【3509】ただの醜い女が卑屈になっているだけなのでしょうか

Q: 30代女性です。
思春期くらいの頃から、自分の容姿でひどく悩むようになりました。幸い小さな頃は、両親や周りの大人から容姿を笑われたりするようなこともなかったので、気にしたことはありませんでしたが…。
写真を見ると自分のイメージしている自分とかけ離れて、目が細い、顔が大きい、歯が出ているなど気になるようになり、醜いと感じました。電車の中で見ず知らずの人に指をさされて笑われたり、友人の友人から「ブス」と呼ばれている事を知ったりして、いよいよ自分はブスなんだなあと自覚するようになりました。
社会人になって、友人から飲み会に誘われるようになっても同じで、私の側に座った男性があからさまに不機嫌になったり、私から連絡先を聞かれると迷惑そうにしたり、連絡をしても返事が無かったり、そんなことはしょっちゅうでした。
顔の造形が劣っている分、せめて小奇麗にするなどは気を付けているつもりですし、友人や職場の人との関係は良好です。それでも、初対面の人にこのような態度をとられ続けて、自分はそこまでひどいのか…と思いはじめたら止まらなくなり、美容整形のHPを見ることが日課になりました。何時間も鏡と美容外科のHPを見比べ、ここをこうしたら少しはましになるかも知れない…と想像する日々でした。この頃に、プライベートで少し嫌な出会いがあって、人の容姿をあげつらって(たとえ友人でも、本人が目の前に居ても)平気で笑いにするような人と知り合いになってしまい、余計に状況が悪かったと思います。その場では私も笑ってすましていましたが、家に帰って泣く毎日でした。
ここ数年で歯の治療をうけはじめ、歯並びを治す手術を受けました。これで少しは良くなる、と思って受けたのに、結果は新たなコンプレックスが生まれただけでした。マスクをしないと外出できなくなってしまいました。友人と遊んでも、後で撮られた写真を見ると自分の顔があまりにひどく、数週間立ち直れなくなってしまいます。以前は、ブスで自信はなくても友人と遊んでいる間だけは楽しかったのに、それすらなくなってしまいました。
仕事中も顔のことばかり気になり、トイレにこもって写真を撮って確認したり、また美容外科のHPを見たりしています。ブスの自覚はありましたが、慣れがある分手術をする前の顔の方がマシでした。
ネットで醜形恐怖と言う病気があることは知っていたのですが、いよいよ最近仕事すらてにつかなくなってきたところで、自分もこれにあてはまるのだろうかと思うようになりました。しかし、調べてみても「多くは本当は容姿に問題ないか、もしくは実は綺麗な人が陥りやすい」と言われている事が多いです。
ということは、本当に不細工な人間がそれで悩んでいるだけなのは、この病気には当てはまらず、違う病気なのだろうかとも思います。
どちらにせよ、今の状況が少しでも良くなるなら、何か行動を起こした方がいいのだろうか、精神科にかかったりすべきなのだろうかと思いますが、身内に精神科にかかっていて薬が無くてはまともに生活できない人がいて、そうなるのも嫌だし、自分がそうだと自覚したら気持ちが保てなくなってしまう、本当に立ち直れなくなってしまうと不安です。
また、幼少期より家にアルコール依存症の者がいる過程で育ったので、恐らくアダルトチルドレンといわれるものだろうと思います。そちらも何とかしたくて、容姿に自信がないこともあいまって色々と自分なりに調べましたが、「友人や恋人に自分がアダルトチルドレンの傾向があることを打ち明けると良い」とありました。
しかし、ただでさえ人並以下の容姿の自分が、そんなことを打ち明けたら「ただの厄介な人」と思われるに決まっている、みんな離れていくに決まっているとしか思えません。しかし、それではアダルトチルドレンからも一生抜け出せないではないかと、どうしていいかわかりません。

今でも毎日、この状況を打破するには美容整形しかないだろうなと思っています。容姿が関係ない友人関係や職場の人間関係に問題が無いなら、異性からこれほどの仕打ちを受けるのはやっぱり容姿のせいとしか思えなくなっている自分がいます。人に聞いても「見た目じゃない」「見た目のせいにする考えがいけない」と言われますが、それは散々嫌な思いをしてきた事がないから、そのように言えるのだと思います。
私は、なんらかの機関を訪ねて治療を受けるべきなのでしょうか? それとも、ただの醜い女が卑屈になっているだけなのでしょうか?
自分では、もうどうしたらいいかわかりません。ただ、一人で考えていてもどんどん嫌な方へ考えてしまうばかりで、疲れてしまいました。

 

林: このメールに書かれている内容は、ほとんど何から何まで、典型的な醜形恐怖の方の訴えに一致しています。

ネットで醜形恐怖と言う病気があることは知っていたのですが、いよいよ最近仕事すらてにつかなくなってきたところで、自分もこれにあてはまるのだろうかと思うようになりました。

その通り、あてはまります。

しかし、調べてみても「多くは本当は容姿に問題ないか、もしくは実は綺麗な人が陥りやすい」と言われている事が多いです。

その通りです。そして、その記載を読んで(「多くは本当は容姿に問題ないか、もしくは実は綺麗な人が陥りやすい」という記載を読んで)、

ということは、本当に不細工な人間がそれで悩んでいるだけなのは、この病気には当てはまらず、違う病気なのだろうかとも思います。

というように、「自分は本当に醜いのだから、醜形恐怖にはあたらない」と考えるのも、醜形恐怖の方に典型的な反応です。つまり、「自分は醜い」という大前提が揺るがないのがまさに醜形恐怖の特徴です。
また、自分が醜いという判断の根拠として、他の人の反応を挙げるのもまた、醜形恐怖の特徴です。【0612】容姿に悩んでいます。醜形恐怖症でしょうか。などをご参照ください。

私は、なんらかの機関を訪ねて治療を受けるべきなのでしょうか? 

はい、まず診断を受けるべきです。
おそらく(というより、まず確実に)この【3509】の質問者はこの回答をお読みになって、「醜形恐怖についての一般論はその通りかもしれないが、自分は本当に醜いのだからあてはまらない。林は自分を見たことがないのだから本当に醜いということを知らない癖に一般論にあてはめようとしている」とお考えになるでしょう。それは理論的にはもっともな考えです。したがって、まず診断を受けることをお勧めします。

(2017.9.5.)

05. 9月 2017 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 醜型恐怖症