【3593】妻の嫉妬妄想が再発し、もう2年も続いています

Q: 私60歳、妻54歳。妻の件です。(長文で申し訳ありません)
20年前転勤で地方都市で暮らしていたのですが、妻が突然「監視されている」「自分の噂をしている」「私が浮気をしている」「自分は両親の子ではない」等々と言い出し、実家に帰し精神科に通院させました。当時は「心因反応」との診断で服薬の結果半年ほどで落ち着きました。
その後、転勤などの事情で生活環境の変化や薬を飲み忘れなどのせいだと思いますが、2回ほど同様の症状となりましたが、服薬等により数か月で落ち着いています。医師からは、今は「心因反応」ではなく「統合失調症」と診断しているとの説明で、以後リスパダール内服液を1日に2mg服用しています。
10年ほど再発もなく過ごしていたのですが、2年前12月頃ちょっとした諍いから不機嫌な状況が続き「私ばかり苦労してきた(子育てか)」「今まで我慢ばかりさせられてきた」のような不満を毎日のように繰り返すようになりました。それから1か月程して「〇〇と関係が清算できてないからこうなる(〇〇は妻の同級生で私は面識なし)」「帰ってくる家が違うんじゃないの」と、私が浮気をしているというかつての妄想が復活しました。
薬は従来どおり服用しているにもかかわらず、妄想は激しくなるばかりで、一か月程して主治医に相談すると「次男の受験、季節、更年期などが重なって発症したと思う、暫く様子を見るように」とのことでした。その後半年ほどしても、波はあるものの私への嫉妬妄想はなくならず、私は主治医に繰り返し状況報告とアドバイスを受けた他に、勤務先の嘱託医やカウンセラーにもしても相談しましたが「更年期による悪化」「薬が足りないかもしれない」「嫉妬妄想だけが残ってしまった」などの診断の他に「妄想に薬は効きにくい」「妄想がなくなることはない」「言い合いは不可、大変でしょうが安定
剤を処方しますから落ち着いた対応をとってください」ということが繰り返され、それ以上の突っ込んだ助言などはなくなってしまいました。以後、妻は通院し服用を続けていますが、私はアドバイスの内容も型通りになってしまったので半年以上相談にも行かなくなっています。
浮気の証拠は日々増えています。「結婚前に一緒に車に乗っているのを見た」「家の近所で見かけたことがある(近所に住まわせた証拠)」「男の買わないようなものが家にあった(ジャガイモ1kgの箱、干しいたけ一袋、チョコレート、マジックリン等、自分が留守中に〇〇を家に入れた証拠)」「ズボンやワイシャツに皺がない(帰りに〇〇の家によってアイロンをかけてきてもらった証拠)」「〇〇が映っている写真がある(顔の判別不能、出張に同伴した証拠)」など、この2年間に言い始めたものです。今年になってからは、白黒の幼児の写真を持ち出し(出所不明)「〇〇との間の子」と決めつけて名前や誕生日まで特定するようになっています。
そもそも、この症状は何なのでしょうか。他の症状は出ていないので統合失調症は落ち着いているようですが、パラノイアになってしまったのでしょうか。
かつては半年以内に回復していたのに、2年も続いています。これが一生つづくのでしょうか、回復の見込みはあるのでしょうか、あるいは更に悪化するのでしょうか。
私は、どのような行動、対応をとればいいのでしょうか。さいわい息子たちは二人とも成人し近々社会人となり独立できると思いますが、そのあと妻とどのようにかかわっていったらいいのか、アドバイスをいただけたらと思います。

 

林: 明らかに統合失調症の再発です。当然、薬を増量するべきです。それによって改善することが十分に期待できます。ここまでの医師の対応や説明は(このメールに書かれている通りだとすれば)不合理と言わざるを得ません。いったい患者さんのために治療しようという意欲があるのかと疑いたくなるレベルの不合理さです。

主治医に相談すると「次男の受験、季節、更年期などが重なって発症したと思う、暫く様子を見るように」とのことでした。

暫く様子を見るように」は不適切です。この時点で薬を増量すべきでした。

「妄想に薬は効きにくい」「妄想がなくなることはない」

治療者らしからぬ言い訳です。
純粋に嫉妬妄想単独の症状だけのケースでは、薬が効きにくいこともありますが、この【3593】のケースはそうではなく、現に以前は薬で落ち着いていたのですから、リスパダール2mgで効果がないからといって、「妄想には薬が効きにくい」と説明するとは、その医師には治療する気がないと考えざるを得ません。

他の症状は出ていないので統合失調症は落ち着いているようですが、パラノイアになってしまったのでしょうか。

他の症状」という言葉で、質問者がどのような症状を指しておられるか不明ですが、このメールに書かれている症状は統合失調症そのものです。「統合失調症は落ち着いているようですが」というのは誤りです。

そのあと妻とどのようにかかわっていったらいいのか、アドバイスをいただけたらと思います。

薬を増量し、適切な薬物療法を続ければ、また寛解が得られることが十分に期待できます。

なお、一つだけ補足しますと、

薬は従来どおり服用しているにもかかわらず、妄想は激しくなるばかりで、

とのことですが、服用していることは確実に確認されているのでしょうか? 安定していた統合失調症の方が再発する最も多い原因は服薬の中断です。そしてご本人は服薬を中断しても、自分は飲んでいると主張されることが非常に多いものです。また、服薬を中断(あるいは自己判断で減量)して精神病症状が悪化すると、その後は服薬を完全に拒否することが非常に多いものです。この【3593】のケースも、本当に服薬を続けているかをまず確認する必要があります。薬を増量すべきであるという今回の回答は、これまで処方された薬を飲み続けていたことを前提とするものですが、実際にはその前提の段階から確認が必要です。

(2017.12.5.)

05. 12月 2017 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 統合失調症 タグ: , |