能です。
統合失調症の前駆症状、または最初期の症状は漠然としたものであることが多く、汎神経症などと呼ばれています。現代では うつ病 と診断されていることがしばしばあります。
また、

中学生から10年引きこもりをしました

この期間中に、おそらく統合失調症の症状の萌芽といえる症状があったと推定できます。
統合失調症とはこのように、漠然とした症状が続いた後に、幻聴や被害妄想といった、統合失調症として目立つ症状が現れてくるというのが一つの典型的な経過です。

(2020.5.5.)

05. 5月 2020 by Hayashi
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