【3655】就職活動をしています。私が統合失調症だとばれている気がする。

Q: 私は20代女性です。 就職活動中の大学生です。統合失調症ということで手帳などをもらい、寝る前の薬は毎日飲んでいて、通院はほとんどしていません。表題の件ですが、私は持病を伏せながら就職活動をしているのに、私の発する雰囲気が異様なのか、または表情などでわかるのか、精神障害の有無をしつこく聞かれるということがあります。統合失調症の人は、独特の雰囲気をたたえ、身内に患者がいる者や精神科医などから見れば何となくわかるという話を聞いたことがあります。所謂プレコックス感というのでしょうか? 私は一患者であり医学とは全く関係ない学生なのでこの話の真偽はもちろんわかりませんが。話が逸れましたがとにかく面接官に精神障害が知られているようなことがあります。これは統合失調症の代表的な症状とも思えますが、しつこく精神障害の有無を確認されたり、ジッと顔やスーツを見られるということがあったのは事実です。私が知らないうちに、私は精神障害者の雰囲気を醸し出しているのでしょうか? そのようなことはあり得るのでしょうか? 今回主治医に内緒で就職活動を始めたこともあり、後ろめたくてますます通院しずらく、また親族の者にもヤメロと止められているので、時期尚早などと言われ、表題の件を相談しようとしても建設的な会話が成り立ちません。これが被害妄想、関係妄想、サトラレ体験などとにかく統合失調症の症状であるだけならば、最近ありがちな病んでいる若者を避けたいがために企業が施している機械的な措置と受け取れるのですが、万が一私の雰囲気や表情などから実際に精神障害がバレているのであれば表も歩けなくなり、また引きこもりたくなることは必至でしょう。また私は、大学院の研究室の教官にも就職活動を否定されていて、それ以外は大変親身になっていただけるのですが、就職の話になると態度が豹変し、頑なになります。普段は優しく、多少行きすぎかなと思うくらい親身になっていただけるのですが態度が豹変し、自分の支配下に私がいないことがとても腹立たしいようです。これは理不尽だと思いますが、親族の者は仰る通りだろうと言います。これは私の妄想だと思うのですが何らかの理由から私の周囲が結託して就職を阻止しているのではなか? などと考えだすと、誰を信用していいのかと疑心暗鬼になります。話が逸れましたが、私は周囲の助力で士号の取得見込みがたち、私としては少しでも社会復帰したく恩返しもしたく、今回就職しようとしています。しかし時期を見誤れば、現在小康状態を保ちなんとか普通の皮を被って生きているこの生活が急速に失われ、症状が増悪するということも事実であります。私は大丈夫と思うのですが、普段から私の様子、言動を見ている親族の者と、いつも親身になっていただける尊敬する教官、これらの信頼性の高い人物から大丈夫ではないと言われると不安になるのも事実です。話が逸れましたが、表題の件、つまり私の挙動や雰囲気から、この学生は精神障害者なのか? などと疑われることはよくあるのでしょうか? 寧ろこれは妄想であったほうが私にとっては気が楽になるのですが。現在私は症状がなく、そのため夜の数種類の薬だけで生活できております。歩き方がわからなくなることも減り、道路でうずくまり不審に思われることも殆どなくなりました。その頃はよく不審に思われ、近くの幼児がいる家庭の人にいらぬ心労をかけたこともあり、その結果として引越したということがありました。今では歩き方に苦労することはなくなり、右足を出したら左足と冷静になることで、全く怪しくない足取りでコンクリートのガタガタした道路すら殆どまっすぐ歩けるようになりました。大学の人たちには、私の持病は全くばれていません。それだけ私の振る舞いは、まともだと思います。去年自殺を図り、失敗したときも心のどこかで致死量を計算し、あとこれだけ飲まないとと冷静に考えながらも、あまりの眠気と吐き気で気を失い、結果として失敗してしまいました。自殺企図は事実ではありますが、これは別に症状が悪化したということではなく、ほんの気まぐれでした。死ねたらラッキーというだけの気持ちでやって、実際目が覚めたときも悔しいとか残念だとか思わず、幾ら治療にかかるだろうか? とお金を失うことに悲しみを覚えました。処方された薬を、飲まなかったものを全て飲んで、数百錠だったそうですが、同時に膝をついて頭を前に傾けて非定型の首吊り状態にすることで、この間失敗したとき自分で紐をほどくことがないようにと計画しました。しかしやはりというか、失敗し、本当に死ぬところだったという大学病院の先生の叱責にはお騒がせして申し訳なく、そのような気遣いの台詞を引き出してしまったことに恥ずかしさを覚えました。主治医はショックを受けたようでした。しばらくの入院ののち、私は 何事もなかったかのようにまた普通の皮をかむって生活できるようになりました。
話が逸れましたが、精神障害者はその者の発する雰囲気などで推測されることはありまか? またそれは一般的なことでしょうか? またこれは、今の文章を書いていて自分で薄ら感じたことですが、私はやはり現在の小康状態を失いつつあるのではないでしょうか? 実は普通の人と同じ振る舞いを徹底して真似るのが苦痛で、何もかもぶち壊して私も死にたいと強烈な思いにとらわれることがふとあるのです。現在の生活を大切にしたいと同時に、徹底的に破壊して、誰かが大切にしているものまでも何もかも無に帰してやりたいと強く思うのです。質問は以上になります。お返事をいただけなくても、誰かにお話できて楽になりました。

 

林: 結論を先に示します。

私はやはり現在の小康状態を失いつつあるのではないでしょうか?

