【3387】統合失調症らしき症状がありますが苦にしていないので病気ではないように思います
Q: 19歳女です。自分が病気であるのかわかりません。
今精神科に通院しています。病名ははっきりと伝えられていないのでわかりません。
処方されている薬はペロスピロン塩酸塩錠8mg、コントミン糖衣錠25mg、フルニトラゼパム錠2mg、ラボナ錠50mg、セニラン錠2mg、アモキサンカプセル25mgです。
精神科に通い始めるきっかけは仕事に通えなくなったことでした。周りに仕事ができない使えない女だと思われてしまい、自分は役立たずだ、社会に馴染めない、などと考えてしまい、不安と緊張で電車に乗ることが出来なくなりすぐに退社しました。それから彼氏の父親にソーシャルワーカーの方を紹介して頂き、その方の紹介で初めから比較的大きな病院の精神科に通うことになりました。私はうつ病だと思い今まで薬を飲んでいました。しかし、最近になってふと薬について検索をしたら、私に処方されている薬は統合失調症の薬だと知りました。
それから統合失調症について調べたのですが、中学生の頃の私が病気だったんじゃないかと思うようになりました。当時のことを書き起こしたいと思います。
・私が考えていることが、声に出さなくてもわかる人間とわからない人間がこの世には存在します。わかる人間の前では他人の悪口や自分の恥ずかしいエピソードなどについてが考えられないので、必死でカモフラージュのために今日の夕ご飯について考えたりをしていました。
・私の考えていることが他人に伝わってしまうことを利用して、他人の考えを私がコントロールできると信じていました。実際にできたかは覚えていません。
・自分が座っている教室の床の向こう側(地球の向こう側)が見えていました。自分の真下で別の人間がどのような暮らしをしているのか私には見えていました。隣のクラスの授業風景も見えていました。学校を透明に見ることができました。
・文字の読み書きができませんでした。単語は知っているのに、文章になると理解ができなくなります。本の1ページを読むのに1日がかかり、読み終えるのに1年ほどかかりました。内容はほぼ覚えていません。学校のテストなども何が書かれているのか理解できず、選択式の問題を当てずっぽうで解くのが精一杯でした。
・自分の部屋にいるのに監視されていて恐ろしかったです。カーテンは全て閉じ、クローゼットは常に全開にして誰もいないことが確認できるようにしました。パソコンについているウェブカメラは柄付きテープで何重にもガードしました。
・一人になると殺されるかもしれないという不安が強く、夜はインターネットで通話相手を探し毎日誰かと会話をしていました。寝る直前までです。眠くて眠くて耐えられないというところまで誰かと通話をしていないと眠れませんでした。
・悪い事が何一つできません。神様が私を見張っています。嘘をつく事や隠れて悪さをすることは絶対に許されません。
このような状況でどうやって日常生活を送っていたかは思い出せません。文字がわからないことに困っていたことはよく覚えています。しかし、親が学校を休むことを許さなかったので皆勤だったことは事実としてあります。当時はこれがおかしいと思っておらず、むしろ当たり前だと思っていました。なので誰かに相談したことはありませんでした。
高校に入ってからはこのような症状が落ち着いたのですが、統合失調症という病気を知り、一部が日常の当たり前として残っていることに気が付きました。
具体的には、
・外に出るときは時間帯や場所によって何を考えたら良いのか癖としてわかるようになった。
・文字の理解ができない時は周りに合わせて名前や住所を書いたり(思い出せない時はスマホを見る)、文章が読めない時は疲れてると諦めて単語で意味を考えて自分の中で勝手に文章を想像する。
・ウェブカメラのテープは外さない
・カーテンは必ず閉める
・神様が見張っているので嘘はつかない、悪さはしない
といったことです。私の考えが周りに漏れてしまうので外出は好きではありません。
文字の読み書きについてはだいぶ良くなりました。退社してしまった会社の試験で作文があったのですが、合格できていたのでまともな文章が書けるようになっていると思っています。
日常の当たり前になってしまい、これを苦だと思っていない私は病気ではないんじゃないかと思います。中学生の頃の私が病気だっただけで、自然に良くなったのではないのでしょうか?私は現在働いていません。2度バイトをしたのですが、周りから悪口を言われ、役立たずと思われ、馴染むことができずどちらもすぐに辞めてしまいました。これは病気ではなく私の甘えではないでしょうか? 私は自分のことを精神科に通っているという事を理由に仕事をサボっている女だと思います。このままでは神様から罰を与えられてしまいます。
林: あなたは統合失調症だと思います。
日常の当たり前になってしまい、これを苦だと思っていない私は病気ではないんじゃないかと思います。
このメールに書かれている、その「当たり前になって」いる体験内容は、まさに統合失調症の症状と言えます。したがって、まず、いわば生物学的には、あなたは統合失調症に間違いないでしょう。但し
これを苦だと思っていない私は病気ではないんじゃないかと思います。
これは意味深長な言葉で、確かにおっしゃる通り、苦にしていなければ病気とはいえないというのもある意味適切な考え方です。先に私が「いわば生物学的には」「統合失調症に間違いない」と言ったのは、あなたの脳内では統合失調症と等価の現象が起きていることは間違いないということを意味しています。しかしこれに限らず、病気とは原則として本人が苦にしている場合に初めて病気と呼ぶことになりますので(いま苦にしていなくても、放置すれば苦しむことになる、時には死に至ることもあるような場合も含みます)、あなたのおっしゃることは一理あると言えます。
にもかかわらずこの回答の冒頭に、あなたは統合失調症だと思います と明言したのは、
苦だと思っていない
という認識がそもそも誤りで、この誤り自体が統合失調症に起因すると考えられるからです。
なぜなら、精神科に通院するようになったきっかけが、
仕事に通えなくなったことでした。周りに仕事ができない使えない女だと思われてしまい、自分は役立たずだ、社会に馴染めない、などと考えてしまい、不安と緊張で電車に乗ることが出来なくなりすぐに退社しました。
という経緯であり、この経緯と、このメールに書かれている統合失調症の症状は密接に関係していると判断できるからです。
実際の統合失調症のケースでは、このように、本に書かれているような典型的な統合失調症が確かにあり、しかし本人はそれをあまり気にはしておらず、しかし仕事ができない・対人関係がうまくいかない などの事実があり、それらは統合失調症の治療をすることによって改善するという場合は決して少なくありません。この【3387】はそうした典型例の一つと言えるでしょう。
以上より、冒頭の通り、 あなたは統合失調症だと思います。 という回答が導かれます。
したがって、
これは病気ではなく私の甘えではないでしょうか?
違います。病気です。
私は自分のことを精神科に通っているという事を理由に仕事をサボっている女だと思います。
違います。病気です。
このままでは神様から罰を与えられてしまいます。
そんなことはありません。今の治療を続けてください。そうすれば状態はさらに改善します。
(2017.3.5.)