【4053】感情がなくなっていく感じと自殺願望

Q: 現在17歳の高校2年生の女です。高校入った時からやる気が出ず今までできていた勉強も全くといっていいほど出来なくなりました。絶対出さなければならない課題もほとんど出来ません。高校1年の7月ごろから今まで頭痛など起きたこともなかったのですが一日中頭痛がして寝つきが悪く食欲もなくなりました。それからたまによくなったり、一日中寝ているぐらい具合が悪くなったりを繰り返し高校2年生になりました。夜になるとかなりの孤独感がありました。ずっと周りには出来るだけ明るく振舞いながら、自分自身を責めないように支えてきたつもりです。高校2年生になるともっと悪化し、お風呂や電車から降りる、右手をあげることも相当困難になり頭がつねにボーっとしていたと思います。それで4ヶ月前(5月の連休明け頃)に親と一緒に心療内科に行き、原因などがないことから比較的軽いうつ病だと診断されました。睡眠薬は体にあわなかった薬もあり、コロコロ変えましたが全て朝に眠気が残らない軽い睡眠薬を飲んでいます。今はハルシオンです。抗うつ薬のほうは変わることなく朝にサインバルタ30㎎を飲んでいます。薬のおかげか2ヶ月ぐらいで日常生活はできるようになり、頭痛もなくなり睡眠もとれるようになって来ました。夏休みで大分回復したのかもしれません。確かに散歩にでかけたりなど少しは気持ちが晴れていたと思います。ですが8月の下旬ごろからだんだんと感情がなくなっていく感じになりました。どんなことを見たり言われたりしても何も感じないのです。嬉しいや楽しいはもちろん悲しい寂しいもです。涙の流し方も忘れました。学校が始まってきて疲れると頭痛もまた出てきて食欲もまたおちました。でも以前の食欲がないは食べる気力がないというかんじでしたが今は全くおいしいと感じないというちがいがあります。それでだんだん自殺願望も出てきてしまいました。以前までは何とかプラスに考えようとしていたのですがいまは無理になってきています。ただただ憂鬱です。最近は自殺願望がひどいです。勝手に死んでしまいたいと考えてしまいます。息するのも苦しいしずっと重いです。でも人前だと明るく振舞ってしまいます。主治医も親も後少しでよくなると思っているので悪化したと知ったらものすごくがっかりします。そんなことさせたくありません。親はあと少しだと思っているので出来るだけ学校にいかせようとします。とてもいい親なのですが鬱病を理解しきっておらず頑張って学校に出来るだけ早く行こうとか沢山食べれば治るから出来るだけ食べようなど言います。少し負担に感じて自殺願望があるなんてとてもいえず親の前でも無理しています。明日から修学旅行なので帰ってきてから一人で病院に行った時に主治医には出来るだけ話そうと思います。 最近は自分を責めるようになりました。あれだけ支えてきたし、いまの生活もそんなに不満のある生活じゃないのにこんなに苦しくて自分にイライラします。ボロボロにしてしまいたい欲求にかられます。私は悪化してしまってるんでしょうか?頼りになる人がいなくて辛いです。

 

林:
私は悪化してしまってるんでしょうか?

悪化しつつある状況にあると思います。

それで4ヶ月前(5月の連休明け頃)に親と一緒に心療内科に行き、原因などがないことから比較的軽いうつ病だと診断されました。

このころは 比較的軽いうつ病 だったと言っていいでしょう。

抗うつ薬のほうは変わることなく朝にサインバルタ30㎎を飲んでいます。薬のおかげか2ヶ月ぐらいで日常生活はできるようになり、頭痛もなくなり睡眠もとれるようになって来ました。夏休みで大分回復したのかもしれません。

その通り、薬と夏休みの両方の効果で回復したのだと思います。
けれども、その後に残念ながら悪化しています。
確かに散歩にでかけたりなど少しは気持ちが晴れていたと思います。ですが8月の下旬ごろからだんだんと感情がなくなっていく感じになりました。どんなことを見たり言われたりしても何も感じないのです。嬉しいや楽しいはもちろん悲しい寂しいもです。涙の流し方も忘れました。学校が始まってきて疲れると頭痛もまた出てきて食欲もまたおちました。

いったん軽快に向かっていたのは確かで、そのままさらに良くなるという経過も十分にありえましたが、この【4053】のケースでは残念ながらそうはならず、逆に悪化に向かっています。このケースでそうなった理由を確定することは難しいです。無理に理由を探すより、悪化してきたという事実を認識し、対策を講じるというのが適切な姿勢です。
なお、「だんだんと感情がなくなっていく感じになりました」という体験は、うつ病の一つの典型的な症状です。うつ病というと、落ち込むとか悲しいなどの症状がよく知られていますが、そういう感情自体が消えてしまうという症状もあり、この症状はうつ病でない人には追体験しにくいのですが、ご本人にとってはとてもつらく、時には落ち込むとか悲しいなどと表現できるものよりはるかにつらい場合もあります。
なお、この【4053】のケースは、現時点ではうつ病の可能性が高いとは言えますが、「感情がなくなっていく感じ」は統合失調症の初期にも見られるもので、17歳という若い年齢でこのような経過をたどっている場合は、うつ病のほかに統合失調症の可能性も考慮する必要があります。

主治医も親も後少しでよくなると思っているので悪化したと知ったらものすごくがっかりします。そんなことさせたくありません。

そのようにお考えになって、症状を周囲に伝えない方が時々いらっしゃるのですが、それは病気を悪化させるだけです。主治医や家族をがっかりさせたくないということは、今は考える必要はありません。

明日から修学旅行なので帰ってきてから一人で病院に行った時に主治医には出来るだけ話そうと思います。

是非そうしてください。症状を正確に伝え、適切な治療を受ければ、また回復に向かうでしょう。

(2020.6.5.)

05. 6月 2020 by Hayashi
カテゴリー: うつ病, 精神科Q&A, 統合失調症, 自殺 タグ: , |