その通りだと思います。主治医の先生によく相談してください。

以下はこの結論に至るまでの説明です。

この【3655】のご質問のポイントは、質問タイトルの通り「私が統合失調症だとばれている気がする。」ということになると思います。すると、まず事実が次の二つのうちのどちらであるかが問題になります。

(1) 本当にばれているのか。
(2) 本当はばれていないのか。

(1)の中には、「ばれている」とまでは言えなくても、質問者の雰囲気の中に、周囲の人が何らかの異常を感じ取っているということを含みます。
(2)は、周囲の人は質問者に全く異常感じ取っていないという意味です。

このようなことを考える場合、私は現場を見たわけではないのですから、厳密には「(1)か(2)かはわからない。どちらも考えられるというのが正しい答え」ということになりますが、そこまでの厳密さを求めなければ、私は(2)であると推定しています。この推定は【3655】に関してはかなり正しいと思っています。その根拠は次の通りです。

A. 自分が隠したいと思っていることが周囲の人に知られているという誤った考えは、統合失調症に非常によく見られる症状である。
B.「自分が統合失調症であることがばれている」と感じたとする体験としてここに書かれている内容は、Aの具体的体験として非常によく見られるものに一致している。
C.病状は、就職活動が安心してできるほどまでは回復していないと主治医が判断している。
D.最近、きちんと通院治療を受けていない。
E. 【3655】の質問者の統合失調症は、悪化したときはかなり典型的な精神病症状を呈していた。
F. 現在悪化しつつあることも直接読み取れる。

Aは一般論ですから、もちろんこれだけで【3655】の「私が統合失調症だとばれている」が事実でないということにはなりません。しかしそれでも一般論としての重要性は揺るぎません。

Bは、具体的には

とにかく面接官に精神障害が知られているようなことがあります。これは統合失調症の代表的な症状とも思えますが、しつこく精神障害の有無を確認されたり、ジッと顔やスーツを見られるということがあったのは事実です。

これを指しています。「しつこく精神障害の有無を確認されたり、ジッと顔やスーツを見られる」ということがあり得ないとは言えませんが、通常、就職面接でそのようなことはしません。「確認」することは十分にあり得ますが、「しつこく」ということは通常はありません。「顔やスーツを見られる」ことはあり得ますが、「ジッと」ということは通常ありません。
このように説明されると、通常はそうであっても、自分の場合は通常とは違ったのだ、だからこそばれていると思うのだ、と質問者は主張されるかもしれませんが、それもまさに統合失調症の方がご自分の被害妄想の内容を事実であると主張するときの主張の仕方として典型的なものです。

すなわち、「統合失調症だとばれている気がする」は、誤った思い込みであり、被害妄想・被害念慮・関係妄想・関係念慮などと呼ばれている典型的な症状です。

Cからは、客観的にはまだ【3655】の統合失調症は十分に回復していないことがわかり、すると被害妄想等がまだ症状として存在することが合理的に推定できます。Dはそれが悪化していく傾向が現在あることを推定させる事実です。

そしてEは、【3655】の統合失調症が悪化したときは、統合失調症として典型的な症状が顕著であることを示し、すると悪化しかけているいま、典型的な被害妄想等が見られることが合理的に推定できます。

Fはたとえば

何もかもぶち壊して私も死にたいと強烈な思いにとらわれることがふとあるのです。現在の生活を大切にしたいと同時に、徹底的に破壊して、誰かが大切にしているものまでも何もかも無に帰してやりたいと強く思うのです。

を指しています。

おそらくこのように説明されても【3655】のご本人は納得されないと思いますが(それが妄想というものです)、しかし、仮に【3655】の主観的体験が正しかったとすれば、それもまた統合失調症の悪化傾向の証拠ということになります。つまり、人からみてすぐに異常性が感じられるということにほかならないからです。
したがって、

時期を見誤れば、現在小康状態を保ちなんとか普通の皮を被って生きているこの生活が急速に失われ、症状が増悪する

その危惧は正しいです。
周囲の方々のご意見に従わずに主治医に内緒で就職活動を開始することは到底お勧めできません。そのような就職活動は失敗する運命にありますし、せっかくここまで回復した病状も悪化し、また治療のやり直しになり、就職できる時期がさらに先にのびることになります。
【3655】のケースは、こうして私に質問メールを出しておられることからみても、また、

これは私の妄想だと思うのですが

という表現が見られることからみても、まだ病識を失うまでのレベルまでは悪化していないことがわかります。しかしこのまま就職活動を続ければさらに悪化し、おそらくは入院治療が必要な状態になるでしょう。

以上より、結論はこの回答の冒頭に示した通りです。

私はやはり現在の小康状態を失いつつあるのではないでしょうか?

その通りだと思います。主治医の先生によく相談してください。

(2018.4.5.)

05. 4月 2018 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 統合失調症